AIショート動画の効率急上昇と制作現場の再編
このニュースをシェア
【4月1日 東方新報】朝7時、中国・重慶市(Chongqing)のショート動画クリエイター林悦(Lin Yue)さんがラテを入れた直後、スマートフォンにAI編集ソフトから完成動画の通知が届いた。前夜に撮影した10本の素材は、AIの処理によってテンポがよく、字幕も正確で、つなぎも滑らかな45秒のショート動画に仕上がっていた。
「3年前なら、これだけの動画を作るのに半日はかかっていた。今は素材から完成まで3分しかかからない」。林さんはそう話す。AIは今や単なる補助ツールではなく、制作工程全体に深く入り込む存在となり、ショート動画産業の制作の進め方やビジネスモデル、ユーザー体験を変えつつある。
2025年後半、重慶両江ソフトウエアパークに入るデジタル文化企業と、中国の大手ショート動画企業・執享集団が戦略的統合を行い、国内のAIショート動画産業の主導的地位を狙う動きが進んだ。背景には、国産の動画生成AIモデルの急速な進歩がある。Seedance 2.0をはじめ、快手(Kuaishou)のKling 3.0、生数科技のVidu Q3、アリババのWan 2.6、テンセントのHunyuan Videoなど、関連技術は次々と進化している。
重慶小二郎文化伝媒の創業者、姜軍(Jiang Jun)さんは、「今は速い者が勝つ時代だ。AIGCを使って、より速く、効率よく、低コストで制作しなければならない」と話す。同社は2025年に脚本、撮影、編集まで含むAIによる全工程制作を実現し、生産効率は500%向上したという。重慶では多くの中小企業が低コストのAIプロモーション動画を求めており、以前はチームを組んで撮影・編集していた作業が、今では一台の機材とAIでこなせるようになった。
こうした流れの中で、AIマンガドラマも急成長している。最近では、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)傘下動画ストリーミングの優酷(Youku)がマンガドラマ専門チャンネルを開設し、騰訊(テンセント、Tencent)も独立アプリを打ち出すなど、関連業界の動きが活発だ。抖音(Douyin)では関連話題の再生数が1億回を超え、微博(ウェイボー、Weibo)でもSF作品のマンガドラマ化が注目を集めた。生成AIを使って短編小説などのIPを直接映像化するこの新しいコンテンツ形式は、急速に存在感を高めている。
「DataEye 2025年マンガドラマデータ報告」によると、2025年以前は市場の作品数が1000本未満だったのに対し、2025年には抖音だけで6万本を超える作品が公開された。2026年には市場規模が243億6000万元(約5632億3486万円)に達し、45%成長すると見込まれている。技術の進歩でキャラクターの一貫性が保たれ、制作工程の自動化によって制作期間は20日以内に短縮された。制作コストも下がり、3〜4人のチームでも運営できるようになった。
一方で、課題も少なくない。AIショート動画は実写撮影やロケ地への依存を大きく減らし、短い物語から完成映像を素早く作れるようにしたが、その反面、著作権問題が浮上している。許可なく短編作品を使い、内容を少し変えて配信するケースもあり、原作者や権利管理側が対応しきれない状況も出ている。
さらに、企業が強く懸念しているのが人材不足だ。AI動画生成が制作の初期段階から関わるようになったことで、脚本家、監督、編集者といった従来の職種の境界が曖昧になっている。今後必要とされるのは、コンテンツ、技術、ブランドの理解をあわせ持つ複合型人材だという。芸術と技術の両方を理解できる人材は特に不足している。
重慶両江ソフトウエアパークでは、計算力基盤、動画生成、配信、クリエイター支援を組み合わせ、制作から発信までを一体化した仕組みづくりが進められている。個人向けでは新しさや個性が重視される一方、企業向けでは安定性や再利用性がより重要になる。こうした違いを踏まえながら、AI動画生成を持続可能な制作エコシステムに組み込めるかどうかが、今後の焦点となる。
クリエイターが3分で動画を仕上げる時代から、数百億元(100億元=約2312億1300万円)規模の市場形成、さらに都市の産業戦略に至るまで、AIはショート動画産業を大きく変え始めている。効率と創造性、規範と成長のバランスをどう取るか。その答えは、企業とクリエイターの連携の中で見えてくるのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News