【3月15日  People’s Daily】「カーン!」厳冬の真っただ中、小気味よい鋭い音が、江南の水郷の冬の静けさを破った。続いて、走る足音と熱烈な歓声が響いた。その音の源は、都市の体育館ではなく、田んぼと村に囲まれた野球場だった。

記者は、浙江省(Zhejiang)平湖市(Pinghu)林埭鎮の徐家埭村を訪れた。ここでは、古くからの村の風景が、若々しいスポーツの鼓動と共鳴し合い、新鮮で活気に満ちた「雰囲気」が生み出されている。

「以前はどの家も豚を飼っていて、臭いがひどく環境も悪かった。今では空気もきれいになり、水も澄んだ。多くの人がここに野球をやるために集まり、観光客も増え、生活もどんどん良くなっている」、村民の張金法(Zhang Jinfa)さんのこのような感想は、徐家埭村が「養豚村」から「野球特色村」へと大きく変貌した姿を物語っている。

2003年、浙江省は「千村示範・万村整治」プロジェクトを全面的に推進し、農村の生態環境の改善、農民の生活の質の向上を核心とする村の整備・建設活動を開始した。徐家埭村も養豚場を閉鎖し、河川を整備し、村の様相は一新された。しかし、環境が改善された後、どのように新たな産業を育成し、若者を引き留めるか、これが村の新たな課題となった。

「村はきれいになったが、産業が追い付いていなかった。農業だけでは、村民の所得向上の余地は限られている。農村観光をやろうにも、特色ある目玉が不足していた」、徐家埭村の党委員会の劉建群(Liu Jianqun)書記は当時の迷いを率直に語った。

転機は、ある鋭い気づきから訪れた。当時、平湖市には多くの台湾系企業や外資系企業が集積していた。かつて自身も企業の経営者だった劉氏は、これらの企業の幹部たちがわざわざ上海市まで野球をしに行っていることに気がついた。同時に、村の入り口にあった低地で活用が難しい遊休地を見て、大胆なアイデアが湧いた。「この土地を野球場に改造してみてはどうか? 周辺の企業にサービスが提供できるだけでなく、村に『スポーツ+文化観光』の新たな道を切り開くこともできる」と思いついた。

構想はあっても、野球場の建設は容易ではなかった。資金も経験も必要で、何よりも村民の支持が必要だった。そのため、林埭鎮の党委員会は特別な調整チームを設立し、土地計画、政策支援、資金確保を統括的に進めた。徐家埭村の党委員会は、党員ボランティアチームを結成し、各戸への訪問や村民会議などを通じて、政策のPRと意識改革のための活動を行った。

18年、全国に先例がない中、徐家埭村は資金や技術などの困難を克服し、国内初の基準を満たす青少年向け「田園野球場」を完成させた。19年には「長三角(長江デルタ)小鹿連盟野球大会」がここで成功裏に開催され、野球場は「見事なデビュー」を飾った。その後当地で「全国青少年野球選手権大会U10組」や「中国野球協会年次総会」が相次いで開催され、徐家埭村は「中国少年野球U10訓練基地」に昇格し「中国野球第一村」と称えられるようになった。

しかし、地元では野球競技の基盤が弱く、専門的人材も不足しており、どのように運営し普及させていくかが新たな課題となった。林埭鎮は「専門的運営+村民参加」という革新的モデルを模索した。専門のスポーツ企業に大会運営やトレーニング指導を委託した。同時に、「野球サービス」ボランティアチームを積極的に育成し、村民に野球の基礎知識を教え、グラウンド整備や運営支援などへの村民の参加を促した。

「政府が基盤を整え、専門組織が運営し、市場が牽引し、融合と革新によって、この田園野球のボールはますます遠くへ飛んでいけるようになった」、林埭鎮党委員会の莫雲(Mo Yun)委員は自身の感想をこう語った。「徐家埭青少年野球場」は、すでに全国青少年野球選手権大会U10、U12組の決勝戦など、数多くのハイレベルな大会を成功裏に開催し、国内外から延べ100万人以上の選手や観光客を迎え入れた。昨年7月には「徐家埭国際野球場」が完成し、正式な運営が始まり、大会の開催能力が全面的に向上した。

野球を原動力として、徐家埭村はさらにバイオ農業、民宿・飲食、親子向け研修旅行などの業種を結びつけ、特色ある産業クラスターを形成し、村の集団経済収入は800万元(約1億8000万円)を突破した。62歳の村民・曹華英(Cao Huaying)さんは「以前は数ムー(1ムーは約667平方メートル)の畑だけで生計を立てていたが、今は村に国際野球場ができたので、ずっとここで清掃の仕事をしている。収入は以前よりずっと増えた」と話している。

現在、村では野球をきっかけに、特色ある飲食店や民宿が20軒余り出店し、村民に200以上の雇用を提供し、村民一人当たりの収入は著しく向上している。
「徐家埭村は一本のバットで田園に『スポーツによる村の活性化、産業融合、村民の共同富裕』という見事な軌道を描き出した」、莫雲委員はこのような表現で村の取り組みを高く評価している。(c)People’s Daily /AFPBB News