【3月14日 東方新報】揚げ豆乳は外はカリッと中はやわらかく、老豆腐は漬物を添えると香り高く辛味も利いてさっぱりとし、肉そぼろの豆腐蒸しはコクのある味わい……。雲南省(Yunnan)大理ペー族自治州(Dali Bai Autonomous Prefecture)弥渡県密祉鎮では、百年受け継がれてきた豆腐宴が、豆腐を十数種類の味へと変化させ、香りに誘われた食通たちが各地から集まってくる。

密祉鎮はかつて茶馬古道の重要な宿駅で、国家級無形文化遺産の代表的項目である弥渡民謡発祥の地としても知られ、「中国花灯(民俗歌舞)芸術の郷」とも称される。南北からの馬幇(隊商)が交わった土地柄のなかで、豆腐料理は素朴な腹ごしらえから、手間を尽くした無形文化遺産の豆腐宴へと発展してきた。

大理ペー族自治州の無形文化遺産代表的項目「弥渡豆腐宴製作技術」の代表的伝承者、白海文(Bai Haiwen)さんによれば、密祉豆腐は地元の良質な大豆と、澄んで甘い真珠泉の湧き水を原料に、洗浄、すりつぶし、こし分けなどの伝統工程で作られる。きめ細かく香り豊かで、「柔らかい」ことと彫刻もしやすい性質で知られ、名声は遠くまで広がっている。

密祉豆腐には「一つの豆で三つに変わる」という言い方がある。白豆腐になり、恒温発酵を経て霉豆腐(発酵豆腐)にもなり、さらに塩漬けして瓶で漬け込めば、コクがあり余韻の長い漬け豆腐へと仕上がる。

白海文さんは、祖父の代から伝わる冷やし豆腐や蒸し臭豆腐などを土台に工夫を重ね、煮込み豆腐や豆腐団子、角煮豆腐などの料理を生み出してきた。17歳から料理人の道に入り30年以上研さんを積み、伝統を継ぎながらも、17品1汁で構成する「密祉伝奇豆腐宴」を創案し、蒸す、揚げる、煮る、煮込みにする、和える、炒めると、味わいを幾通りにも変化させている。

白海文さんの店「常留之家」農家レストランに入ると豆の香りが満ち、厨房は活気にあふれる。冷ました豆乳を棒状に切って衣をまとわせ、黄金色に揚げた「脆皮豆浆(カリカリ豆乳揚げ)」は弥渡の名物料理とされる。手際よく作業が進むうち、色・香り・味のそろった密祉豆腐宴がほどなく食卓に並ぶ。

料理開発では、食材と密祉の歴史文化を結びつける工夫も凝らす。創作料理「古道情縁」では、白豆腐と肉片の並びを茶馬古道の石畳に見立て、トウガラシと刻みネギで彩り、密祉の鳳凰橋を象徴する小橋の模型や、亜溪河の水に見立てたソースで古雅な趣を演出する。

評判が高まるにつれ各地の食通が訪れ、「常留之家」は大理州飲食・美食業界協会から「2026年 大理ペー族自治州都市ランドマーク美食名店」に選ばれた。2026年の春節(旧正月、Lunar New Year)連休中は毎日30~40卓を受け入れ、「大理周辺だけでなく四川省(Sichuan)や貴州省(Guizhou)からも、SNSを見て来てくれた」と白海文さんは語る。

技の継承にも力を入れ、息子の姚柏均(Yao Baijun)さんに豆腐宴作りを教えている。2000年生まれの姚柏均さんは7年の修業を経て一人で任されるまでになり、密祉鎮の元宵節(旧暦1月15日、今年は3月3日)の灯会イベントではスタッフ用食事の準備を担当したという。

春節の繁忙期を終えた白海文さんには新たな計画がある。店内に専用エリアを設け、豆腐宴の工程や密祉豆腐の由来を展示し、「おいしさだけでなく、豆腐に宿る文化の物語や、この土地ならではの風土と人情も感じてほしい」と話した。(c)東方新報/AFPBB News