【三里河中国経済観察】遼寧:企業に寄り添い、市場で稼ぐ
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【3月15日 CNS】このほど遼寧省(Liaoning)で開かれた「省級指導者による企業連絡業務 推進会議」は、これまでとは少し違う雰囲気を漂わせていた。
会場では、複数の幹部が自身の体験として、いくつかの「小さな誤解」や「ちょっとした行き違い」を語った。企業家を微信(ウィーチャット、WeChat)で追加しようとしたところブロックされ、何度もやり取りを重ねてようやく連絡がつき、いくつかの問題を解決した末に、ウィーチャット上でも連絡を取り合える関係になった幹部もいれば、当初は企業家に丁重に断られたものの、その後企業側から自ら連絡してきた例もあった。また、担当する20人の企業家にメッセージを送ったところ、最初に返事が来たのは5人だけだったが、問題解決を積み重ねるうちに、より多くの企業家と信頼関係を築いていったという話もあった。
こうした細かなエピソードが会場で共有されると、すぐに活発な議論が起きた。
このところ遼寧は、指導者幹部が企業と直接連絡を取り合う取り組みを積極的に進めている。全体としては着実に進んでいるが、その「順調さ」の裏側で、この会議は、政と企業の関係の中で見えにくかった行き違いや摩擦をあえて表に出した形となった。例えば中国日報(China Daily)の報道によると、民政や文化観光などを担当する遼寧省副省長の楚天運(Chu Tianyun)氏の電話番号が、最近通報を受けてブロックされ、利用停止になったという。
なぜ企業家はブロックするのか。省の指導者に不満があるわけではない。本当に省の指導者からの連絡だとは信じられなかったからだ。企業が支援を望んでいないわけではない。支援が本当に届くとは思えなかったのである。ウィーチャットでブロックされていた関係が、やがて頻繁に連絡を取り合う関係へと変わり、当初は断られていた関係が企業側から連絡してくるようになる――遼寧の幹部と企業家の間には、いま微妙な変化が生まれている。
統計によると、2025年10月から2026年2月5日までの間に、遼寧の省級指導者33人がそれぞれ20社の企業を担当し、合計660社と連絡を取り合った。そのうち291社には実際に足を運んで訪問した。少し前には、丹東東方測控集団の包良清(Bao Liaoqing)董事長が、周囲の人に「遼寧省委書記の許昆林(Xu Kunlin)氏とウィーチャットでつながった」とよく話していた。これは自慢ではなく、遼寧が企業を、そして企業家を本当に重視しているということを伝えたかったからだという。「役所の人に会うのは不安」だった関係が、「連絡を待ち望む」関係へと変わりつつある。そこに表れているのは幹部の仕事ぶりの変化だけではない。政治の環境そのものが整理され、作り直されつつあるという側面もある。
遼寧、そして東北地域の文脈では、政と企業の関係を語るとき、避けて通れない歴史的な背景がある。長い間、一部の幹部による不当な要求や嫌がらせといった悪習や、担当者が変わると以前の約束が顧みられなくなるといった問題があり、企業家の中には「幹部が訪ねてくる」というだけで警戒する人も少なくなかった。
2月11日、遼寧省委書記の許昆林氏は、省級指導者による企業連絡業務の推進会議で、この取り組みをさらに実効性のあるものにしていく必要があると強調した。幹部が自ら企業に足を運び、企業と頻繁に意見交換を行い、企業の要望を随時把握して課題を解決すること、さらに企業の訴えに丁寧に対応し、進捗を継続的に確認しながら一つ一つ確実に対応していくことが求められるとした。
ビジネス環境を損なう問題の是正に向けて、紀検監察部門も動きを強めている。例えば遼陽市(Liaoyang)の紀委監委は、検査や行政執行の不適切な対応や、企業の正常な経営を妨げる行為などを重点的に是正している。監督体制を強化し、企業関連の行政執行に関わる部署が多いという特徴を踏まえ、関係部署が連携する仕組みを整えた。自主点検による是正や監督検査、個別案件を教訓にした再発防止策などを通じて、ビジネス環境の改善を継続的に進めている。
これらの出来事をより大きな背景の中で見れば、遼寧が打ち出した取り組みの意味は、単なる行政作風の改善にとどまらない。現在、東北の全面振興は重要な局面を迎えている。手続きの簡素化や処理期間の短縮、コスト削減から、企業家への積極的な連絡や企業の課題解決まで、遼寧のビジネス環境は再構築の段階に入りつつある。この意味で言えば、遼寧の幹部がウィーチャットでブロックされた後も何度も連絡を取り続け、問題を解決し、最終的に信頼を取り戻したという事実そのものが、ビジネス環境の変化を象徴している。ビジネス環境は評価で決まるものではない。一社一社の企業が実際の行動で判断するものだ。
細かな点にも意味がある。
2026年の遼寧省ビジネス環境最適化大会では、159人の企業家と個人事業主の代表が会場中央の主席に招かれ、各級の幹部はその左右と後方に座った。官本位の発想を改め、コネに頼る風潮をなくす。企業が舞台の中央に立つという演出は、単なる席順の変更ではなく、行政の評価基準や発展観を見直す象徴でもあった。企業が舞台の中央に立ち、幹部と企業家が微信で直接連絡を取り合う関係になるまでに至った。遼寧はビジネス環境の改善に継続的に力を入れ、この地で事業を行う企業家一人ひとりが、尊重され、存在を認められ、後押しされていると感じられるようにしている。
それは東北振興の大きな支えであると同時に、中国式現代化が遼寧の地で示す、最も分かりやすい象徴でもある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News