玩具の新潮流が生んだ中国の「バッグチャーム経済」
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【3月11日 People’s Daily】さまざまな形のぬいぐるみやソフビ人形、博物館の個性的なカルチャーグッズ、観光地ならではの土産品など、街を歩けば多くの若者のリュックサックには様々なチャームがぶら下がっている。今、持ち運びが便利で付け替えも簡単な「バッグチャーム」が中国の消費者の間でますます人気を集めている。色もスタイルも千差万別の「バッグチャーム」は、消費現場での人気爆発から、産業クラスターによる供給体制の支え、さらには海外展開での業界を跨ぐ連携による付加価値向上に至るまで、「バッグチャーム経済」というジャンルが形成されている。
「見て!このWAKUKU(ワクク)すごく可愛い。これといっしょに私の写真を撮ってよ」、北京市朝陽区の体験型総合ショッピングセンター「合生匯」にあるキャラクターグッズショップ「奇夢島」では、若い女性がバッグチャーム人形を手に友人と写真を撮って、すぐにSNSに投稿していた。
「小ぶりで手軽に買えて、気分を上げる情緒的な価値が高いという核心的な特徴が、今の若者の生活スタイルや心理的ニーズにぴたりと合致している」、商務部国際貿易経済合作研究院の洪勇(Hong Yong)副研究員はこう分析する。そして「現在は『情緒消費』が台頭しており、若者が買い物をする際、実用的な価値だけでなく、情緒的価値を重視するようになっている。彼らは自分に楽しさや帰属感、個性の表現をもたらしてくれる製品に、より積極的に支出する傾向がある」と指摘する。
春節(旧正月、Lunar New Year)が近づく中、江蘇省(Jiangsu)南京(Nanjing)市民の呉文婧(Wu Wenjing)さんは、両親と自分のための新しい服を買っただけでなく、自分のバッグチャーム「ラブブ(Labubu)」用の新しい服も購入した。「その日の気分や服装に合わせてバッグチャームを取り替える。時にはバッグチャームは感情の合図のようなもので、それを理解できる人とは会話が弾みやすくなる」と話している。
「中国玩具・乳児用品協会」の梁梅(Liang Mei)会長は「バッグチャームは比較的手軽に楽しめる消費スタイルで、若者の日常生活における『小さな幸せ』を満たしている。感情的なつながりを通じて、共感できる趣味のコミュニティを形成し、有名IPとのコラボレーションやユーザー参加型の共同創作を通じて、市場の活力を絶えず刺激し続けている」と指摘する。
広東省(Guangdong)東莞市(Dongguan)は「中国のトレンド玩具の都」として知られ、世界のトレンド玩具産業の中核的な拠点である。ここには4000社を超える玩具メーカーと1500社近い関連企業が集積し、デザイン、生産からIPのライセンス供与、販売に至るまでの完全な産業チェーンが形成されている。
東莞市茶山鎮にある「玩創童話集団」の本社では、10人のデザイナーチームが「食夢獏(夢食いバク)」シリーズのバッグチャームのデザイン画について議論している。「この中国風バッグチャームは、中国の伝統的な色合いや吉祥模様を現代的なデザインに取り入れている。神話に登場する『食夢獏』の悪い夢を食べ、良い夢を作り出すという力にちなみ、新年の良い夢が全て叶うようにとの願いが込められている」、映像番組制作や文芸創作などを行う「国潮山海経文化産業(広東)」のブランドマーケティングディレクター・呉巧媚(Wu Qiaomei)氏はこう説明する。アイデアが決まってから細部を練り上げるまで、デザインの原案を作るのに約15日間、さらに試作部門で3~5日かけて初版のぬいぐるみチャームを製作するという。「自社工場があるため、生産の連携や柔軟なスケジュール調整が可能で、デザイン確定から量産出荷までおよそ30日間に抑えることができる」と話している。
バッグチャームのスタイルは多様で、市場の流行もめまぐるしく変わる。記者が取材して気付いたのは、消費現場で「バッグチャーム人気」を支えているのは、供給側の大量生産から柔軟なカスタマイズ生産への大きな変革であり、玩具産業の持つ強力な製造能力が、バッグチャームの迅速な生産対応の基盤となっているという事実だ。
かつては、プラスチック製の玩具を1つ作るにも、まず金型の製作が必要で、そのコストは数万元(1万元=約22万7145円)にも上り、その後、数万個、数十万個と大量に生産してようやく採算が確保できた。しかし現在は、スマート製造の発展やデジタル化工場の普及で、「50個からの受注」「100個単位での生産」は、もはや難題ではなくなった。仮にたった1個の玩具であっても、3Dプリンティングで製造が可能だ。
森の妖精「LABUBU(ラブブ)」は個性的なトレンド玩具として世界的なブームを牽引している。中国アニメ映画『浪浪山小妖怪(英題:Nobody)』のヒットにより、登場するキャラクターのバッグチャームは一夜にして爆発的な人気となり、何度も完売となった。また、クコ、ナツメ、タンジンといった漢方薬をモチーフにしたシリーズのバッグチャームは、斬新なアイデアと濃厚な東洋の趣で瞬く間にブレイクし、海外消費者の熱烈な支持を集めている。
米誌「タイム」は、今や中国の新世代トレンド玩具は、自国のIPのストーリーを語り、独自の美意識を発信することで「中国製造(メイド・イン・チャイナ)」の国際的なイメージを刷新していると指摘している。2025年上半期、中国のアート玩具メーカー「ポップマート(Pop Mart)」は東南アジア、欧州、アメリカ大陸などの地域でいずれも3桁成長を記録し、特にアメリカ大陸では10倍以上の伸びを示した。現在までに、同社の世界の店舗数は570店舗を突破している。
また「奇夢島」の製品は、販売ネットワークを通じて北米、欧州、東南アジア、中東など約20か国に輸出されている。同社の李鵬(Li Peng)会長は「現地化された創作を通じて文化の壁を打ち破り、世界中の消費者と感情的なつながりを築くことが、中国ブランドが『製造』から『ブランド価値』への飛躍を実現する鍵だ」と語る。
今後、より多くの人気商品やブランド企業が世界に進出するにつれ、中国の創造性と情感が込められたこれらの小さなチャームは、世界の市場でさらに多くの素晴らしい中国の物語を紡いでいくことだろう。(c)People’s Daily /AFPBB News