【3月1日  People’s Daily】近年、中国各地で民宿と農村観光、文化産業の深い融合が進められているが、安徽省(Anhui)黄山市(Huangshan)はその中でも特に顕著な成果を上げている。民宿を農村の営みに根づかせ、現地の生活に溶け込ませることで、農村に新たな活力をもたらす原動力となっている。

午後7時半、太鼓の音とともに、黟県石亭村のコミュニティセンターで特別な文芸イベントが幕を開けた。多彩なイベントプログラムを通じて上海から訪れた観光客と地元の村の人たちが、和気あいあいと楽しいひと時をともに過ごした。

この交流イベントの実現の背景について、イベントの発起人で民宿「拾庭画驛」のオーナー・黄智勇(Huang Zhiyong)さんが「今回上海から来た観光団は歌好きのメンバーで構成されていた。一方、村民の側も日頃から歌を含め様々な演芸活動に熱心な者たちで、まさに両者の興味がぴたりと一致した」と説明した。

上海からの観光客・凌凌(Lingling)さんは、3か月のうち「拾庭画驛」を訪れるのはこれで3回目だ。「ただただ気に入ってしまって。まだ遊び足りずに、また来たくなる」と話す。

黟県は、西逓村や宏村を含む46の「中国伝統村落」があり、「桃源郷、絵の中の村」と呼ばれている。ここは「徽文化」の発祥の地の一つで、保存状態の良い明清時代の古建築群と独特の自然と文化的な景観で知られている。

外地で起業した後、2012年に故郷に戻った黄智勇(Huang Zhiyong)さんは、黟県で民宿を開こうと考えた。いくつかの場所を視察した後、石亭村の徽派建築の庭園に一目惚れした。「徽州文化は奥深く、建築の美しさだけでなく、伝統芸能や工芸の美しさもある。民宿という媒体を通じて、より多くの観光客に『徽文化』の魅力を感じてもらいたい」、黄さんは民宿を村に深く根づかせ、地域文化の養分を吸収することこそ、長続きの秘訣だと信じている。

ここ数年、中国の人びとの自国の精神文化に対する消費ニーズは日増しに高まっており、民宿業界は基本的な「宿泊ニーズ」を満たす段階から、より高次元の「精神性と美的感性のニーズ」を満たす段階へと進化している。
 
現在、黄山市には3200軒を超える様々な民宿があり、10以上の民宿の集積地が形成されている。多くの黄山の民宿オーナーたちは「画一的な競争を避け、差別化された製品とサービスを提供する」という共通のコンセプトを持っている。

「黄山雲上民宿」は、黄山区湯口鎮の広大な竹林に囲まれた谷間にたたずむ民宿である。オーナーの程新鳳(Cheng Xinfeng)さんは旅行と美食の愛好家だ。「我々は高級リゾート民宿をコンセプトに、お客様に快適な空間と健康的な食事を提供することに力を入れている」という程さんは、民宿の周囲に菜園を開き、野菜を育て、鶏や魚を飼育している。また季節に応じて近隣の村民から茶葉、蜂蜜、干し筍(メンマ)などを仕入れている。程さんは「どれも自分が気に入った食材で、お客様にも味わってもらいたくて用意した。するとこれが大好評で、旅の後からも微信(ウィーチャット、WeChat)で注文が入るようになった」と話す。

「85後(85年以降生まれの世代)」のUターン起業家・孫敏(Sun Min)さんは、民宿のお客のターゲットを18歳から40歳の年齢層に設定した。今の若い世代が求める「インスタ映え」を意識して、民宿の場所を黟県の塔川国家森林公園内に定め、「烏桕桕文創美学空間」と名付けた。客室の窓を開ければ、遠くに広がる田園風景と烏桕(ナンキンハゼ)の木々が一望できるように設計した。「宿泊するお客様全員に、満足のいく写真を撮ってもらいたい」と考えたからだ。

 民宿「阿琳娜花園(アリンナ・ガーデン)」は国際結婚の夫婦が経営している。夫は中国では「阿明(ミンさん)」と呼ばれているオーストリア人で、奥さんは広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)出身の黄瓊(Huang Qiong)さんだ。この2年でビザ免除措置が拡大し、外国人の観光客が増えてきた。これはまさに私たちのチャンスだ。外国人観光客が黄山を理解する架け橋になりたい」と黄さんは話している。

現在、「阿琳娜花園」は黄山のトレッキングと太極拳を特色として打ち出し、毎朝、宿泊客を誘っていっしょに太極拳を行っている。外国人観光客は中国文化に強い関心を持ち、風景を鑑賞するだけでなく、太極拳にも積極的に参加したがるという。

黄山市文化観光局農村観光科の責任者・汪為之(Wang Weizhi)氏は「黄山の民宿の多くは農村部に分布し、農村の全面的な振興の鍵となっている。民宿経営者が安心して事業に専念できるよう、昨年全市で『民宿振興・管理条例』を制定した。土地政策、金融支援、各種許可手続きについて明確に規定し、経営者たちに確かな安心感を与えている」と説明する。

ホテルに比べ民宿の規模は大きくないが、フロント業務、客室清掃、飲食サービスなど、必要な業務は多岐にわたる。また民宿によっては個性的な文化・娯楽活動を独自に提供するところもあり、それには専門の人材が必要となる。

こういう問題を解決するため、黄山市では「黄山学院」や「黄山職業技術学院」が民宿関連の学部を設置し、管理運営人材の専門的な育成を支援している。同時に、市と県レベルでの「民宿マネージャー養成研修」を継続的に開催し、累計335名が人材資源・社会保障部門が認定する「職業技能等級証書」を取得している。
  
「黄山市徽州民宿協会」の肖紅霞(Xiao Hongxia)秘書長は「市内の各地で『民宿+』の複合産業クラスターが形成されるよう牽引していきたい。団結して発展し、資源を共有し、エコシステムが形成できれば、産業全体がより健全になるはずだ」と抱負を語った。(c)People’s Daily /AFPBB News