【3月9日 東方新報】2025年の夏、重慶市(Chongqing)のテストコースで、長安汽車(Changan Automobile)の朱華栄(Zhu Huarong)董事長がスマートカーを自ら運転し、複数の性能テストを実施した。一般向けにライブ配信されたこのデモは、中国のスマートカーの新たな進展を具体的に示すものとなった。

全国人民代表大会(全人代)の代表でもある朱氏はこのほど取材に対し、「時間さえ許せば、ほぼ毎週のように試乗に参加している。運転するたびに、技術の進歩をはっきり感じる」と語った。現在のスマートカーは、いわば「ベテランドライバー」のような判断能力を備えつつあり、ハンドル操作やブレーキの一つ一つの背後では、膨大なデータのリアルタイム処理と深層学習アルゴリズムの継続的な最適化が行われている。そうした進歩から朱氏は、「スマートカーは『考える』ことを覚えつつある」と実感しているという。

ここ数年、朱氏が考え続けてきた大きな問いがある。世界の消費者に対し、どのようなスマートカーを提供すべきか、という点だ。

「当初は、人間の運転を置き換えることが最終目標だと考えていた」と朱氏は述べる。しかし研究開発を深めるにつれ、スマート化が目指すべき本質は、人の移動により高いレベルの安全をもたらすことだと理解するようになった。「それこそが、私たちが追い求めるべき答えだ」という。

こうした認識の変化は、中国の自動車産業が数十年かけてたどってきた歩みとも重なる。朱氏は「改革開放初期は、海外技術を導入し消化することが中心だった。いまは、海外での協力プロジェクトを通じて、中国の技術を国際市場へ提供できるようになってきた」と語る。

朱氏はまた、新エネルギー車とスマート化の潮流が高まる中で、中国の自動車メーカーは基礎研究に立ち返らざるを得なくなったと指摘し、これは「源流からの再出発」だとの見方を示した。

自動運転という先端領域では、長安汽車が2025年末、L3(レベル3)自動運転の大規模な試験運用を先行して開始した。朱氏は技術開発を4段階に整理する。ソフトウェア実験室での仮想シミュレーション、閉鎖された試験場でのシステムテスト、複雑な場面での実走行検証、そして一般道での試験運用へ――という流れだ。

2025年の全国両会(全人代・政協)期間中、朱氏は自動運転分野の立法を加速し、先導的な自動運転の標準体系の整備を急ぐべきだと提案した。先見性のある標準を策定し普及させることで、世界の自動運転標準や関連ルールづくりでも主導権を握れるという考えだ。

業界が強く注目するデータ安全の問題について朱氏は、技術発展と同時に、立法によって利用者のプライバシーを守る必要があるとし、「先見性のある監督・規制の枠組みを整えることが、コネクテッドカーの健全な発展を支える重要な保障になる」と述べた。

自動車のスマート化が進む一方で、国際舞台は中国自動車産業の新たな主戦場にもなりつつある。稼働を開始した長安汽車のタイ・ラヨーン工場では、「重慶でつくった」新エネルギー車の海外現地生産が進む。同工場で生産された「深藍」ブランドの車両は、東南アジアや欧州などへ輸出され、「製品の海外展開」から「産業の海外展開」への転換を実現しているという。

朱氏は「かつては北京モーターショーや上海モーターショーが主戦場だった。いまはパリやミュンヘンなど国際モーターショーへ舞台が広がり、中国発のクルマをより多くの人に体験してもらえる。中国のスマート製造を示す重要な窓口だ」と語った。

朱氏は2026年の全国両会でも、自動車産業の質の高い発展をテーマに、技術革新や高品質な海外展開などについて提言していく考えだという。

朱氏は自動車を、自律的に進化する「スマートカー・ロボット」に例え、これが人と車の関係を改めて定義していくと見る。「スマートカーはもはや単なる移動手段ではない。安全の約束とテクノロジーの夢を乗せた『移動する空間』なのだ」と述べた。(c)東方新報/AFPBB News