【3月5日 CNS】山西省(Shanxi)運城市(Yuncheng)に住む1990年代生まれの農村出身の若者、高駿鵬(Gao Junpeng)さんは、春節(旧正月、Lunar New Year)期間に海南省(Hainan)三亜市(Sanya)へ向かう航空券をすでに購入した。今回で海南省を訪れるのは10回目になる。海南省で大学を卒業後、故郷に戻って起業した高さんは、時間ができると海南へ飛び、海風にあたり、コンサートを楽しみ、免税店で家族や友人への土産を選ぶのが好きだ。彼の足取りの背景には、急速に拡大する新たな消費市場がある。

中国文化観光部がこのほど発表したデータによると、2025年に農村住民の国内旅行者数は延べ15億2600万人に達し、旅行支出は初めて1兆元(約22兆1817億円)を突破した。農村住民の旅行者数と支出の伸び率はいずれも20%を超え、都市住民を大きく上回った。観光支出の伸び率は21.4%で、都市住民(7.5%)のほぼ3倍に達した。かつては県外に出たことのない農村住民も少なくなかったが、いまや国内観光消費の中で最も成長が速い層となっている。

背景には所得の増加がある。2025年の農村住民1人当たり可処分所得は2万4456元(約54万2475円)で、実質6%増加し、成長率はここ数年、都市住民を上回っている。農村振興戦略への投資が実際に所得向上につながり、4億5100万人にのぼる農村常住人口が大きな消費基盤を形成している。所得が増えるにつれ、消費構造は「貯蓄して家を建てる」から「お金を使って体験を楽しむ」へと移り、観光が日常の選択肢となりつつある。

各地も需要を取り込もうと観光消費促進策を打ち出している。2025年夏の観光消費シーズンだけで、全国で累計5億7000万元(約126億4356万円)を超える補助金が配布され、旅行需要を後押しした。現在、全国の5A級観光地は358か所、国家級観光リゾートは85か所に増加し、観光街区や博物館など多様な体験の場も広がっている。ドライブ旅行、親子旅行、高齢者向け旅行、スキー旅行など、旅行スタイルも一段と多様化している。

交通インフラの整備も追い風だ。農村道路建設への投資は長年にわたり年間4000億元(約8兆8726億円)以上を維持しており、2024年末時点で農村道路の総延長は464万キロに達した。山は変わらないが、山の外の世界はこれまでになく身近になった。

農村住民が支える1兆元規模の観光消費は、観光産業にとどまらず、内需拡大を支える重要な力となっている。交通、飲食、宿泊、小売、娯楽など幅広い産業への波及効果も大きい。広大な農村から生まれたこの消費の伸びは、中国経済の底堅さと潜在力を示している。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News