中国の民間ロケット事業:山東省の商業宇宙産業は海へ向かう
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【2月28日 People’s Daily】ロケット一機が生産工場から出荷され発射場まで行くのに、どれほどの時間を要するだろうか?
実はわずか2時間で行くことができる、これは、山東省(Shandong)煙台市(Yantai)海陽市(Haiyang)に建設された「東方航天港」が出した答えだ。この驚異的な効率の背景には、熟慮を重ねた産業配置がある。
現在、商業宇宙産業は世界的な技術競争と産業変革の新たな舞台になりつつある。中国における伝統的な製造業が有名な経済大省の山東省(Shandong)は、この新たな分野に着手し、省内の複数の地域が特色ある発展を遂げ、互いに強みを補完し合う商業宇宙産業クラスターの構築を進め、商業宇宙の全サプライチェーンが形成されている。
2019年6月5日、中国は黄海海域で初の海上発射を成功させた。その支援母港がまさに海陽港であった。煙台市はこの機会を捉え「東方航天港」の建設に着手した。
東方航天港グループの王肖銘(Wang Xiaoming)総経理補佐は「海陽港は自然条件と産業基盤の両方を兼ね備え、定常的な海上発射を実現する潜在力がある」と述べた。ここは黄海に面し、気象条件に優れ、打上げ可能タイミング(発射ウィンドウ)が自然に確保でき、打上げ地点の柔軟な選択が可能で、低軌道傾斜角、太陽同期軌道など多様な軌道の打上げ需要を満たすことができる。さらに重要なのは、煙台市の豊富な海洋工学・機器製造能力が、宇宙産業に「目と鼻の先」の産業サポートを提供している点だ。
宇宙産業における「プロセスが長い」「発射設備が不足している」「打上げコストが高い」といった共通課題を解決するため、「東方航天港」は明確な産業誘致方針を打ち出した。すなわち、資源を集中して信頼性の高い海上発射インフラを整備し、トップクラスの研究開発・製造企業を誘致し、ロケット製造に必要な各種関連産業や衛星開発からデータ応用など下流工程まで焦点を当て、計画的に企業を誘致・育成することである。
「この『点から面への展開戦略』により、産業チェーンは単一の打上げサービスから、上流の衛星・ロケットの研究開発・製造、下流の宇宙情報サービスへと徐々に拡大し、最終的にはサプライチェーン全体をカバーする『商業宇宙産業エコシステム』の構築を目指している」、東方航天港グループの張華(Zhang Hua)副総経理はこのように解説する。
「東方航天港」を歩くと、東西に延びる全長約6キロメートルの「航天大道」が目に入る。これは単なる道路ではなく、ロケット組立・試験施設、衛星産業パーク、データ応用センター、発射ドックを緊密に結ぶ「産業中枢」である。
「前港後厂(前面に港、背後に工場)」「制発一体(製造・発射一体化)」という集約的配置により、ロケットは組立工場で誕生した後、わずか10数分の車両移動で専用ドックに直接運ばれ、安定して発射船へと移送されるのだという。これは、ロケットがかつてのように数千キロに及ぶ長距離輸送、遠隔地での分解・再組立という長い周期を経る必要が完全になくなったことを意味し、打上げ効率を向上させるとともに、複雑なプロセスに伴うリスクとコストの削減も実現した。
中国初かつ唯一の商業用宇宙開発の海上発射母港として「東方航天港」はすでに20回以上の海上発射を成功裏にサポートし、130機を超える衛星を宇宙へ送り出している。
現在、園区には「山東長征火箭」や「星河動力(Galactic Energy)」など、30の航空宇宙産業が集積し、総投資額は320億元(約7050億円)を超えている。海上発射を牽引役とし、ロケット製造、衛星応用、ハイエンドサポート関連産業をカバーする商業宇宙産業クラスターがここで急速に台頭している。
「済南(Jinan)衛星AIT産業基地」の総組立工場に入ると、大型のAGV(自動誘導車)が衛星コンポーネントを載せ、巨大な6軸ロボットアームの傍へと滑るように移動している。エンジニアがコンポーネントを巧みに設置すると、ロボットアームはまるで落ち着き払った「宇宙の刺繍職人」のように、部品を衛星キャビネットのインターフェースに精密に接合する。
これは山東省初の柔軟でスマートな衛星製造ラインであり、年間100機の500kg級衛星を生産できる能力を持つ。このラインを建設したのは、8年前に鉄鋼という主力事業を全面的に停止した「済鋼グループ(Jigang Group)」である。
「済鋼」は豊富な工業製品製造の基盤を持つが、衛星製造に不可欠な中核的人材の不足に直面した。これに対し現地政府と済鋼グループは協力して、特別政策により専門家を招致し、プロジェクトの迅速な推進のための基礎を固めた。
製鉄企業「済鋼」の変貌は、山東省が商業宇宙戦略を協調的に展開する姿勢を体現している。現在、同省は海上発射を中核的牽引力として、特色ある発展と強みの補完によるクラスター構造を形成しつつある。煙台は海上発射、ロケット製造などに注力し、済南、泰安(Taian)は液体ロケットの製造・試験、衛星の研究開発・応用などを専門に進め、青島(Qingdao)は測量制御(テレメトリ・トラッキング・コマンド:TT&C)サービスと海洋リモートセンシング応用に重点を置き、国家重要プロジェクトから商業衛星群のコンステレーション運用の双方をカバーする完全な測量制御能力を構築している。
山東省は27年までに比較的整った商業宇宙産業チェーンを形成し、年間100基のロケット、150機の商業衛星を生産する能力を備え、商業宇宙産業の規模は500億元(約1兆1015億円)に達すると見込まれている。(c)People’s Daily /AFPBB News