小さな「釣り針」が、なぜ「億単位」の産業を支えるのか
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【2月24日 東方新報】中国・江西省(Jiangxi)北部の鄱陽県は、ハ陽湖(Poyang Lake)の名の由来にもなった土地で、江西省内では人口が最も多い県だ。国家級の穀物・綿花・食用油・養豚・養魚の主要基地として「魚米の里」と呼ばれてきたが、もう一つ意外な特産がある。釣り針である。県内には釣り針を機械化して生産・加工する企業が47社あり、年間生産は100億本を超える。中国で流通する釣り針の約70%が鄱陽県産で、世界全体でも100本のうち25本が鄱陽県で作られているという。
この産業の源流の一つが、ハ陽湖東岸の管驛前村だ。千年の歴史を持つ漁村で、かつては水産物の取引で栄えた。昔の漁師は「魚卡(ぎょか)」と呼ばれる独特の漁具を作り、漁獲を支えてきた。村の住民、戴美霞(Dai Meixia)さん(75)は「14歳のころから作っている。代々受け継がれてきた技だ」と話す。毛竹の枝を薄く削って両端を尖らせ、川辺に生えるヨシを煮てしなやかさを出し、竹片を折って固定して穀米をはさみ込む。一定間隔でナイロン糸に結び付け、水面に仕掛けて翌日に回収する仕組みだという。ただ、作る手間がかかり、耐久性にも課題があったため、次第に姿を消していった。
1980年代以降、村の人びとは手仕事の技術を生かし、釣り針づくりへと仕事を移していった。2000年代に入るとレジャー釣り市場の拡大も追い風となり、管驛前村をルーツに持つメーカーが相次いで成長したという。地元の企業は派手に宣伝するタイプではないが、改良を積み重ねながら規模を広げてきた。地元の企業は派手に宣伝するタイプではないが、改良を積み重ねながら規模を広げてきた。
鄱陽県長明漁具有限公司の総経理、占海波(Zhan Haipo)氏は「社員は600人以上で、さまざまな種類の釣り針を作っている」と話す。資料によれば同社の年産は最大50億本で世界最大級とされ、独自ブランドや特許も保有する。黒金剛釣具有限責任公司も、設計・開発から生産、販売、輸出まで手がけ、創業当初は小規模だったが、現在は海外にも拠点を構える企業グループに成長した。かつて日本製が標準と見られてきた分野で、中国ブランドとして世界に打って出たいとしている。
行政側も産業の土台づくりを進めてきた。2002年に鄱陽工業園区が設立され、企業誘致や大学・研究機関との連携を後押ししているという。産業の高度化とデジタル化も進められ、主要企業ではスマート化・デジタル化の取り組みが進行中だ。さらに釣り産業と文化・観光を結び付け、釣り大会や展示会などを通じて地域ブランドの発信も強めている。
漁村の手仕事から始まった釣り針づくりは、いまでは国内外の市場を支える産業へと育った。小さな道具の積み重ねが、地域の新たな柱になっている。(c)東方新報/AFPBB News