LABUBUに服を作る――広がる「娃衣」ビジネスの行方
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【2月18日 東方新報】中国・浙江省(Zhejiang)桐郷でレディース服工場を営む傅楨哲(Fu Zhenzhe)さんは、LABUBU(ラブブ)のデザイナーズトイを200体以上集めている。ニットで有名な濮院鎮で、昨年5月、余った設備と素材を使い、数センチほどのLABUBU用セーターを試しに作ったのがすべての始まりだった。
趣味の延長だったこの試みは、思いがけずブームに乗る。海外向け取引をしている友人に促され、彼女の工場では一時、1日3000セットもの「娃衣(ドール服)」を生産した。北米では、服や靴、アクセサリーを含む高級セットが2000元(約4万5159円)近くで売れることもあったという。だが、2025年夏の熱狂が落ち着くと、注文は急減し、傅楨哲さんは本業の女装生産へと戻った。
このブームの中で、作り手だけでなく「美」を定義する人も現れた。広告業界出身の程玲(Cheng Ling)さんは、LABUBU人気が高まる直前の2025年春、「娃衣コーディネーター」という役割に目を付けた。彼女のネットショップでは、色使いやスタイルを重視し、完成度の高い組み合わせを提案する。北京市在住の愛好家・小晚(Xiao Wan)さんのように、ドールと同時に服を買いそろえ、コーディネートごと購入する層が、こうしたビジネスを支えている。
娃衣の価格帯は幅広く、十数元(10元=約223円)から100元(約2239円)超までさまざまだ。ただし、小さく精密な作業が必要なため、利益は薄い。程玲さん自身も、初年度は収支がほぼ均衡したにとどまったという。それでも彼女は撤退せず、感覚ではなくROIを基準に商品構成を見直している。
生産現場では、別の壁も立ちはだかる。LABUBUの標準身長は約17センチで、生地は極小、作業効率も低い。利益は1セット数元程度にすぎず、流行が落ちれば生産ラインは維持できない。このため、多くの事業者にとって娃衣は「流行の宿主」に強く依存するビジネスだった。
一方、大手縫製企業は異なる視点で参入している。海寧市(Haining)のシルクメーカー経営者・胡鳴一(Hu Mingyi)氏は、高級伝統素材の宋錦(中国三大名錦の一つ)や羅を使い、LABUBU用の服を制作した。娃衣そのものの売上は小さいが、若者に伝統素材を知ってもらう「動く広告」として機能し、結果的に高額な本業の受注につながったという。彼にとって娃衣は商品ではなく、ブランドを広げるための媒体だった。
また、別の老舗アパレル企業では、機械生産に向かない娃衣を、在宅の手作業者ネットワークで制作するなど、新しい組織モデルも生まれている。娃衣ブームは、単なる一過性の流行にとどまらず、既存の服飾産業に小さく精密なイノベーションの可能性を示した。
LABUBUの人気が落ち着き、別のIPが注目される中でも、娃衣の役割は変わりつつ残り続けている。作られる「娃」は入れ替わっても、感情に寄り添う服を生み出す仕組みそのものは、次のヒットを待ちながら動き続けている。(c)東方新報/AFPBB News