ソウル市西大門区にある「希少疾患患者シェルター」で記者の取材に応じるチェ・ソンミさん(右)。手に持った紙にはこれまでの診療履歴がびっしりと記されていた(c)news1
ソウル市西大門区にある「希少疾患患者シェルター」で記者の取材に応じるチェ・ソンミさん(右)。手に持った紙にはこれまでの診療履歴がびっしりと記されていた(c)news1

【02月05日 KOREA WAVE】「まずは今夜泊まれる場所を探すことから始まる」──。希少疾患患者であるチェ・ソンミさん(52)が、ソウル行きの列車を予約する前に最優先で確認するのは、診療日ではない。宿泊先だ。診療は事前に予約できても、当日の帰宅先はいつも不透明だからだ。

2月2日、ソウル市西大門区にある「希少疾患患者シェルター」でチェさんは記者に語った。ベーチェット病と家族性多発性ポリープ症に加え、最近ではシェーグレン症候群の疑いも受けており、リウマチ、甲状腺がんの再発による後遺症も抱える。皮膚科、リウマチ内科、口腔内科など複数の診療科を回っているが、外来や検査が1日で終わらないことも多く、その日のうちに浦項の自宅へ戻るのは現実的ではない。

「夜明け前にソウルへ着くとタクシーも捕まらず、寒空の下で長時間待たされることがよくあります。夜間に追加検査が入ると、終電もなくなり帰れない。病気を抱えて来ているのに、その後のことはすべて自分で何とかしなければならないのが本当につらい」

希少疾患・難病は頻繁な検査と長期的な経過観察が必要なため、患者や家族が居住地を離れ、首都圏の大病院に通うケースが多い。移動に伴う費用負担は交通費にとどまらず、数日に及ぶ滞在費や家族の休暇、さらには生計維持にまで影響する。こうした現実に対処するために設けられたのが、「希少疾患患者シェルター」だ。

希少疾患患者シェルター(c)news1
希少疾患患者シェルター(c)news1

この施設は、社団法人「韓国希少・難病疾患連合会」が疾病管理庁の支援を受け、2007年から運営しており、今年で20年目を迎える。チェさんのように地方から首都圏の医療機関に来る患者や保護者に対して、所得や年齢制限なしで短期間の無料宿泊を提供。電話予約だけで利用可能なため、アクセスのしやすさも評価されている。

昨年は年間で825人が利用。月平均で約70人が宿泊しており、リピーターも少なくない。満足度調査では利用者の99%が「満足」と回答している。

希少疾患患者にとって負担は身体的な苦痛だけにとどまらない。度重なる検査、治療経過への不安、生活や介護の問題が重なり、精神的・情緒的な疲弊を訴えるケースも多い。そのため、シェルターでは宿泊に加えて心理相談やアートセラピーなどのサポートも実施している。昨年は30人が計360件の相談や治療を受け、前年比で20%増加した。

また、同じ悩みを抱える者同士が孤独感や不安を分かち合えるよう、自助グループの活動も支援している。対面参加が難しい地方在住者向けにオンラインプログラムも併用しており、事業を担当するキム・ジンファ部長は「希少疾患は情報の希少性も大きな問題です。オフラインとオンラインの両方で疾患別の自助会を支援し、情報共有と交流の場を提供しています」と話す。

このように、希少疾患患者シェルターは単なる宿泊施設ではなく、治療を継続し生活を支える“安全網”としての役割を担っている。高い満足度とリピート率がその意義を裏付けている。

シェルターの壁に貼られた、利用者たちの手書きメモ(c)news1
シェルターの壁に貼られた、利用者たちの手書きメモ(c)news1

一方で、課題も残る。キム部長は「身体が不自由な患者が、軍用リュックのような大荷物を背負って地方とソウルを行き来している。現在、ソウルにシェルターは1カ所だけだ。大型病院の近くに小規模でもいいから新たなシェルターが増えてほしい」と訴えた。

「シェルター」という言葉は一時的な避難場所を意味するが、「希少疾患患者シェルター」は患者にとって治療と生活を支える“必要不可欠な場所”である。チェさんは来月も10日ほどソウルに滞在する予定だが、週末は隔週運営となっているため、日程によっては他の宿泊先を探さなければならないという。

こうした悩みを抱えて首都圏の病院に通う希少疾患患者は、全国に45万人以上いると推定されている。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News