フランスの眼鏡メーカー、マクロン氏着用で脚光
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【1月31日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン大統領が先週スイス東部ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の壇上でドナルド・トランプ米大統領と対峙(たいじ)した際に着用していたアビエーターサングラスが世界中の注目を集め、フランスに拠点を置くメーカーのイタリアの親会社に思いがけない利益をもたらしている。
こうした注文の急増にもかかわらず、1700年代後半にジュラ県東部で創業したフランスの老舗眼鏡(アイウェア)メーカー「アンリ・ジュリアン」は、同国の眼鏡産業が衰退する中、はるかに安い製品を提供するアジアメーカーとの競争にさらされ、苦戦を強いられている。
アンリ・ジュリアンのシルバーのフレームにブルーレンズをあしらった映画「トップガン」風サングラスの販売価格は、659ユーロ(約12万1000円)。現在、フランス大統領府(エリゼ宮)のオンラインストアで販売されている。
アンリ・ジュリアンを傘下に置くイタリア企業アイビジョンテックのステファノ・フルチル最高経営責任者(CEO)は、ダボス会議以来、「世界中から問い合わせを受けており、信じられないほどの宣伝効果を得ている」と語った。
すでにサングラス500本以上をオンラインで売り上げた。ジュラ県で生産されるアビエーターモデル「パシフィックS01」200本を含め年間1000本しか生産していないアンリ・ジュリアンにとって大きな数字だ。
フルチル氏によると、アクセスが集中したことでアンリ・ジュリアンのウェブサイトがダウンしたため、大統領モデル専用の臨時ウェブページが開設された。一方、アイビジョンテックの株価は数日間で70%上昇したという。
マクロン氏は2024年、日米欧の先進国に新興国を加えた20か国・地域首脳会議(G20サミット)の際に閣僚に贈るために「パシフィックS01」を注文。合わせて自分用にも1本注文したという。
金のワイヤーを使った同モデルは、4か月かけて279もの複雑な工程を経て完成する。
人生の半分以上をアンリ・ジュリアンで過ごしてきた眼鏡職人のエルベ・バセットさん(60)は、「もちろん、どちらのサングラスも丁寧に仕上げた」と語った。
業界歴30年のカリーヌ・ペリサールさんによると、アンリ・ジュリアンの従業員全員がマクロン氏から感謝状を受け取ったという。
■縮小するフランスの眼鏡産業
アンリ・ジュリアンの従業員数は15年前には約180人だったが、2023年にアイビジョンテックに買収された時にはわずか15人にまで減少した。
従業員はそこからさらに減少し、アイビジョンテックによると、ジュラ県にあるアンリ・ジュリアンの工場には10人しか残っていない。このため急増する注文に対応するには、イタリアのマルティニャッコにあるアイビジョンテックの工場で製造せざるを得ないという。
フルチル氏によると、眼鏡の出どころの正しさを保証するため、製造工場に応じて「フランス製」と「イタリア製」の刻印を使い分けるという。これらは眼鏡業界で「最も重要な」品質保証ラベルだ。
だが、ジュラ県の眼鏡メーカー組合のジュリアン・フォレスティエ会長は、今回のサングラスフィーバーは地元の眼鏡産業に「何の利益ももたらさないだろう」と語った。
フォレスティエ氏は、「フランス製にこだわっている企業はほんのわずかしか残っていない」と嘆き、眼鏡店でさえもはや「フランス製」の刻印を心からは信じていないと述べた。
現在も年間200万本を生産しているが、ジュラ県の眼鏡産業従事者は1950年代の1万人から現在は約800人にまで減少している。眼鏡メーカーも50社しか残っていない。(c)AFP