【2月5日 CNS】ゲームとeスポーツは、ネット上の娯楽にとどまらず、都市の成長戦略の中で存在感を強めている。

2025年12月、上海市は上海市はゲーム産業を支援する「滬十条」と呼ばれる10か条の政策を打ち出し、毎年5000万元(約円)の支援枠を設けて産業の基盤づくりを進める方針を示した。広州市(Guangzhou)も続いて「18項目の施策」を公表し、2030年までに世界有数のeスポーツ都市を目指す考えを明記した。深セン市(Shenzhen)も同年11月に「中国のゲーム海外展開の中心都市」を掲げ、3か年の行動計画を発表している。主要都市が相次いで政策を整える背景には、ゲーム・eスポーツ産業の特性を生かし、経済、技術、文化発信の面で波及効果を引き出したい狙いがある。

経済面では、市場の広がりが目立つ。中国音像与数字出版協会(中国オーディオビデオとデジタル出版協会、音数協)の敖然(Ao Ran)副会長は以前、ゲーム産業は単なる娯楽を超え、文化とテクノロジーを結びつけながら幅広い産業を押し上げる力になっていると述べた。敖然氏によれば、価値の広がりは三層構造で、開発・配信・運営といった中核の分野に加え、ハードウェアやeスポーツ、IP派生開発など周辺ビジネスへ広がり、さらに観光、教育、医療など別の分野にも影響が及ぶという。

各地では関連イベントも相次ぐ。上海ではeスポーツのアジアチャンピオンズリーグが注目を集め、ゲーム動画配信サイト大手「虎牙直播(Huya)」の上海eスポーツ主会場は2026年3月の稼働を予定している。北京市では『王者栄耀(Honor of Kings)』の決勝が国家体育場(鳥の巣)で行われ、世界から約6万人が集まった。浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)では『黒神話:悟空(Black Myth: Wukong)』のアート展が人気を呼び、欧州発の「BLAST Dota2」メジャー大会は四川省(Sichuan)成都市(Chendu)で開催された。音数協が専門機関と試算したところ、2025年にゲームが直接・間接に生み出した経済規模は1.2兆元(約2兆7313億円)を超えるという。各地の支援策は、この成長をさらに後押しする狙いがあるとみられる。

技術面でも、ゲーム・eスポーツは先端技術を実際に使いながら磨く場になっている。産業自体がAI、クラウド、リアルタイムレンダリングなどを取り込んでおり、ゲーム内の複雑な仮想環境はAIの学習、VR/ARの応用、メタバース構築、ゲームエンジン開発にとって試行と検証を重ねやすい。音数協の孫寿山(Sun Shoushan)理事長は、ゲーム・eスポーツは先端技術の活用が進む分野で、分野横断の応用から新しいサービスやビジネスが生まれやすく、デジタル技術と実体産業の結びつきを強める役割も期待できると述べている。政策の狙いは、ここで磨かれた技術を、産業シミュレーションやスマートシティ、デジタル医療などへ展開しやすくすることにある。

文化面では、ゲームが「物語を届けるメディア」としての役割を強めている。「文化の海外発信」が重視される中、国産ゲームは東洋的な美意識を生かした世界観づくりに力を入れており、『黒神話:悟空』のような話題作は、体験型コンテンツとして中国の文化や物語を海外へ伝える手段になりつつある。孫寿山氏も、海外のプレーヤーがゲーム体験を通じて中国文化への理解や共感を深めているとして、ゲームは伝統文化を伝える有力な手段の一つだとの見方を示した。

北京師範大学(Beijing Normal University)芸術・メディア学院の何威(He Wei)教授は「三里河中国経済観察」に対し、各地の政策からは、ゲーム・eスポーツ産業が娯楽中心の枠を超え、価値の幅を広げていく方向性が読み取れると指摘する。中国のゲーム・eスポーツ産業は、都市政策の中での位置づけを一段と高めつつある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News