【三里河中国経済観察】国家水網整備が加速 民生と成長を支える基盤に
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【2月4日 CNS】国家水網の整備が、新たなインフラ投資の重要分野として位置づけられつつある。
2025年の最終日、国務院は常務会議を開き、国家水網整備の進捗状況について報告を受けた。会議では、国家水網は水資源の配置を最適化し、洪水対策や防災・減災能力を高め、国の水安全を確保するための戦略的インフラであると同時に、交通、環境保全、観光景観などにも幅広い効果をもたらすと指摘された。また、当面および今後一定期間における内需拡大の重要な推進役になるとも位置づけられた。
この位置づけは、国民生活と経済の双方に直結する国家水網整備に、より長期的で重みのある戦略的意味を与えるものだ。
国家電力網や道路網、高速鉄道網と異なり、国家水網は単なる土木インフラではない。水資源管理、防災、交通、環境保全などの機能を併せ持つ、複合的なシステムとして整備が進められている。会議では、従来の水資源配分や洪水対策に加え、こうした多面的な効果が特に強調された。
安徽省(Anhui)で進められている引江済淮プロジェクトは、その代表例だ。総投資額が1000億元(約2兆2728億円)を超えるこの事業は、生活・産業用水の供給、水運、環境改善の機能を併せ持ち、皖北地域(安徽省北部地域)の水不足を解消するとともに、北京市から浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)までを結ぶ京杭大運河に並ぶ中国第2の南北水運ルートとしての役割も担っている。
資金の確保は、すべての大型インフラ事業に共通する最大の課題であり、国家水網も例外ではない。会議で示された「投融資の仕組みを革新する」という方針は、この問題に正面から向き合ったものだ。政府投資はあくまで呼び水とし、実際の推進力は多様な市場主体に求める考えが示された。中央企業や国有企業の投資拡大を促すとともに、民間資本の参画を積極的に呼び込み、複数の手段で建設資金を調達するとしている。
すでに先行する地域もある。全国で初めて水網整備の先導地域に指定された浙江省では、「第14次五か年計画(十四五)」期間に政府資金を起点として市場資金を呼び込み、水利事業を推進してきた。その結果、市場型の資金調達が全体の44%を占めるまでになっている。
浙江省紹興市(Shaoxing)では、湯浦ダムの今後30年間の運営収益を活用し、中国初となる水利分野のREITs(不動産投資信託)を上場させ、16億968万元(約365億8480万円)を調達した。回収した資金はすべて鏡嶺ダムの建設に再投資され、既存の水利資産を生かしながら新たな投資を生む好循環を実現している。
国家水網整備が「内需拡大の重要な推進役」と位置づけられる背景には、明確な経済的根拠がある。水利事業は投資規模が大きく、関連産業への波及効果も広い。試算では、大型水利プロジェクトに1000億元を投資すると、GDPを約0.15ポイント押し上げる効果があるとされる。
水利部のデータによると、2025年1~10月に全国で水利建設への投資額は1兆94.7億元億元(約22兆9432億円)に達し、4万6000件の水利事業が実施された。このうち新規着工は2万8000件に上る。
さらに重要なのは、整備された水利インフラが、地域経済の運営コストを着実に引き下げる点だ。例えば、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の北部湾周辺水資源配置プロジェクトが完成すれば、南寧市(Nanning)、北海市(Beihai)、欽州市(Qinzhou)、玉林市(Yulin)などの水不足が緩和され、生態環境の改善とともに地域経済の基盤強化につながる。
甘粛省(Gansu)では、引洮給水第2期プロジェクトの通水により、農業用水が安定的に供給され、天候任せだった農業の体質が転換された。農業構造の調整が進み、農民の収入も大きく伸びている。
会議はまた、計画立案から施工、完成後の検査まで、すべての段階で品質管理を徹底し、長期にわたって信頼に耐える水網を整備する必要性を強調した。国が「量」だけでなく「質」を重視している姿勢が鮮明になった。
一方で、水網事業は関係部門が多く、調整の難しさも伴う。会議で示された、部門間の連携強化、事前準備の加速、用地などの条件整備を徹底する方針は、こうした現実的な課題に対応するためのものだ。
長江デルタ(上海市、江蘇省<Jiangsu>、浙江省)の密集した河川網から、西北部の乾燥地域を貫く送水ルート、雲貴高原の貯水施設、華北平原の節水設備に至るまで、全国を覆う多機能な国家水網は着実に形を成しつつある。そこを流れるのは水資源だけではない。地域の発展と人びとの暮らしを支える、新たな機会でもある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News