【1月22日 AFP】ドナルド・トランプ米大統領は21日、スイス東部ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で最も期待されていた演説に臨んだ。

会議場はすぐに満員となり、あぶれた人々は別の部屋でモニター越しに演説を聴こうと席を探した。

そうした部屋の一つではトランプ氏の演説中、聴衆から笑い声と驚きの声が上がった。

トランプ氏が風力発電所が鳥を殺している話をすると聴衆は大爆笑。デンマーク自治領グリーンランドを「ア・ピース・オブ・アイス(a piece of ice、氷のかけら)」と呼ぶと、ぎこちない笑いが起こった。

トランプ氏が突然グリーンランドを「アイスランド」と呼び始めると、聴衆たちは驚きのあまり顔を見合わせた。

また、カナダのマーク・カーニー首相を恩知らずだと非難した後、「カナダが存続できているのは米国のおかげだ」と主張した時には、「やばい」と声を上げた人もいた。

結膜下出血のためにアビエーターサングラスをかけていたフランスのエマニュエル・マクロン大統領をやゆすると、驚きやあきれ、皮肉が混ざった笑いが起こった。

トランプ氏が再び「米国が求めているのはグリーンランドと呼ばれる場所だけだ」と主張すると、怒号が飛んだ。

聴衆の一人は、「彼は新保守主義者(ネオコン)から新帝国主義者(ネオインペリアル)になったと言っていい」とささやいた。

別の聴衆は帰り際に「彼は頭がおかしい」と言った。

だが、多くの人が、トランプ氏は挑発的な意見を聞くフォーラムの理想的なゲストだと述べた。

南アフリカの電力会社のCEO、ダニエル・マロカネ氏は、「ダボスはアイデアや意見を交換する場だ。だから、私たちは好むと好まざるとにかかわらず、あらゆる意見に耳を傾けるためにここにいる」と述べた。

一方で、北大西洋条約機構(NATO)への巨額の拠出金に対する見返りとして、米国がグリーンランドを領有すべきだと主張するなど、トランプ氏特有の攻撃的な態度に憤慨する人もいた。

演説後、スウェーデンのエッバ・ブッシュ・エネルギー相は、「われわれは民主主義に従事しているのであって、合併・買収に従事しているのではない」「われわれが脅迫に屈することはない」と述べた。

他の財界人と同様、匿名を条件に取材に応じた米国の医療技術企業幹部は、「トランプ氏は場の空気を読む力があるからこそ当選したが、今回場の空気を読めていたかは分からない」「ある男性が立ち上がって退室するのを見たが、明らかに怒りにふるえていた」と述べた。

ポーランドのカロル・ナブロツキ大統領にとって、これは「非常に重要な演説」だった。トランプ氏がグリーンランド領有するために武力を行使するつもりはないと明言したことも、演説の意義を強めた。

ナブロツキ氏はAFPに対し、「われわれはこの件について外交的解決を模索しており、解決できると確信している」と語った。

トランプ氏を声高に批判するカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、今回の演説は国際社会にとって「開いた口がふさがらない」ものだったと述べ、グリーンランド領有のための武力行使という暗黙の脅しを撤回したにもかかわらず、米欧関係に悪影響を与えたと批判した。

「被害は甚大だ。だからこそ、この演説はこれほどまでに情けないものになった。一体何の意味があったのか」とニューサム氏は述べた。

2025年ノーベル経済学賞の共同受賞者であるフィリップ・アギョン氏は、「彼の演説は、欧州が立ち上がり、目を覚ます必要があるという私の考えを裏付けるものだ」「交渉は強い立場から行う必要がある。そして、欧州が尊重されるようにすることが重要だ」と述べた。(c)AFP