【三里河中国経済観察】村にやって来たCEO
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【1月19日 CNS】中国・四川省(Sichuan)大竹県烏木鎮の広子村では、傅建忠(Fu Jianzhong)さんの名を挙げると、村人はみな親指を立てて称賛する。
田園は公園に、農家住宅は宿泊用の客室に――。傅さんの指揮のもと、村に眠っていた遊休資源は人びとの「稼げる資産」へと姿を変え、山や川といった自然資源も、住民の暮らしを豊かにする「宝の器」となった。
傅建忠さんはもともと浙江省(Zhejiang)のネット関連企業で幹部を務めていたが、今年1月に応募して大竹県広子村の「農村CEO」に就任した。
中国で農村振興が大きな潮流となる中、四川東部では「人材を農村へ呼び込む」取り組みが、静かに先行して進んでいる。商業の世界で100年にわたって運用されてきたCEOという仕組みが、農村で新たな使命を与えられつつあるのだ。
2025年、四川省は全省規模で「新農人(新しい担い手)」としての人材呼び込みの試行を開始し、大竹県はその先陣を切った。
単に幹部を派遣したり、ボランティアを募集したりするのではない。大胆な試みとして「一村一CEO」行動を打ち出し、「配当+成果評価」による報酬モデルを導入するとともに、「1+N」の支援体制を整備した。新農人が仕事を進め、起業・事業づくりに取り組めるよう、全面的に後押しし、農村が自ら動き出す力を効果的に引き出した。
農村振興で鍵となるのは人材だ。
2025年初め、国家発展改革委員会の担当者は「農村全面振興計画(2024-2027年)」に関する記者会見で、今後数年の重点課題として、農村人材の育成を強化し、各分野の人材が農村の全面振興に参加するよう促す方針を示した。具体的には、農村人材チームの拡充、人材育成システムの整備、人材保障メカニズムの強化などが含まれる。
長年にわたり、人材不足は農村振興を阻む最大のボトルネックとされてきた。統計によれば、全国の村幹部310万人余りのうち、大学教育を受けた人は1%にも満たず、科学技術人材の割合も極めて低い。人材不足は、農業・農村の発展を制約する重要な要因となっている。
大竹県の突破口は、人材政策と農村振興戦略を体系的に深く結びつけた点にある。現地が模索する「一村一CEO」計画は、本質的には農村のガバナンス構造に現代企業のマネジメント思考を組み込み、市場化の仕組みを通じて、専門人材が農村に根を下ろし、芽を出し、花を咲かせられるようにする試みだ。例えば、人材募集では戸籍や専攻分野を問わない一方、実務力を必須条件とした。オンラインでは募集動画を公開し、ネット応募とアイデア募集の窓口を設け、オフラインでは上海市・北京市・広東省(Guangdong)で専用の募集説明会を開催し、280人が応募した。
また大竹県は、発展ニーズと結びつけながら、「プランナー」「実務運営の担い手」「産業プロデューサー」「ブランド責任者」「意思決定者」という5つの主要職務を設定し、農村CEOと村幹部の権限・責任の境界を明確にした。これにより農村CEOの力を最大限引き出している。
CEO一人が村の生態を変え、変化は目に見える速度で進んでいる。
データによると、人材呼び込みの「新農人」試行開始以降、大竹県の農村CEOは180件余りのプロジェクトを推進し、1200件余りの雇用を創出した。住民の1人当たり増収は2.23万元(約49万9765円)に達し、「農業は強く、農村は美しく、農民は豊かになる」という好循環が形成されている。
より深い変化は、統治の面に現れている。
公開資料によれば、大竹県の「農村CEO」は政経分離の原則を堅持し、村党組織書記と農村CEOの間で24項目の「権限・責任リスト」と「職務遂行における禁止事項リスト」を作成した。人事、財務、プロジェクト、運営などにおける権限と責任の境界を明確にするとともに、定期的な連席会議制度も設けた。良好な業務環境を整えられない村党支部書記については、規定と規律に基づき厳正に責任を追及し、調整を行うとしている。権限争いや足の引っ張り合いを防ぐ狙いだ。
数字は統治の成果を最も直接的に示す。2025年までに、大竹県の村集団経済の収入は2700万元(約6億509万円)を突破した。さらに重要なのは、大竹県が「文化や情感の資源を経済資本へ転換し、外部の知恵を地域のネットワークに結びつけ、現代的な統治を農村社会に埋め込む」という実行可能な道筋を切り開いたことだ。
農村振興に最も欠けているのは資源ではなく、実行力と挑戦心を備え、資源を活性化できるリーダーだ――そうした見方もある。
「一村一CEO」は、一見すると単なるポストの設置にすぎない。しかし実際には、農村統治システムに対する深い改革でもある。
それによって農村振興は、専門人材が導き、市場化メカニズムが支え、持続可能な原動力を備えた、具体的で生きた実践となっている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News