【12月28日 AFP】イラク南部の砂漠では、ブルドーザーなどの重機を用いて、砂の上に湿った粘土が広げられている。これは、頻発する砂嵐と戦うための広範な取り組みの一環だ。

イラクは長年、砂嵐と砂じん嵐に悩まされてきた。そして近年、気候変動の影響により、こうした嵐はより頻繁に発生するようになり、また激しさも増している。

砂嵐や砂じん嵐は、深刻な干ばつや気温上昇、森林伐採などが要因とされる。都市や村を黄土色の霞で覆い、飛行機の運航を停止させる他、人々の呼吸器に問題を生じさせる。

イラク当局は、これらの嵐がさらに激化する可能性があると警告しており、問題の根本的な解決に向けた取り組みの緊急性が高まっている。

古代シュメール遺跡の近く、ナシリヤとサマワの中間地点に位置する地域では、20~25センチの厚さで湿った粘土の層を敷き詰める作業が進められている。

プロジェクトでは、粘土の層を設ける他にも耐熱性のある苗木(プロソピスやコノカルプスなど)の植樹も行われている。

「砂じん嵐は、クウェート、サウジアラビア、カタールにまで到達する可能性がある。プロジェクトの目的はこうした嵐の影響を軽減することだ」と国連ハビタットのウダイ・タハ・ラフタ氏は述べる。

「この地域は広くはないが、プロジェクトにとって重要だ。来夏の砂嵐を減らす助けになることを期待している」

■「ゆっくりだが着実に」

環境省の推定によると、イラクでは現在、年間約243回の砂嵐が発生している。今後、抜本的な対策が講じられない限り、2050年までにその数字は300回に増加することが予想されている。

イラク当局は2023年、国連ハビタットやクウェート・アラブ経済開発基金と協力し、砂嵐の対策に乗り出した。

南部3地域で進められているプロジェクトの最終目標の一つは、緑地を増やし、干ばつや慢性的な水不足により縮小した農地の持続活用を目指すことだ。

1970年代以降、同国はこのようなプロジェクトを実施してきたが、数十年にわたる混乱の中で環境問題への取り組みはほとんど放置されてきた。

こうした状況について、ディーカール大学のナジム・アベド・タレシュ氏は、気候変動の深刻な影響を受け「作業が再開された」と指摘。「ゆっくりだが、着実に進んでいる」と説明した。(c)AFP