北朝鮮、海洋を「戦略空間」に再定義…「北朝鮮版インド太平洋戦略」の可能性も
このニュースをシェア
【12月27日 KOREA WAVE】北朝鮮が海洋を単なる軍事活動の舞台としてではなく、生存と外交・核戦略を複合的に展開する「戦略的空間」として再定義しつつあるとの分析が示された。長期的には中国・ロシアとの連携を軸に、いわば「北朝鮮版インド太平洋戦略」へと発展する可能性もあるとされ、韓国政府の対応が問われている。
韓国の民間シンクタンク、アサン政策研究院のヤン・ウク研究委員とソ・ボベ研究員は12月23日に発表した報告書「北朝鮮の海洋戦略の変化:北朝鮮版インド太平洋戦略への発展可能性」の中で、北朝鮮がロシアとの接近により得た「戦略的余裕」を背景に、海洋を国家戦略の中核領域として政策的に活用し始めたと指摘した。
報告書によると、北朝鮮は2020年代以降、大型水上艦や潜水艦の建造を本格化させ、従来の沿岸防衛重視の海軍戦力から外洋進出を志向する動きを見せている。さらに「海洋主権」や「遠洋作戦能力」といった用語を前面に押し出し、黄海の北方限界線(NLL)を否定しながら「中間線海域」なる新概念を提示するなど、現行の海洋秩序に挑戦する姿勢も見せている。
こうした動向は、単なる戦術的対応ではなく、戦略的構造転換の一環だと報告書は分析している。北朝鮮の海洋戦略は、大量破壊兵器による核抑止力の強化と、制裁回避のための経済的生存戦略が混在する「二重構造」を有しているとした。
短期的には、違法な洋上積み替えや漁業権の販売、船舶偽装などを通じて制裁を回避し、外貨を確保する手段として海洋空間を活用している。また、中国・ロシアとの海上交流を強化し、体制維持の現実的な手段として海洋を位置づけているとみられる。
中長期的には、海洋を核戦力運用の場として活用する意図が明確化しつつある。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試験や、5000トン級の新型駆逐艦の公開、「遠洋作戦能力」に関する言及は、核の第2撃能力の確保やグレーゾーンでの挑発行動の舞台として海洋を利用しようとする意図の表れだという。報告書は「海洋および水中空間における核運用能力の拡大は、北朝鮮の戦略的脅威レベルを質的に変化させる可能性がある」と警鐘を鳴らした。
このような北朝鮮の動きに対し、報告書は韓国政府に対して海洋を中心とした安全保障戦略の再整備を提言している。海軍と海洋警察の協力体制を強化し、海洋監視システムの優位性を確保すべきとした上で、日米韓3カ国による海洋安全保障協力を制度化し、ミサイル防衛や対潜水艦作戦の分野での連携強化が求められると指摘した。
さらに、北朝鮮の海洋戦略が将来的に中朝露の連携軸に組み込まれるリスクを見据え、韓国自身のインド太平洋戦略においても、海洋安全保障と国際秩序の維持に対する比重を高め、各種多国間海洋安保協議体への積極的な参加を通じて対応していく必要性があると報告書は提言した。
報告書は「海洋国家としての韓国の戦略的アイデンティティを、国家安全保障および発展戦略により積極的に結びつけるべき時期に来ている」と結論づけた。
(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News