小興安嶺:ここに林業技術の「小さな拠点」がある
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【1月10日 People’s Daily】8月下旬の小興安嶺(Xiaoxing’anling)、初秋の涼しい風が衣服の襟元から入り込んでくる。一方、黒竜江省(Heilongjiang)竜江森林工業集団(China Longjiang Forest Industry Group)鶴北林業局の「松杉霊芝(松や杉を原木とするマンネンタケ)」の栽培場の中は、暖かさに包まれていた。
「温度を摂氏23度から26度の間に保たなければならない。高すぎると菌が腐りやすくなる」、 鶴北林業技術拠点(科技小院)に第1陣として赴任した菌類栽培の専門家の白林金(Bai Linjin)さんは、指先でそっと菌床を撫で、周囲に集まった林区の作業員たちに丁寧に説明した。
林区で働く代科宝(Dai Kebao)さんは、時にはペンを走らせてメモを取り、時にはスマホを掲げて写真を撮っていた。彼は「専門家が手取り足取り教えてくれて、とても心強い」と話す。
2025年7月「鶴北林業技術拠点」が正式に設立され、地域の生態保護と産業の高度化の「新しい拠点」となった。代さんは「我々林業で働く者は、かつては木を切って生計を立てていた。しかし、斧や鋸をしまって木こりをやめた後は、家計のやりくりに困っていた」と話す。彼は鶴北林業局で30年以上働き、「ただ木を切って売る」という活況の時代も経験したが、林業が抱える生態保護と産業発展の「板挟み」も味わってきた。
このことは鶴北林業局のみならず、全国の多くの林業地域が以前から味わってきたジレンマだった。森林を減らさずに、林業従事者の安定した収入を確保しなければならない。従来は伝統的な林業に長い間依存し続け、「林下経済」(林の下の土地資源と林陰の優位性を利用した農林畜資源の複合経済)が十分に発展せず、キノコや山菜などは良い値段で売れなかった。大学や研究機関の成果は論文の中に「眠ったまま」で、林業現場の実際のニーズとは「隔たり」があった。
鶴北林業技術拠点の鞏前文(Gong Qianwen)拠点長は、初めて鶴北を訪れた時の光景を今でも覚えている。「林業地区を視察した時、病害虫防除の知識がなく、栽培していた霊芝の半分を腐らせてしまった作業員たちを見て、胸が痛んだ」と話す。彼は、実験室で確立された「林下栽培技術」を、現場の人たちが理解して、使える方法に「翻訳」しなければならないと痛感した。
2025年7月17日、竜江森林工業集団、東北林業大学(Northeast Forestry University)、黒竜江生態工程職業学院が主導して、鶴北に林業技術拠点が設立された。鞏拠点長は「この拠点は、林業地区にゼロ距離のサービス提供を目指している。研究者が現場に常駐して問題を発見し、学生が実践で技能を学び、従業者たちが技術を習得することで『紙上の成果』を『林下の利益』に変えるためのものだ」と説明する。
「白先生、どうしよう!うちの栽培棚の霊芝菌床にカビが生えたようだ!」、8月15日の深夜11時、白林金さんのスマホが鳴り、電話の向こうから代さんの焦った声が聞こえた。 白さんは電話を切り、すぐに車で20キロ以上離れた栽培ハウスへ急行した。明かりの下で確認すると、菌床の「カビの斑点」は実際には湿度が高いために発生した気生菌糸で、カビではなかった。「慌てないで。明日の朝まずビニールシートを上げて換気をしなさい。今は水やりを控え、湿度を45%以下に抑えることだ」、 白さんは代さんを落ち着かせながら、温湿度計の使い方を手取り足取り教えた後、午前1時になってようやく帰った。
鞏拠点長は「専門家が現場に来て、専門用語は使わず、全て平易な言葉で説明し、最初の通報に応じ、最後まで一貫してサービスを提供するのが拠点の役割だ」と説明する。運営開始以来、この小さな技術拠点には、生態保護、医療健康、食用菌栽培分野から37名の専門家が視察に訪れている「松杉霊芝」は鶴北の特産品だが、長らく「原料販売」の段階に留まり、生の霊芝1斤(約500グラム)の売り値は30元余り(約663円余り)にしかならなかった。収益向上のため、拠点が主導して地域の発展計画を策定し、「良い原料を栽培するだけでなく、良い製品へ加工する」という方針を明確に打ち出した。
「以前、家で栽培していた5ムー(約0.33ヘクタール)のキクラゲは、1年で多くても5万元(約110万5500円)しか売れなかった。今は専門家のアドバイスで松杉霊芝を栽培している。将来は健康食品に加工できるし、収入もかなり増えるだろう」、代さんはこう期待している。
26歳の女性・呉思(Wu Si)さんは北京林業大学(Beijing Forestry University)生態文明建設専攻科の博士課程の学生だが、7月に技術拠点に入ってからは、毎日専門家について林場を巡り、データを測定している。彼女は「以前は授業で聞く『生態保護』という言葉がどこか抽象的に感じられたが、今になって初めて、保護とは『何もしない』ことではなく、科学技術の力で森林を『緑』で『豊か』にすることだ知った」と話す。
鶴北林業局党委員会の孫天成(Sun Tiancheng)書記は、技術拠点の意義を、単に技術や人材を提供するだけではなく、林業で働く人たちの「考え方」を変えることにあると考えている。「以前は『森林を守っていれば食べていける』と思い込んでいたが、今では、森林は『守る』だけでなく『育てる』もので、さらに科学技術の力で『活気づける』ものだと知った」、孫氏はこう語った。そして「次のステップとして、霊芝栽培、森林セラピー、研修・観光旅行を組み合わせ、『生態+産業』の融合モデルで、より多くの林業従事者が科学技術の恩恵を受けられるようにしたい」と今後に向けての抱負を述べた。(c)People’s Daily /AFPBB News