河北省雄安新区のゼロカーボン実現の道・中国
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【12月30日 People’s Daily】電線敷設、内装工事など、河北省(Hebei)雄安新区スタートアップエリアの国家電網エネルギーインターネット産業・雄安イノベーションセンターの建設現場では、さまざまな作業が最終段階に入っている。
ここは雄安新区で初の「オール電化・スマート・ゼロカーボン園区」で、5棟の建物が中央を囲むように配置されている。中央の惑星のような形状の建物は会議展覧センターで、四隅に4棟の研究産業棟が分布している。この園区は2025年末の竣工予定だ。
建物のカーテンウォールに近づいて見ると、カーテンウォールのガラスは通常のものよりかなり厚く、ガラス1枚の厚さは10センチ近い。
「国家電網デジタルテクノロジー」傘下の雄安公司のプロジェクト安全管理担当者・李鵬(Li Peng)氏は「カーテンウォールは全て3層のガラス板と2つの空洞で構成され、空洞にはアルゴンガスが充填されていて、熱伝導を低減できる。外壁は8000枚以上のガラスのカーテンウォールで構成されるバリアになっており、冬は保温、夏は断熱ができ、さらに採光を最適化し、園区の暖房・換気・空調と照明エネルギー消費を削減できる」と話す。
さらに、省エネ・カーボン削減は、「外装の断熱」だけでは不十分で、園区の地上と地下には、「恒温維持」の「血液循環」システムもある。
李氏は「園区の地下には、深さ130メートルを超える地中熱ヒートポンプ管井1136本が設置され、U字管と地中の土壌との冷熱交換を行う。また地中熱ヒートポンプユニットと建物内部の空調水との間で熱交換をする」と説明する。
地中熱ヒートポンプシステムは、冬には地下から熱を吸い上げて建物を暖房し、夏には建物の熱を地下に放出し、建物内の温度を摂氏21度から26度に制御し、従来の空調システムに比べてエネルギー消費量の大幅な削減が可能だという。試算によれば、地中熱ヒートポンプシステムを通じて1キロワットアワーの電力を投入すると、5キロワットアワー以上の電力に相当する熱量を得ることができる。
園区の屋上には整然と並んだ架台が組み立てられている。「国家電網デジタルテクノロジー」のスマートエネルギー専門家・徐慧明(Xu Huiming)氏によれば、これは太陽光パネルの架台で、園区の全ての屋根の半分を覆い、太陽光発電で電力需要を満たすとしている。
園区の太陽光発電システムは、建物の向きや屋根の勾配などを十分に考慮し、太陽光パネルが最大限に日光照射を受けられるように設計されている。気象条件が良く、園区の電力負荷が高い場合は、屋上の太陽光発電は全て自家消費される。統計によると、園区全体の屋上太陽光発電の年間発電量は273万キロワットアワーに達し、園区の電力需要の4分の1を満たすことができる。
「地上」と「地下」の省エネ・カーボン削減に加え、このイノベーションセンターは、クラウド上で「園区スマート運営管理統合プラットフォーム」を構築し、園区のカーボン監視測定、エネルギーのスマート管理と制御および園区全体のインテリジェント管理を実現している。
園区のソフトウェアプラットフォームの責任者・王双虎(Wang Shuanghu)氏が手元のノートパソコンを開き、プラットフォームシステムにアクセスした。画面には園区のエネルギー、設備、運用保守、安全など様々な数字とグラフがデジタルでパノラマ表示されていた。
このスマートプラットフォームは、園区内の14万6000におよぶ大小の設備を管理・制御しており、その範囲はエアコンや蛇口から部屋ごとの電球の数やワット数まで含まれている。プラットフォームは関連設備の使用状況と電力消費量をリアルタイムで監視でき、それに応じて各棟、各階、各部屋の設備のエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を計算する。ビッグデータモデルのサポートで、空間の温度調整をスマートに計算し、柔軟な負荷調整とゼロカーボン管理を実現している。
王氏は説明しながら、スマート照明システムを使って照明の明るさを調節する方法を実演した。画面のスライダーを軽くスライドさせると、遠くの街灯の明るさがすぐに変化した。スマート街灯は手動で操作できるだけでなく、時間帯やエリアごとの人通りや光の強さに応じて、自動的に明るさを調整することができるという。
園区中央の会議展示センターは直流ゼロカーボン建築であるだけでなく、将来的には「電力・炭素連携取引サービスプラットフォーム」もここに設置され、電力の直接ユーザー、排出量規制対象または自主的に排出削減を行う企業と、電力取引市場・炭素取引市場を結びつけることになる。
園区は、様々な省エネ・カーボン削減措置で、すでにカーボン削減率は60%以上に達しているが、やはりまだ電力網からの供給を必要としている。
徐氏は「従来の園区が使用する電力量には、間接的な二酸化炭素排出が存在する。しかし、我々はこのプラットフォームを利用して、グリーン電力を正確に購入し、二酸化炭素排出量を相殺することができる」と話す。
試算によると、園区全体では、園区クリーンエネルギーステーションおよび建物自体の省エネ構造を通じて、年間3370トンの二酸化炭素削減が実現できる。
また、高効率の省エネ調光器具とスマート照明などのシステムで、年間1386トンの二酸化炭素削減を実現する。
さらに、園区の高効率データセンター、スマート運営管理などにより、年間541トンの二酸化炭素削減を実現し、屋上太陽光発電によって年間1367トンの二酸化炭素削減を実現する。
残りの電力使用に起因する4104トンの間接的二酸化炭素排出は、グリーン電力取引・炭素取引を利用して相殺し、最終的にゼロカーボン排出を達成する計画だ。(c)People’s Daily /AFPBB News