【12月28日  People’s Daily】「高級車」をどのように定義するか? 価格が高いことか、ブランド力がより強いことか、それとも機能が優れていることか?

現在中国では、EV化やインテリジェント化がもたらす新しい体験に対して支払いをいとわない消費者が増えており、自動車のスマート機能や快適性、娯楽性を重視する傾向が強まっている。技術の進化とアップグレードに伴い、中国の自動車ブランドはバリューチェーンの高付加価値段階へと継続的に進み、いわゆる「高級車」領域への進出を開始した。

  
買い替えを検討している多くの消費者は、国産車に「エアサスペンション」が広く搭載されていることに気づいている。これは従来、高級輸入車にしか見られなかった装備だ。
山東省(Shandong)の車所有者・張(Zhang)氏は「車を買い替えた時、まずは幾つかのガソリン車モデルを検討した。ところが偶然、嵐図汽車(Voyah)のFREE 318を試乗したら、EV車の滑らかさと加速性能にすぐに魅了された。特にこの車は100mm可変式エアサスペンションを搭載しており、4つのモードに切り替えられる。車高を113mmまで下げて老人や子供の乗降を容易にすることも、213ミリまで上げて坂道やオフロード走行にも対応できる優れものだ」と話す。

エアサスペンションだけでなく、ゼロ重力シート、マルチスクリーンインタラクション、自動駐車など、かつては高級車特有のものだった機能や装備が、今や国産ブランドの自動車にも広く採用されている。

こうしたハイエンド装備の普及により、30万元(約659万1000円)以下のモデルでも従来の高級車と同等の体験が可能となった。

「以前は価格が高級車の唯一の判断基準だと思っていたが、今では『高級』の定義が一層豊かになった。もし一台の車が、スマートな運転体験、快適な乗り心地、従来の高級車よりも豊富なエンターテインメント機能を備えているとしたら、たとえ価格が30万元以下でも、その車を非常に高級だと感じるだろう」、北京市の車所有者・劉(Liu)氏は率直な気持ちをこう語っている。

若い世代はさらに「技術的な中身」を重視する。95後(1995年以降生まれ)の車所有者・林(Lin)さんは、最近小鵬汽車(XPeng)G6を購入したばかりだ。「この車はテクノロジー感が満載で、特に全シーン音声インタラクション機能に魅力を感じた。従来の高級車の多くは、アイフォンのCarPlayを使うのにも有線接続が必要な場合さえあるから」と話す。

高級車の新たな定義の背景には、中国自動車メーカーの技術革新がある。再びエアサスペンションを例にとると、従来は海外からの供給価格が高かったのだが、国内の完成車メーカーが国内の部品メーカーと連携して技術開発に取り組み、エアスプリングや電子制御システムなどの核心技術を独自に開発し国産化を実現することで、エアサスペンション関連の部品の価格の大幅引き下げに成功した。現在、エアサスペンションを標準装備する車種の最低価格は、以前の50万元(約1098万5000円)から20万元(約439万4000円)前後まで大幅に低下している。

さらに、より多くの国産新エネルギー車がインテリジェント化に注力し、新しい高級装備を提供している。価格やブランドの歴史的蓄積はもはや高級車を定義する基準ではなくなり、高級車と大衆車を区別する論理は、価格差から機能差、体験差へと移行している。

30万元以下のモデルの機能がより高級化する一方で、30万元以上の市場においても、中国ブランドが影響力を拡大している。

EV車ブランド「上海蔚来汽車(NIO)」は洗練された外観デザイン、気配りの効いたオーナーサービス、独自のバッテリー交換モデルにより、多くの熱心なファンを惹きつけている。

スマートEV車ブランド「理想汽車(Li Auto)」の「移動する家」というコンセプトはすでに広く認知され、ファミリー体験を重視するハイエンドユーザーの心を的確に捉えている。

同じくスマートEV車ブランド「問界(Aito)」の「テクノロジー・ラグジュアリー」というキャッチフレーズは鮮明で、スマートコックピットと先進運転支援システム(ADAS)体験がその中核的競争力となり、M9は発売以来、全ラインナップの累計納車台数が20万台を突破した。

比亜迪汽車(BYD)傘下の新エネ車ブランド「仰望(YANGWANG)」は「極限性能」を強調し、仰望U8のその場旋回や水上浮揚による脱出などの「ブラックテクノロジー」は、価格が100万元(約2197万円)を超えてもなお人気を博しており、23年9月の発売以来、国内の「100万元レベル高級車市場」で販売台数の上位を安定して維持している。

業界関係者は、中国ブランドは「精密なポジショニング+シーンイノベーション」を通じて、従来型の高級車に優位性があった領域に突破口を見出したと分析している。

サービスで高級さを定義するブランドもあれば、ファミリー向け体験機能でニーズを再構築するブランド、あるいはテクノロジー体験で差別化を図るブランドもあり、すれ違い(多方向差別化)型の競争構造が形成されている。

中国自動車工業協会が発表したデータによると、25年上半期(1~6月)、中国ブランドの乗用車は合計927万台を販売し、前年同期比25%増加した。乗用車総販売台数の68.5%を占め、販売台数シェアは前年同期比6.6ポイント上昇した。

中国ブランドの新エネルギー車はハイエンド市場で明らかな優位性を示しており、25年上半期の自動車保険登録データによると、30万元以上の新エネルギー乗用車市場において、中国ブランドの割合はすでに8割を超えている。

また、嵐図汽車などの中国ブランドは外資合弁ブランドに対してEVパワートレインやハイブリッド駆動などのコア技術を共有し始めている。メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)、BMW、アウディ(Audi)など従来の国際的高級ブランド車メーカーも「華為技術(ファーウェイ、Huawei)」や「北京初速度科技(Momenta)」など中国ハイテク企業との間で、インテリジェント運転技術分野での協力・提携を模索し始めている。

専門家は、中国自動車の高級化路線が消費者の認識を変えただけでなく、世界の自動車産業のインテリジェント化、EV化変革を推し進めていると指摘する。(c)People’s Daily /AFPBB News