人型ロボット、日常生活への利用の道はまだ遠いのか・中国
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【12月27日 People’s Daily】「2025世界ロボット大会」が8月8日に北京市で開催され、国内外200社余りのロボット企業が参加し、100種類以上の新製品が発表された。8月14日には、世界初の「人型ロボット運動会」が挙行され、16の国と地域から280チームが参加した。
33.71秒、394.40秒、これは人型ロボット運動会において「宇樹科技(Unitree Robotics)」のG1ロボットとH1ロボットがそれぞれ100メートル障害物競走と1500メートル競走で優勝を収めた時の記録だ。人間のプロ選手に比べれば、ロボットの記録にはまだ差があるものの、同社の創業者・王興興(Wang Xingxing)氏は「これはロボットにまだ大きな可能性が残されていることを意味する。そう遠くないうちに、ロボットは必ず人間より速く走れるようになる」と話している。
現在、人型ロボットは運動場で跳躍するだけでなく、工場の現場でも精密な作業を行っている。同時に、一つの現実的な問題が広く注目を集めている。人型ロボットは日常生活にどれほど近づいているのか?
「北京通用人工知能研究院・具身型AIロボット(エンボディド・インテリジェンス)センター」の賈宝雄(Jia Baoxiong)研究員は、走ったり踊ったりするといった特定のタスクにおいては、人型ロボットの極限状態での運動能力はすでに高い水準に達していると考えている。
しかし、人型ロボットが本当に日常生活に入り込むためには、複数の面でのブレークスルーが必要だという。賈氏は「汎用的な場面での自律性、運動と操作の正確性と安定性、そして人間との相互接触時の安全性など全ての面でさらなる向上が求められる」と強調する。
中国電子学会の徐暁蘭(Xu Xiaolan)理事長はロボット大会で「世界的に見て、ハードウェアの物理的性能は継続的にブレークスルーを遂げ、人工知能は意思決定能力において世代を超えた飛躍を実現し、データセットや仮想シミュレーションなどの支援技術も着実に進歩している」と述べた。現在、人型ロボット技術は、実験室での技術的ブレークスルーから産業化応用への飛躍を果たす重要な段階にあるという。
なぜ、一部のロボットは走っているうちにコースから外れてしまうのか? なぜボクシングの試合で、ロボットが相手を見つけられなかったり、正確に狙えなかったりするのか?
このような状況が時折起こる原因の中には、多くのロボット選手が人間による遠隔操作を受けていることがある。人間の操作の熟練度や、周囲の電磁環境がリモコン信号に与える干渉などの要因が、ロボットのパフォーマンスに影響を与えるためだ。
スマート化を促進するため「2025世界人型ロボット運動会」では、ルール制定に工夫が凝らされた。多くの人は知らないかもしれないが、100メートル競走「飛人レース」で優勝した「天工Ultraロボット」は、実際には最初にゴールを通過したわけではない。しかし、全選手の中で唯一、完全な自律ナビゲーションシステムを採用し、全行程を遠隔操作なしで走破したため、大会ルールに基づき、走行時間に0.8の係数が乗じられ、結果として最高順位を得たのである。
「北京人型ロボットイノベーションセンター」の熊友軍(Xiong Youjun)総経理は「人型ロボットの知能化は漸進的なブレークスルーの過程だ。知能レベルを絶えず向上させてこそ、より良く私たちを助けるサービスが提供できるようになる」と話す。
「現行のハードウェアは、継続的な最適化調整が必要ではあるものの、すでに基本的な実用性はすでに備わっている。現在、真のボトルネックは、具身知能(身体を備え自律的に動作できるAI)が完全に成熟していない点にあり、これが人型ロボットの大規模応用を制約する鍵となっている」、「宇樹科技」の王興興氏はこのように見ている。人型ロボットが本当に一般人の日常生活に入り込むには、まだある程度の時間が必要だという。
賈宝雄研究員は「現在、人型ロボットはすでにパフォーマンスやエンターテインメントなどの場面では、我々に情緒的な価値を提供することはかなりうまくできる。車輪方式などとの組み合わせで、倉庫、スーパーマーケット、薬局などの場所での仕分けや運搬作業を担い、人手の負担を軽減することも可能だ」と説明する。しかし、人型ロボットが本当に大衆の生活に入り込むためには、技術面でのブレークスルー以外にも、倫理やコストなどの問題も存在しているという。
人型ロボットが一般家庭に普及するには、価格が大きな障壁となる。熊友軍総経理は具体的に例を挙げ「現在『具身知能大規模モデル』の訓練には、大量のロボット動作軌跡データが必要だ。『高品質なデータ』は不足しているだけでなく、コストも非常に高く、これが『具身知能大規模モデル』の発展の主な制約要因となっており、人型ロボットの訓練コストを押し上げている」と説明する。
技術課題を克服する忍耐力だけでなく、倫理に対する畏敬の念を保つことも必要だ。
「人型ロボットが家庭に入った後、我々のプライバシーをどのように保証するのか?」「我々はロボットとどう共存すべきか?」、これらの問題は「2025世界ロボット大会」で熱く議論された焦点である。
国際ロボット協会(International Federation of Robotics)は、2021年から30年にかけて、世界の人型ロボット市場規模の年間複合成長率が71%に達すると予測している。また中国電子学会は、2030年までに中国の人型ロボット市場規模が約8700億元(約19兆878億円)に達すると予測している。
人型ロボットは今も加速的な進化を続けており、彼らが我々の家庭に走り込んで、日常生活に溶け込む日も近いと期待されている。(c)People’s Daily /AFPBB News