【12月11日 AFP】人類が約40万年前に意図的に火をおこしていた証拠が英国で発見されたと、研究チームが10日付の英科学誌「ネイチャー」で論文を発表した。人類の祖先がこの重要な技術を習得した時期が、大幅に前倒しされた。

自ら火をおこすことを学んだのは人類史の大きな転換点の一つだった。火は祖先に温かさ、社交の場、食べ物を調理する手段を提供し、われわれの異例に大きな脳の進化を助けたとされる。

アフリカでは100万年以上前に人類が火を使用していた痕跡があるが、これらの炎は雷などの自然現象によって最初に点火されたと考えられている。

道具が長い年月の間に失われた可能性があるため、祖先が自ら火をおこしていた確たる証拠を見つけることは非常に困難だ。

そのため、大英博物館の研究者らが率いるチームが、英イングランド東部サフォーク州バーナム村近郊で40万年前の人類の炉跡を発見したことは大きな成果となった。これまで世界最古の火おこしの証拠はフランスで見つかっており、その年代は5万年前とされていた。

研究者たちは、この炉跡が人類の系統の中で最も過小評価されてきた存在である、ネアンデルタール人のものだった可能性があると考えている。

バーナムの遺跡は1800年代後半に初めて特定され、2021年には堆積物が繰り返し加熱された痕跡が見つかり、炉跡の可能性が示された。

しかし、加熱された粘土が野火によるものではないと証明するには4年にわたる精密な研究が必要となった。

大英博物館の研究員で、論文の筆頭著者であるニック・アシュトン氏は「大きな転機は黄鉄鉱の発見だった」と述べた。

黄鉄鉱は火打ち石のように火花を起こすために使われる鉱物で、この地域では非常に珍しいため、古代人が持ち込んだと考えられる。また、黄鉄鉱を打ち付けた可能性のある火で割れた石斧も見つかった。

バーナムで火をおこした人類の正体は不明だが、近隣で化石が見つかったネアンデルタール人である可能性が高いと研究者は考えている。

ネアンデルタール人が火をおこせたかどうかについては長い間議論が続いており、フランスの遺跡は彼らの能力に疑問を投げかけるため引き合いにだされていた。

今回の研究には携わっていない米メリーランド州セントメリーズ大学の考古学者サラ・フルビク氏は、この発見は「彼らがその技術を持っていなかったという議論を否定する」ものだと、AFPに話している。

また、論文の共同著者である大英博物館のクリス・ストリンガー氏は、ネアンデルタール人が長い間原始的すぎると見なされてきたことに対する最近の「再評価」にもつながるとし、新たな証拠は「ネアンデルタール人のより複雑な行動モデルの全体像に合致し、私たちとの類似性を高める」と付け加えた。(c)AFP