小さな県が生んだ百億元産業・寧津の成長力
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【12月21日 東方新報】中国・山東省(Shangdong)徳州市(Dezhou)の寧津県は、かつて椀の金継ぎや鍋の修理といった伝統的な五金(工具・金物)技術で知られていた。その手仕事を基盤に「金属加工+木工」を軸とする産業体系を築き、さらに近年はデジタル化とスマート化を導入したことで、現在は中国最大の商用フィットネス器材の生産基地へと進化した。器材の全パーツを県内だけで30分以内に揃えられる産業密度は全国でも例を見ない。
寧津県経済開発区には近代的な工場が立ち並び、工場内では溶接ロボットが精密に動き、スマート生産ラインが整然と稼働する。ここからフィットネス器材、エレベーター、車両部品などが世界各地に出荷されている。国内の商用フィットネス器材の7割、世界でも3割が寧津産という圧倒的なシェアを誇り、関連企業は約3000社、年間産値は約140億元(約3069億8640万円)に達する。
この飛躍の背景には、五金技術を土台にした産業の「智改数転」(スマート化・デジタル転換)がある。1970〜80年代にかけて寧津県は織機や農機具の製造を始め、現在は五金加工と家具製造を核に産業体系を確立。近年は騰訊雲(テンセントクラウド、Tencent Cloud)などの工業インターネットを導入し、設備更新、ライン自動化、ロボット化、産業チェーンのクラウド化を進め、257社がデジタル化を達成した。
ある企業では、ロボットが30秒でベテラン職人の15分分の作業をこなすようになり、生産効率が飛躍的に向上した。別の企業では総投資5000万元(約10億9638万円)のスマート工場を建設し、生産能力が2倍以上に拡大した。デジタル化によって製品開発から製造までが高度化し、商品ラインナップの多様化と市場ニーズへの迅速対応が可能になった。
寧津県の強みは、県内だけで産業チェーンが完結する点にもある。フィットネス器材だけで約3000社が集積し、設計から加工、組立、梱包まで県外に出る必要がない。エレベーター産業でも300社以上が分業し、研究開発から保守までの一貫体系を築き、年間60億元を超える産値を生み出す北方最大のエレベーター生産地となっている。
県は原材料市場・部品市場の整備や、加工・物流・設計・展示・検査・金融を担う6つの機能センターを構築し、産業の横の連携と縦の統合を強化した。また「寧津フィットネス器材」「寧津エレベーター」などの地域ブランド育成を進め、産地としての認知度と競争力を高めている。
寧津企業は海外進出にも積極的だ。フィットネス器材は170以上の国・地域へ輸出され、エレベーターはロシアや東南アジアで現地工場を建設し、車両部品や農機具も欧米や中央アジアへ輸出されている。企業の輸出モデルも変化しており、ブラジルに海外倉庫を設けて納期を45日から7日に短縮する例や、ティックトック(TikTok)と阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)のB2Bサービス「Alibaba.com」を活用した「SNS集客→現地体験→越境配送」という新しい販売モデルも広がっている。
寧津県は展示会戦略にも注力し、今年だけで国内外26の主要展示会に参加。自主開催の器材展では累計73億元以上の商談がまとまり、企業の海外進出をさらに後押ししている。金物修理の町から世界市場を相手にする製造拠点へ。小さな県が「大産業」を築いた寧津の物語は今も続いている。(c)東方新報/AFPBB News