【12月6日 AFP】ドナルド・トランプ大統領は5日、「国家安全保障戦略(NSS)」を公表した。超大国である米国の焦点を世界から地域へと転換するもので、欧州については大量移民による人種入れ替えで「文明消滅」の危機に直面していると批判し、大量移民の阻止を優先課題に掲げた。

NSSは、トランプ氏の常識を覆す世界観を具現化することを意図したもので、台頭する中国に対抗するためアジアに重点を置くという長年の米国の立場から大きく方向転換し、中南米を最重要視している。

トランプ大統領は待望のNSSの序文で、「われわれはあらゆる行動においてアメリカファースト(米国第一主義)を掲げている」と述べた。

この戦略によって数十年にわたって「唯一の超大国」であろうとしてきた試みを断ち切り、「米国は自ら世界を支配するという破滅を招く概念を拒否する」と述べている。

また、米国は他の大国、特に中国による支配を阻止するとしたが、「これは世界の大国や中堅国の影響力を削ぐために血と財産を無駄にすることを意味するものではない」と付け加えた。

NSSは、移民問題をはじめとする「西半球における喫緊の脅威に対処するため、世界における軍事プレゼンスを再編する」ことを要求。

「大量移民の時代は終わらせなければならない」と述べている。

NSSは、トランプ政権下の米国が欧州においても同様の目標を積極的に追求していくことを明確にしている。これは欧州の極右政党の方針に合致するものだ。

緊密な同盟国への対応としては異例の表現で、NSSはトランプ政権が「欧州諸国において、欧州の現在の進路に対する抵抗を育む」と述べている。

これに対しドイツは即座に反論し、「外部からの助言」は必要ないと表明した。

米民主党のグレゴリー・ミークス下院議員はNSSについて、「数十年にわたる価値観に基づく米国のリーダーシップを放棄し、臆病で破廉恥(はれんち)な世界観を支持している」と述べた。

NSSは欧州について、主に中国などの新興国の台頭によって世界経済におけるシェアを低下させているが、「この衰退も文明の消滅という現実的でより厳しい見通しによって影が薄れている」と指摘。

「現在の傾向(大量移民による人種入れ替え)が続けば、20年以内に欧州はそれと分からないほど変わってしまうだろう」との認識を示した。

中国に関しては、「自由で開かれた」アジア太平洋地域の実現を繰り返し訴えながらも、「経済的な競争相手」と位置付けている。

中国が自国領土の一部だと主張する台湾については、トランプ氏が中国に譲歩するのではないかとの臆測が飛び交っていたが、NSSは数十年にわたる現状維持を支持することを明確にした。

同盟国である日本と韓国に対しては防衛費を増額し、台湾防衛にもっと貢献するよう求めている。(c)AFP