上海博物館の「スーパー不眠夜」・中国
このニュースをシェア
【12月3日 People’s Daily】8月16日午前0時の上海市、街は静かになりつつあったが、上海博物館(Shanghai Museum)人民広場館の南門広場では入館待ちの列がますます長くなっていた。地方から駆けつけた人たちはスーツケースを引きずりながら、列に続いて館内へと移動していく。
昨年7月19日に開幕した「ピラミッドの頂点:古代エジプト文明展」は1年以上が経過してもその人気は衰えを知らない。展覧会閉幕前の最後の週、これまで追加されていた夜間開催に加え、7日間168時間連続開館が実施された。毎晩午後10時から翌朝午前6時までの「深夜枠」として3000枚発売されたチケットは、ほぼ即完売となった。
今回の13か月に及ぶ会期と277万人の来場者数は、世界の博物館における単独有料特別展の来場者数の最高記録を更新した。上海博物館の褚暁波(Chu Xiaobo)館長は「人気が出るとは思っていたが、これほど長期に展示しても、観客の熱意をまだ満たしきれていないとは思わなかった」と語る。多数の来場者に対してどのように良好な鑑賞体験を維持するかを考慮して、博物館は夏休み期間などに閉館時間を午後9時まで延長し、さらに220回もの夜間開催および特別開催を追加した。
来場者の李博(Li Bo)さんは「この展覧会を見に来るのは7回目で、明日も最後の『8回目』を計画している。展示品が非常に豊富だし、何度でも見る価値がある。毎回新しい発見がある」と興奮気味に話した。博物館の事業高品質発展専門指揮部の李峰(Li Feng)執行指揮は「当初から一貫して我々がこだわってきたのは、有料の特別展を開催するなら、世界的な影響力を持つ『スーパー展覧会』にしようということだ。影響力とは何かというと、それは展示品のグレードと展示のレベルだ」と語った。
ナイル川の畔から黄浦江(Huangpu River)の畔へ、91個の大型コンテナに収められた492組788点の古代エジプトの文物と資料を載せたチャーター機が到着した時、この一大「現象級」の文化展覧会の幕が開いた。この展覧会は上海博物館とエジプト最高文物委員会が共同開催したもので、展示点数は同種の展覧会で最多を記録した。エジプト国立博物館、ルクソール博物館、スエズ博物館などエジプトの主要7博物館からの精選された出品物に加え、中国エジプト共同考古学チームの最新の考古学的発見も展示されている。展示品のうち95%以上がアジアに来るのは初めてだという。サッカラ地区で最近発掘された一部の遺物は、発掘現場から直接運ばれ、初めて一般公開されたものだ。
「ツタンカーメンの時代」展示室では、広がる青と黄色の背景が海と砂漠の交わる様を彷彿とさせ、独特の視覚的景観を形成していた。多くの来場者がアクエンアテン巨像の脇に列をなしている。ここはSNSで人気スポットとなっており、多くの人がエジプトのファラオ像と「古今の対話」を思わせるような写真を残していた。
「サッカラの秘密」展示室では、文化博物愛好家の王暁翔(Wang Xiaoxiang)さんが猫の彫像をじっくりと観察し、「保存状態が非常に良く、動物本来の可愛らしさとやわらかな表情が感じられ、実に不思議だ」と話した。昨年夏、上海博物館では、古代エジプト文明展に合わせ「博物館奇『喵』夜」(博物館ふしぎニャン夜)イベントが10回にわたり開催され、来場者が猫を連れて入館できたり、猫にちなんだ様々な演出や催しが提供されたりした。
今回の168時間連続開館でもカーニバルイベントが2回開催され、エジプトの太鼓、エジプト舞踊、曲芸、ミュージカルなどが館内で披露された。このような連携企画は、展覧会の「波及効果」(スピルオーバー効果)を発揮するための重要な方法だという。
■文化クリエイティブ製品との連携
上海博物館は、約100点の主要展示品に見られるモチーフを取り入れたミュージアムグッズ(創作商品)を開発した。古代エジプト文明展の開催期間中、合計1200種類以上のミュージアムグッズを製作し、販売総数は300万個を超えた。文化創作関連イベントは約500回開催され、来場者は延べ30万人に近くに達した。
■公共サービスとの連携
展覧会期間中、一般市民向けに10回以上におよぶテーマ講演が企画された。エジプト最高文物委員会事務局のモハメド・イスマイル・ハレド(Mohamed Ismail Khaled)局長による「エジプトの最新考古学的発見とその新たな視点」や展覧会のキュレーターで北京大学(Peking University)教授の顔海英(Yan Haiying)氏による古代エジプトの社会生活の解説なども開催された。また博物館は、オンラインとオフラインで各階層、各年齢層に向けての活動を展開し、そのうち、一般市民向け講演会、アートワークショップ、展覧会のコミュニティ巡回などのオフライン活動は6000回以上開催され、参加者数は延べ約140万人に達した。
■さまざまな業界との連携
展覧会に合わせ、博物館は「ワンストップ」文化観光体験の新シーンシリーズ活動を打ち出した。古代エジプトテーマのクルーズ船「上海博物館号」や「上海博物館観覧バス」、カラフルなペイントが施された大型ジェット機「上海博物館号」が上海の主要商業地区や企業とタイアップして、さまざまな「文化・観光・商業・スポーツ・展覧会」の連動イベントが繰り広げられた。今回の展覧会はまるで「磁場」のように周辺の商業施設、ホテル、観光や公演イベントなどの消費を牽引した。
168時間連続開館を保障するため、博物館は一連の対策を講じ、警備、清掃、医療スタッフを組織し交替制で常駐させた。博物館の開館管理部の周彦菁(Zhou Yanjng)さんは「最も印象に残っているのは、80歳代の老人が夜遅くわざわざ展覧会を見に来たことだ。来場者の熱意を感じると、仕事がどんなに大変でも本当に報われる」と話している。
約400日間に及んだ古代エジプト文明展は、8月17日夜に幕を閉じた。しかし、博物館と世界文明の交流と相互理解は止まることはない。上海博物館は開放と包容の精神を堅持し「世界と対話する」文物芸術展の旅はこれからも続く。我々はさらに多くの「現象級」の大型展覧会の到来を期待している。(c)People’s Daily /AFPBB News