「がん治療」陽子線・重粒子線に注目集まる…韓国で導入進むも費用・保険に課題
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【11月27日 KOREA WAVE】「夢のがん治療」と呼ばれる最先端放射線治療法である陽子線治療および重粒子線治療に対し、韓国国内の大手病院をはじめ、地方の医療機関でも導入の動きが広がっている。しかし、各治療法には特性や適応症の違いがあるうえ、重粒子線は現在健康保険の適用外となっており、患者にとっては慎重な選択が求められる。
放射線治療には、X線などの「光子線」と、陽子・炭素イオンを用いた「粒子線」がある。陽子線や重粒子線は「ブラッグ・ピーク(Bragg Peak)」という現象により、がん細胞にピンポイントで高エネルギーを照射できる。これにより、正常な周囲組織への損傷を最小限に抑えつつ、高精度な治療が可能となる。
陽子線には水素の原子核(陽子)、重粒子線には炭素の原子核(炭素イオン)が用いられる。炭素イオンは陽子よりも12倍重いため、加速・制御して照射精度を高めるには大規模な設備と高い技術力が必要とされる。整備には数千億ウォン(数百億円)の費用がかかる。
重粒子線は膵臓がん、肉腫、頭頸部がんなど難治性の固形がんに適応され、陽子線は小児がんや脳腫瘍など、周囲組織への影響を極力避けたいケースに適しているという。
現在、陽子線治療を提供しているのは、国立がんセンターとサムソンソウル病院の2カ所。また、ソウル聖母病院、全北・益山の圓光大学病院、大邱の啓明大学東山病院、昌原のハンマウム病院なども導入準備中で、高麗大学医療院や蔚山市も事業参入を表明している。
一方、重粒子線治療は2023年、延世がん病院が韓国で初めて導入。今後は釜山・機張の重粒子線治療センター(ソウル大学病院運営)やソウル峨山病院でも設備を稼働させる予定。世宗市では国立重粒子線センターの誘致を目指しており、中小規模の始華病院も、外国系投資会社と連携し、医療観光複合施設の開発を計画している。
陽子線治療は健康保険が適用される疾患も多く、小児がん、肺がん、肝臓がん、脳腫瘍、膵臓がん、食道がんなどが対象。治療費総額は約2000万ウォンだが、自己負担は100万〜200万ウォン(約11万〜22万円)程度に抑えられている(10〜20回の治療を想定)。
これに対して、重粒子線治療は健康保険の適用がなく、1回あたり数百万ウォン〜数千万ウォン(数十万円〜数百万円)の費用がかかる。これに対応するため、保険業界では重粒子線治療をカバーするがん保険商品の開発が進んでいる。
(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News