【11月26日 AFP】専制主義陣営に対抗する民主主義陣営の最前線に位置する台湾の頼清徳総統は26日、中国の台湾侵攻を抑止するため、防衛費などに今後8年間で400億ドル(約6兆2500億円)を追加投入することを提案すると発表した。

中国の軍事的圧力が強まる中、台湾は過去10年にわたり防衛費を増額してきたが、ドナルド・トランプ米政権は台湾に対し、自衛のためにさらなる措置を講じるよう迫っている。

頼氏は26日、台湾軍が2027年までに中国に対する「高度な」統合戦闘即応態勢を整えることを目指していると述べた。2027年は、米当局者が以前、中国が台湾攻撃に踏み切る可能性のあるタイミングとして挙げていた年だ。

頼氏は米紙ワシントン・ポストへの寄稿で400億ドルの防衛費投入計画を発表した後、台北での記者会見で、「最終的な目標は、民主的な台湾を恒久的に守ることができる防衛力を確立することだ」と述べた。

中華人民共和国(中国共産党)は台湾を統治したことが一度もないにもかかわらず、台湾は自国領土の一部だと主張し、武力を行使してでも併合すると脅している。

高市早苗首相は7日の衆院予算委員会で、台湾有事をめぐって日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に該当する具体例を問われ、「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」と答弁したことを受けて、日中は数週間にわたって外交的に対立している。

米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)のレイモンド・グリーン台北事務所長(大使に相当)は、台湾政府の追加防衛支出計画を「歓迎する」と述べ、台湾の野党に対し、防衛力強化で与党・民主進歩党(民進党)と「共通の立場を見出す」よう促した。

頼氏は追加防衛支出について、米国からの新たな兵器購入や、台湾の非対称戦遂行能力の強化に充てられると説明。だが、この支出は米国と進めている関税交渉とは関係なく、主な目的は「台湾の自衛の決意を示す」ことだと述べた。

頼氏はワシントン・ポストで、「われわれは、中国政府の武力行使に関する意思決定にさらなるコストと不確実性をもたらすことで、抑止力を強化することを目指している」と主張。

「私のメッセージは明確だ。台湾の平和と安定への献身は揺るぎないものだ」「台湾の未来を守ることにおいて、わが国よりも強い決意を持つ国はない」と述べた。

だが、立法院(議会)で予算案の承認を得るのは困難かもしれない。立法院では、中国との関係緊密化を訴える野党・中国国民党(国民党)が、台湾民衆党の支援を受けて財政を掌握しているからだ。

最近選出された国民党の鄭麗文主席(党首)は、以前から頼氏の国防費計画に反対し、「台湾にはそれほど多くの資金がない」と述べている。(c)AFP