【11月27日 CNS】近年、中国の若者の間でデジタル製品のレトロブームが広がっている。有線イヤホン、折りたたみ携帯電話、CCDカメラといった、いったん時代遅れになったデジタル機器が若い世代の間で再び注目を集め、「デジタルデトックス」やノスタルジックな美意識の象徴として受け入れられている。

中国のSNS「小紅書(Red)」のデータによると、2025年11月13日時点で「有線イヤホン」関連の話題閲覧数は2.28億回、「CCDカメラ」関連は14.63億回に達している。若者たちは中古のCCDカメラを披露し合い、購入ルートを共有するなど、オンライン上で活発な交流が生まれている。

CCDはデジタルカメラの撮像素子で、2010年以前は広く使われていたが、その後はCMOSイメージセンサーに置き換えられた。しかし、CCDカメラの技術的な弱点は、若者にとってはむしろ「味」として受け止められ、レトロデジタルブームの中心的アイテムとなっている。例えばCCDの低画素は「ざらっとした粒状感があって雰囲気がある」と好まれ、やや暗めの色調は「最初からレトロフィルターがかかったようだ」と評価されている。中古価格もここ数年で急騰し、かつては数十元(数百円)だったものが、今では数百元から千元(数千円〜数万円)へと大きく値上がりしている。

折りたたみ式携帯電話をはじめとする非スマートフォン(いわゆる「ガラケー」)も、世界の若い世代の間で再び注目されつつある。「イノベーション研究国際誌(International Journal of Innovation Studies)」の調査では、2021年から2024年の間に、18〜24歳を中心にベーシック携帯の販売が148%伸びたという。人気ブランドはノキア(Nokia)、モトローラ(Motorola)、サムスン電子(Samsung Electronics)などで、米国でも若者が再び機能携帯を選ぶ動きが報じられている。現在、ほぼすべての米国通信キャリアが何らかの機能携帯を販売しており、市場全体では小規模ながら明確な上昇トレンドが見られる。

中国でも、スマートフォン普及後はシンプル操作でOSも搭載しない携帯電話が「シニア向け」と見られがちだった。しかし、スマートフォンから絶え間なく流れ込む情報に疲れ、若者が「デジタル疲れ」を感じ始めている。中国の大手SNS「豆瓣(Douban)」では「画面から距離を置く計画」というコミュニティが作られ、既に4万人以上が参加。「デジタル・ミニマリスト」「反テクノロジー依存」といったコミュニティも存在し、いずれも「スマホ依存を減らし、テクノロジーとのより良い距離感を取り戻す」ことを掲げている。若い世代の一部は、余計な機能を排した携帯電話に切り替えることでSNSとの距離を置き、プライバシーを守り、「携帯は道具である」という原点に立ち返ろうとしている。

また、CCDカメラが「レトロ感」を理由に再評価されているように、折りたたみ式携帯をはじめとする旧型携帯を再び手に取る若者の動機も、単なるデジタルデトックスにとどまらず、古い携帯そのものへの懐かしさが大きい。小紅書では「古早手机(昔の携帯)」という話題の閲覧数が1244万回を超え、ユーザーたちは自分のコレクションの折りたたみ式やスライド式の携帯を写真付きで紹介し、かわいいストラップや独自の待受画面と組み合わせて楽しんでいる。古い携帯を「美しいガラクタ」と呼び、愛着を込めて紹介するユーザーも多い。

こうした中国の「デジタルレトロ」ブームをビジネスチャンスと見て、企業も文化消費イベントに取り込もうとしている。各地のカフェやレストランでは「ノーフォンゾーン」を設ける店舗が現れ、ポップアップギャラリーではCCD写真をテーマにした催しが開かれるなど、新しい文化消費スタイルが生まれている。業界関係者は、この現象は急速なデジタル化の中で、若者がよりシンプルで温かみがあり、個性を表現できる文化体験を求め始めている表れだと指摘し、今後の広がりに注目すべきだとしている。(c)CNS/JCM/AFPBB News