【11月12日 東方新報】世界的な科学技術革命の新たな波が加速するなか、中国では数多くの新興テック企業が勢いよく台頭している。その中でも、人工知能(AI)技術に強みを持つ杭州を拠点とする6つの先端テクノロジー企業「杭州六小龍」は、業界内外から熱い注目を集めている。

浙江省(Zhejiang)烏鎮市(Wuzhen)で開催された2025年世界インターネット大会烏鎮サミットでは、「六小龍」に属する企業代表が同じ舞台に立ち、「六小龍烏鎮対話」と題したセッションでAI業界の最前線をテーマに意見を交わし、未来のテクノロジーの姿を語り合った。

宇樹科技(Unitree Robotics)の創業者・王興興(Wang Xingxing)氏は「ここ1年、具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)の分野はまるで夢のような発展を遂げています。かつてSFの中にしか存在しなかった光景が、今では現実になっている。この流れは今後さらに加速するでしょう」と語り、AI技術がロボット産業の発展を強力に後押しすると見通した。

具身型AIは2025年に初めて政府活動報告に盛り込まれた注目分野であり、人型ロボットや知能ロボットなどがその代表例とされる。専門家らは、この技術が産業用から日常生活、医療、災害救助まで応用範囲を広げ、人間の「頼もしい助手」として期待されていると見ている。

一方で、発展の過程には課題も多い。特に高品質データの不足やモデル精度の改善など、データ活用とアルゴリズムの両面で課題が残る。それでも王氏は「核融合や火星探査などと比べれば、具身型AIの実現は比較的早いかもしれない。今後2年でロボット業界にはさらに多くの驚きが待っている」と楽観的だ。

雲深処科技(DeepRobotics)の創業者・朱秋国(Zhu Qiuguo)氏は、現実的な課題をテクノロジーで解決することに注力していると説明した。同社の「ロボット犬」は主に電力設備の点検や消防活動などの産業用途で活用されており、実用化に向けた改良を続けているという。また同社は今年、人型ロボットも発表した。「危険で過酷な環境で人間の代わりに働くこと」を目標に、より多様なシーンでの活躍を目指している。

群核科技(Manycore)の共同創業者で会長の黄暁煌(Huang Xiaohuang)氏は「未来の職場には数多くのロボットが働くようになるだろう。その時には、空間知能による統一的な管理・制御が欠かせない」と語り、自社が注力する空間知能技術の重要性を強調した。「ロボットが単なる自動化から知能化へと進化するのは自然な流れであり、その転換はそう遠くない」とも述べた。

強脳科技(BrainCo)の創業者・韓璧丞(Han Bicheng)氏は「技術の本質は人間の能力を拡張することにある」と語り、脳と機械をつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」の実用化を進めている。同社が開発した神経制御義肢は、脳の信号で義手を操作し、文字を書く、楽器を弾くといった精密な動作を可能にするほか、自然な歩行動作も再現できるという。かつてSF映画で描かれた「意念で操作する世界」は、いま現実に近づきつつある。

こうした技術革新が急速に進む中で、登壇者たちはリスク意識の重要性も忘れていない。深度求索(DeepSeek)の上級研究員・陳徳里(Chen Deli)氏は「今後3〜5年は、人間とAIが協調する『蜜月期』となり、生産性は飛躍的に高まるだろう。しかし10年後には一部の職業がAIに取って代わられる可能性もある。その時こそ、テクノロジー企業は『守護者』の役割を果たすべきだ」と指摘した。

ゲームサイエンス(Game Science)の創業者でCEO、『黒神話:悟空(Black Myth: Wukong)』の制作責任者である馮驥(Feng Ji)氏も「技術が一部の企業に集中しすぎると、AIの力が独占されるリスクがある。AIを社会全体の力にするのか、それとも少数の特権にしてしまうのかが問われている」と警鐘を鳴らした。AIの進化によって生じる“人間の能力への不安”をどう和らげるかも、今後の大きな課題だと語った。(c)東方新報/AFPBB News