2024年9月18日、ソウルで開かれたコメ価格保障全国農民大会(c)NEWSIS
2024年9月18日、ソウルで開かれたコメ価格保障全国農民大会(c)NEWSIS

【11月10日 KOREA WAVE】韓国政府がコメ価格の不安定さを抑えるため、「人工知能(AI)予測モデル」「消費データ分析」「市場隔離制度(政府による市場介入措置の一つ)の見直し」を組み合わせた新たな需給管理システムの開発に着手した。生産と消費に関するデータを適時に確保できず、需給調整が遅れるという従来の構造を改善し、データに基づいて市場の変動を事前に察知し、先手を打って対応することを目的としている。

農林畜産食品省は最近、コメ価格の急激な変動を防ぎ、需給管理を強化するための新たな管理体制の構築に乗り出した。具体的には、AI予測モデルの導入、POS(販売管理システム端末)データに基づく消費分析、コメ需給制度の改編という三つの仕組みを同時に整備し、コメの需給を事前に予測し調整できるようにするというものだ。

コメの消費が減少し、異常気象によって生産量の変動が大きくなるなかで、政府の市場隔離のタイミングが遅れたことで不安定になったコメの需給構造を改善するための措置だ。

韓国政府は2024年10月、コメ価格の暴落とともに12万8000トンのコメの過剰生産が見込まれたことを受け、これを上回る20万トンを先手を打って市場から隔離した。その後、公的備蓄米の残余予算を活用して6万2000トンを追加購入し、合計26万2000トンを市場から隔離した。

しかし、トビイロウンカなどの病害虫の影響で、実際のコメの過剰生産量が予想より7万トン以上少なかったことから民間在庫が不足し、これにより2025年のコメ価格は高騰を続けている。

実際、韓国農水産食品流通公社(aT)によると、11月6日現在、20㎏のコメの小売価格は6万4988ウォン(約6803円)で、前年に比べて約20%(19.6%)上昇している。産地価格は10月25日現在、20㎏あたり5万7403ウォン(約6012円)で、1年前より25.5%高くなっている。

農林畜産食品省の関係者は「現在、韓国では異常気象により毎年生産量の変動幅が大きくなっており、炊飯用のコメの消費も減っているため、例年通りの方法で需給を管理するのはますます難しくなっているのが実情だ」と述べた。

このような問題を解決するため、農林畜産食品省はAIを活用したコメの需給予測モデルを年内に導入する。これを中核とし、分散していた生産・消費・在庫のデータを一元化する構想だ。

現在、コメの需給対策は穀物管理法に基づき毎年10月15日までに策定する必要があるが、この時に活用できるデータは国家データ庁の「予想生産量」(該当年)と1〜2年前の消費量統計に限られている。このようにタイムラグの大きい資料に基づいて政策を立てるため、精緻な需給管理には限界があった。

これを踏まえ、農林畜産食品省は韓国農村経済研究院(KREI)や農村振興庁、国家データ庁などが生産する情報を集約し、AIベースのモデリングシステムを構築し、そこに気候や病害虫に関する情報を連携させて予測精度を高める構想だ。

AI予測モデルはKREI農業観測センターに設置され、7~8機関の生産・在庫データを統合的に分析し、その結果をモニター画面にグラフやチャートの形でリアルタイムに表示する。政策担当者は、これによりコメ価格の変動や需給の不均衡の兆候を早期に察知し、従来よりも適切な時期に市場隔離の判断を下せるようになるという。

農林畜産食品省の関係者は「コメ需給予測システムは、過去10〜20年間の消費データを学習させて来年の消費量を予測する方式。気候変動や病害虫の発生率、作付面積の変動などを反映させ、コメ栽培・他作物への転換・直接支払金の規模まで合理的に決定できる根拠をつくるのが目標だ」と述べた。

併せて農林畜産食品省は、POSデータを活用して外食など民間の消費動向をリアルタイムで把握し、コメの需要予測の精度を高める。

POSとは、飲食店などの店舗で決済時点のレシートデータを収集・分析するシステムで、決済時に端末に入力された販売内容や金額が自動的に記録される。これにより、どのメニューがいつ・どのくらい売れたかをリアルタイムで把握できる。

農林畜産食品省は、全国約10万カ所の外食店舗のレシート販売情報を分析し、ご飯・キムチチャーハンなどコメを含むメニューの販売量や店舗数を把握し、国民の実際の外食でのコメ消費量を月ごとに推定する方針だ。特にこのような分析結果をAI予測モデルと連携させ、消費トレンドの変化によるコメ需要を事前に把握し、生産や在庫調整政策に反映する。

これと並行して、農林畜産食品省は2026年の穀物管理法施行に先立ち、過剰生産が3%以上・価格が5%以上下落した場合に介入するという現行の市場隔離基準を再検討する。現行の法制度では市場隔離の要件が過度に事後的な判断基準にとどまっており、政府の介入時期が遅れる問題が繰り返されてきた。

これを受けて、穀物管理法上の市場隔離条項を定量的要件と手続き中心に法制化し、危機発生前の段階で迅速に対応できるよう、政策介入の法的根拠と義務性を強化する。

農林畜産食品省の関係者は「現在、関連する研究業務が進行中だ。AIに基づく予測とPOSデータ分析、制度改革などを通じて、コメの需要と生産のミスマッチを最小化し、隔離の必要性をより科学的に判断できるようになるだろう」と説明した。

ソウル大学農業経済学科のキム・ハンホ教授も「単に制度を改善するだけでなく、AIや決済データといったデジタル技術を政策に取り入れることは、正確性と効率性を高める良い方向性だ。予測-調整-隔離の全過程をデータ中心の『先制的な需給調整』体制に転換すれば、今後のコメ需給の不安定問題は大きく改善されると期待される」と述べた。

(c)NEWSIS/KOREA WAVE/AFPBB News