【故宮百年】故宮ボランティア解説員:世界遺産を市民とともに
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【10月29日 CNS】まるで落語の早口言葉のように、「磁器の母」と呼ばれる「各種釉彩大瓶」に施された15種類・17層の釉彩について軽妙に説明するのは、北京市・故宮博物院(The Palace Museum)のボランティア解説員、張甡(Zhang Shen)氏の十八番だ。企業戦略コンサルタントという本職を持ちながら、複雑な釉彩の知識をわかりやすく噛み砕いて伝えることを得意としている。
故宮博物院には、ボランティア解説員のチームがある。彼らはさまざまな職業から集まり、平均年齢は45歳。余暇を利用して一般の来館者に無料で展示品の魅力を伝えている。現在、登録されている解説員は198人。その中には、優れた語り口で人気を集め、「スター解説員」と呼ばれる人もいる。
2005年春、「故宮イエロー」のベストを着た初代ボランティアが登場し、故宮(紫禁城、Forbidden City)のボランティア解説が始まった。今年でちょうど20年を迎える。
この20年のあいだに、陶磁器館を担当する張甡氏は「質問に困ったことがない解説員」と評される存在になった。
張氏が担当する陶磁器館は、故宮の中でも人気の高い展示館だ。明清時代の宮廷建築を会場に、数万点におよぶ陶磁器を通して、中国陶磁器およそ8000年の歩みを時代順に紹介している。
2013年にボランティアチームに加わった張氏は、歴史を愛する理系出身者。普段から勉強を欠かさず、陶磁器館の解説のために「時代軸」「陶器軸」「青磁軸」「器形軸」など十ほどのテーマごとの解説ラインを自ら整理し、どんなテーマでも自在に語れるという。同じ展示室で同じ作品を解説していても、説明が毎回違い、観客からの質問に答えられなかったことは一度もないそうだ。
張氏は、博物館の解説員を「専門家と一般の来館者をつなぐ架け橋」と考えている。琺瑯彩胭脂紫地纏枝蓮紋(七宝釉胭脂紫地唐草蓮紋)、松石緑地洋彩纏枝蓮紋(トルコ石色地洋彩唐草蓮紋)、仿哥釉(哥窯写し釉)など、舌を噛みそうな名称も、彼は暗記しているだけでなく、2分ほどの短い解説の中で順序立ててわかりやすく紹介できる。彼の評判を聞きつけて訪れる人も多く、「口を開けば五千年の歴史が語り出されるようだ」と感嘆の声が上がる。
「質問に困らない解説員」というあだ名について張氏は、「中国陶磁器の歴史は奥が深く、一生かけても学び尽くせない」と語る。それでも、挑戦することを楽しみにしており、「最初にここへ来た頃より、今のほうがずっと多くの質問に答えられるようになった」と笑う。
2018年に定年(70歳)を迎えて引退した周婭(Zhou Ya)氏は、かつて故宮博物院、そして北京の博物館界でも指折りの人気解説員だった。
在籍中、周氏は毎週のように国学の授業を受け、書道や絵画を学び、暇さえあれば博物館を巡った。中国古代史、近代史、陶磁史からギリシャ・ローマ神話まで幅広く学び、より深い解説を目指して多くの書物を読み込んだ。インタビューでは「ネットがこれほど発達した今でも、本の力を信じています」と語っている。
周氏はまた、世界各地の博物館を訪ねて自ら見聞を広げた。エジプト、イタリア、ドイツ、スペイン、フランスなどを巡り、各地の文化や展示方法を吸収した。大唐の気風からイタリア・ルネサンス、3万年前のアフリカの岩絵から現代日本の有田焼まで、あらゆる時代と地域を自在に語る姿に、多くの観光客が親しみを込めて「陽気な周おばあちゃん」と呼んでいた。
故宮博物院では毎年多くの展覧会が開かれ、中国・海外・伝統・現代とテーマは多彩だ。そのぶん解説員の力量も試される。周氏は「努力あるのみ」と話し、解説前には関連する歴史を徹底的に調べて臨んだという。彼女は、同僚の職員たちに深く感謝している。いつも自由な解説を支えてくれ、足りないところは穏やかに助言してくれたからだ。
周氏が伝えようとしてきたのは、「中国から世界を見るだけでなく、世界から中国を見る」という視点。展覧会こそ、その考えを体現できる窓口だと信じている。
1924年、中国最後の皇帝が紫禁城を去った。翌1925年10月10日、神武門に「故宮博物院」の扁額が掲げられ、紫禁城は「故宮」として生まれ変わり、皇室の禁苑から一般に開かれた博物館へと生まれ変わった。明清時代の宮殿とそこに残された文化財は、国民に共有される公共の資産となったのである。
今日、故宮博物院は一般市民をボランティア解説員として迎え入れ、いわば「学びの逆転」を実現している。市民が自ら文化財を研究し、語り、共有することで、文化への理解と参加意識が一層深まっている。2025年4月現在、ボランティアによる解説サービスの累計時間は20万時間を超え、100万人以上がその恩恵を受けている。これまでに数千人がこの活動に携わってきた。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News