【三里河中国経済観察】チベットのグリーン電力、大湾区へ
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【10月23日 CNS】もう一つのエネルギー大動脈が誕生する。9月16日、チベット東南部から粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)へと至るプラスマイナス800キロボルト特高圧直流送電プロジェクト(略称:チベット・広東直流プロジェクト)の建設動員大会が、広東省(Guangdong)、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)、雲南省(Yunnan)、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の四つの省・自治区をオンラインで結んで同時に開催された。
公開された情報によると、チベット・広東直流プロジェクトは全長2681キロ、総投資額は532億元(約1兆1268億円)で、チベット自治区、雲南省、広西チワン族自治区、広東省の四省区をまたぐ。南方電網と国家電網の事業エリアを結ぶ長距離送電の大規模プロジェクトであり、世界で最も送電能力が高く、技術水準が先進的で、投資規模が最大の柔性直流送電プロジェクトだという。
このエネルギーの大動脈が完成すれば、年間送電量は430億キロワット時に達し、標準石炭換算で約1200万トンの消費削減、二酸化炭素排出量で約3300万トンの削減に相当する。つまり、雪の高原からのグリーン電力がわずか9ミリ秒で粤港澳大湾区に届き、毎秒2800キロワット時の電力を送ることができる。その電力量は一般家庭が一年間に使う分に相当する。
このプロジェクトは、国家のエネルギー配置の最適化、粤港澳大湾区の電力供給の保障、地域の協調的発展の推進、さらにはグリーンで低炭素な転換の実現においても、極めて重要で長期的な戦略的意義を持つ。
チベットにとっても、これは大きな発展の機会となる。グリーンエネルギーの大規模な開発と外部送電により、資源の優位性を経済的な優位性へと転換し、継続的な財政収入と雇用機会をもたらし、経済と社会の発展を促進することが期待されている。
チベットは国家のグリーンエネルギー基地として、水力、太陽光、風力などの資源が豊富で、開発の潜在力が大きい。データによると、チベットの水力資源の技術開発可能量は1億7千万キロワットに達し、年間平均日照時間は約3000時間と太陽光資源が非常に豊富で、風力資源の蓄積量も相当なものだ。しかし、インフラの脆弱さや外部送電ルートの不足といった問題が、長年にわたりチベットのグリーンエネルギー開発を制約してきた。
チベット・広東直流プロジェクトの建設は、この状況を変えることが期待されている。このエネルギー回廊はチベットを起点に、雲南、広西を経て最終的に広東に至る。チベット自治区のチャムド市(Chamdo)、ニンティ市(Nyingchi)、そして広東省の広州市(Guangzhou)、深セン市(Shenzhen)に四つの換流所が建設される予定だ。プロジェクトは2029年に全面的に稼働する予定で、年間に粤港澳大湾区へ430億キロワット時を超える電力を送電することができる。これは三峡ダム発電所の年間発電量の約半分に相当し、そのすべてがグリーン電力となる。
電力不足が経済発展を制約する問題は、広東が長年直面してきた現実的な課題である。今年上半期、広東のGDPは前年同期比で4.2%増加し、1〜8月の全社会電力消費量は6272億キロワット時で前年同期比3.9%増となり、電力負荷は三度にわたり過去最高を更新した。
経済大省である広東は、電力負荷と消費量で10年連続全国1位であり、その電力使用規模は世界第5位の日本に匹敵し、ドイツとイギリスを合わせた量を上回る。7月以降、広東の最大電力負荷は1億6500万キロワットに達し、全国で初めて1億6千万キロワットを突破した省となった。これは全国の電力負荷の11%を占める。チベットの電力が広東に送られることは、エネルギー需給の矛盾を効果的に緩和し、経済社会の発展を支える信頼できるグリーン電力の保障となるだろう。
また、こうした大規模プロジェクトはいずれも短期間で投資と雇用を直接押し上げ、経済の持続的成長を支えるエンジンとなる。チベット・広東直流プロジェクトも例外ではない。試算によれば、プロジェクトに伴う「水・風・太陽光一体化」電源基地の建設投資は1500億元(約3兆1771億円)を超え、上下流の設備産業を押し上げ、ピーク時には10万人以上の直接雇用を生み出す見込みだ。
さらに、チベット・広東直流プロジェクトの建設は、中国のエネルギー戦略安全の確保にも深い意義を持つ。地政学的な不安定さが増し、エネルギー安全保障の問題が顕在化する中で、国内のグリーンエネルギーを開発し、エネルギー自給を実現することは、国家エネルギー安全を確保するための重要な手段だ。チベット・広東直流プロジェクトは、エネルギー自給率を効果的に高めることにつながる。
もっとも、このプロジェクトには多くの課題もある。青蔵高原、雲貴高原、華南丘陵といった複雑な地形を横断し、標高差が大きく、地質条件も複雑で、建設難易度は極めて高い。設備性能や施工組織に対する要求も非常に厳しい。それでも、このチベット・広東直流プロジェクトは、現時点で世界の送電技術の最高水準を代表しており、中国が特高圧送電、柔性直流送電、グリーンエネルギー開発といった分野で持つ技術力と施工能力を改めて示すものとなっている。
チベット・広東直流プロジェクトの建設と稼働により、中国のエネルギー配置能力はさらに向上し、世界のエネルギー転換にも中国の力を貢献することになる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News