金正恩総書記の前で半袖Tシャツ姿の北朝鮮国防相…「破格の演出」は“統治技法”だった
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【10月21日 KOREA WAVE】北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が10月初め、海軍の新型駆逐艦「崔賢」号で開いた宴会で、ノ・グァンチョル(努光鉄)国防相が半袖Tシャツ姿で登場した。最高指導者の前で“非礼”とも取れる服装が許されたのは異例のことだが、これはキム総書記特有の「ご褒美統治」、すなわち忠誠心を高めるための演出だという分析が出ている。
労働新聞(6日付)によると、キム総書記は10月5日、武器展示会「国防発展-2025」の行事後、同行した主要幹部とともに「崔賢」号を視察。その後、海軍兵士のために党中央軍事委員会主催の宴会を開いた。
写真では、キム総書記の両脇に党の高官が並ぶ中、ノ・グァンチョル国防相は一人だけ軍服の下に着る国防色の半袖Tシャツ姿で、左端の席に座っている。中央軍事委員会副委員長のパク・チョンチョン(朴正天)氏も上着を脱ぎ、白いシャツにネクタイ姿という軽装だった。キム総書記がきっちりとスーツを着こなしていたのとは対照的だ。
ノ・グァンチョル国防相は別の場面では正装の軍服姿で写っており、この宴席だけ特別に“ラフな服装”が認められた可能性が高い。
キム総書記はこれまでも大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射成功など軍事的成果を祝う席で、幹部とともに大笑いしたり、一緒にたばこを吸う“破格の場面”を演出してきた。
2025年8月、人民軍海外作戦部隊の指揮官らに国家表彰を授与する前にも、執務室の机上にはたばこ、灰皿、マッチが置かれ、幹部らが自由に喫煙できる雰囲気が伝えられた。
通常、北朝鮮の幹部は最高指導者の前で口を覆いながら報告し、絶対的な礼節を守る。したがってこうした光景は極めて異例だ。韓国の専門家は「軍功を立てた者には特別な“破格待遇”を与え、忠誠心を高める狙い」と見ている。
このような映像を国営メディアがあえて公開するのは「功労を立てれば特別な恩恵を受けられる」というメッセージを全国の軍・党幹部に送る意図があるとみられる。
今回の武器展示会では、新型ICBM、極超音速弾頭付き短距離弾道ミサイル(SRBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など、過去5年間に開発された最先端兵器が一挙に公開された。新型駆逐艦「崔賢」号も北朝鮮が“海軍力の象徴”として誇示する最新戦力であり、その成功に関わった幹部らが破格の待遇を受けた形だ。
北朝鮮消息筋は「キム総書記が軍や幹部との心理的距離を縮め、同時に忠誠競争を促すために、こうした“親密な演出”を統治の一環として活用している」と分析している。
(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News