【10月17日 AFP】欧州連合(EU)の最高裁判所に当たる欧州司法裁判所は16日、空港で預けて飛行機の「貨物室」に積み込まれ、到着地で受け取る犬は、預入手荷物とみなされるとの判決を下した。航空会社は犬が行方不明になった場合でも、高額の賠償金を支払う義務を負わないことになる。

​​2019年10月にアルゼンチン・ブエノスアイレス発スペイン・バルセロナ行きのフライト前に犬のモナが行方不明になり、飼い主がスペインのイベリア航空を相手取り訴訟を起こした。

モナは大きく重かったため、ペット用キャリアに入れて空港でチェックインカウンターに預け、飛行機の貨物室に積み込んで運ばざるを得なかったが、積み込む際に逃げ出して行方不明になった。

飼い主のグリセル・オルティス氏によると、モナは3台の車に追いかけられ、滑走路を走って逃げた。オルティス氏の母親が機内からその光景を見ていたという。

オルティス氏は2020年1月にアルゼンチンの日刊紙クラリンに掲載されたインタビューで、「多くの人が笑うのは、モナが私にとってどんな存在なのかを理解していないからだ」「モナが行方不明になってからというもの、泣きながら携帯電話に張り付いて奇跡を待つばかりだ」と語った。

オルティス氏はイベリア航空に対し5000ユーロ(約88万円)の損害賠償を求めた。

イベリア航空は責任を認めたが、賠償額は航空会社の責任を規定する「モントリオール条約」で定められた受託手荷物の限度額が適用されるべきだと主張した。

この訴訟を担当したスペインの裁判所は、この問題を欧州司法裁判所に付託した。

欧州司法裁判所はイベリア航空の主張を認め、「『手荷物』という言葉の通常の意味は物体を指すが、これだけではペットがその概念の対象外であると結論付けることはできない」と判断。

動物は、輸送中に動物福祉の要件が十分に考慮されるという条件付きで、賠償責任の観点から「手荷物」とみなされる可能性があると付け加えた。

欧州司法裁判所は、飼い主がチェックイン時に追加料金を支払って運送業者の承認を得ることでより高額な賠償を受けることができるオプション「特別な利益の申告」を行っていなかった点も指摘した。

オルティス氏の弁護士、カルロス・ビジャコルタ・サリス氏はAFPに対し、これは「誤った主張」であり、「世界のどの航空会社も」貨物室で輸送されるペットに関してそのような申告には同意しないだろうと述べた。

サリス弁護士は判決に「非常に失望している」として、「動物とその世話をする人々の権利を可視化する機会を逃した」と述べた。

欧州司法裁判所の判決は勧告的なもので、最終的な判断は賠償請求を扱うスペインの裁判所に委ねられる。(c)AFP