【9月27日  People’s Daily】中国発のトレンディ玩具、どこか奇怪で少し反抗的な性格のように見える森の精霊「LABUBU(ラブブ)」は、着実に世界中の若者の心を掴んでいる。徹夜で並んで購入する人もいれば、大金を投じる人もいる。誕生から10年を経た「ラブブ」は、一夜にしてトレンディな「ネット有名人」から「トップ人気のIP(知的財産権)」へと躍進し、巨大な商業価値が生まれると同時に、その代表的なデザインのトレンドが、人びとの新世代ポップカルチャーへの注目度を盛り上げている。

「ラブブ」の原型は北欧の森の精霊で、牙が鋭く、異色な瞳を持ち、体のプロポーションは歪んでいる。ほとんどの人は初めて見た時に「この子はどうしてこんなに変な見た目なんだ」と疑問に思い、思わず何度も見てしまうと、「変な感じはするけれど、なんだか可愛いかも」と感じてしまう。この伝統的な審美観とは異なるイメージデザインは、まさに若者から好まれる「ブサカワ」スタイルだ。

「ブサカワ」という言葉はインターネット上でよく見られ、可愛らしさと少しの醜さを併せ持つスタイルを指す。近年、伝統的な審美観にあまり合わない、奇怪だがなんとなく可愛い人形や文化クリエイティブ製品などが、その独特な魅力で若者に愛されている。「ブサカワ」というコンセプトは次第にサブカルチャーから流行の表舞台へと登場してきた。

甘粛省博物館(Gansu Provincial Museum)の文化創作グッズ「緑馬」シリーズのぬいぐるみが、2022年に大ヒットした。このぬいぐるみは、文化財「銅奔馬」をモチーフとして、奔馬が首をかしげて「はしゃぐ」表情を捉え「ブサカワいい」造形を作り出し、多くの若者を虜にした。

23年には、全身緑色で目を大きく見開き、口を大きく開けたカエルのスプーンがネットで人気となり、若者はその「ブサカワさ」に心を奪われ、話題にしたり、シェアしたり、購入したりが相次いだ。

また巳年の今年の各地のヘビ年マスコット比べでは、広州市(Guangzhou)の「ハート目ヘビ」と昆明市(Kunming)の「南屏歩行者通り」の「ヘビ宝宝(ヘビ赤ちゃん)」が、どちらも「ブサカワ」デザインで注目を集め、若者の写真スポットとして人気を集めた。

インターネット上で「ブサカワ」は、今や若者をつなぐソーシャルバンドとなっている。中国のeコマース「淘宝(タオバオ、Taobao)」主催のネットユーザーなら誰でも投稿し参加できる「淘宝ブサイクグッズ大会」はすでに4回開催され、中国のソーシャルメディア「小紅書(Red)」では「ブサイクもの」と「ブサイクものコンテスト」の2トピックスだけで6000万回以上の閲覧があった。

ブサカワ文化は海外でも流行している。英国の玩具ブランド「ファグラー(Fuggler)」は、奇怪でユーモアあふれる歯のモンスターのデザインで世界的に有名で、それぞれのモンスターが独特の性格と外観を持ち、目が離せなくなる。また、日本の「ゆきお」は人形のマスコットチャームで、やる気のなさそうな目とポーカーフェイスが特徴で、200種類以上のブサカワなデザインがあり、日本の若者に愛されるだけでなく、世界中の若い観光客に人気の旅行みやげとなっている。

つまり、「ブサカワ」は新世代のポップカルチャーの独特なタグとなっており、その背景には社会文化の心理変化だけでなく、消費主義やメディアの传播力など複数の要因が密接に関わっている。若者が「ブサカワ」に熱中するのは、一見すると審美の潮流の変遷のように見えるが、実際には世界経済の急速な発展に伴う社会環境、個人の行動、生活様式の大きな変化を反映したものだといえる。

現代の若者には大きなプレッシャーがかかり、生活のリズムが速く、競争が激しい。ブサカワなペット、玩具、クリエイティブグッズは、彼らに安らぎをも与え、感情の代償やストレス発散のはけ口を見つけることができるものだ。そしてソーシャルメディアの拡散効果が、この風潮を大流行のトレンドへと押し上げている。

一方で「ブサカワ」が「審美」から「審丑(醜さを愛でる)」への後退を意味するのではないかという疑問の声もある。しかし、「美」とはいったい何か。ドイツ語では「美学」は「感受学」と呼ばれ、感受に関する学問である。

新世代は様々な可能性に敢えて挑戦し、流行を追いながらも、独自性と個性を追求している。「ブサカワ」はまさに彼らの多元的な審美と個性的な表現を追求するニーズに符合し、本質的には「单一の審美標準」の解体であり、若者の「定義されることを拒否する」姿勢を明確に示すものとなっている。

今回「ポップマート(Pop Mart)」の「ラブブ」の世界市場での成功の鍵は、若者の文化的な心理と審美ニーズを正確に捉え、現代的なデザインで販売戦略に反映させたことにあるといえよう。データによると、23年の中国のトレンド玩具の市場規模は500億元(約1兆325億円)を超え、その中で「ブサカワ」タイプの商品が占める割合は年々上昇している。

将来、文化的状況の変化に伴い、「ブサカワ」はより多元的な形態へと発展する可能性がある。

「ラブブ」が長寿IPに成長できるか、中国のトレンディ玩具・カルチャー創造企業が次のヒット作を生み出せるか、それはただ一つの秘訣にかかっている。すなわち、若者の心をしっかりと掴み続けることだ。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews