広東・香港・マカオ大湾区:協調イノベーションでみなぎる活力
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【9月22日 People’s Daily】ロボットの「手」は、どれほど繊細になれるのか。
記者の目の前で、シルバーグレーの人型ロボットがゆっくりと5本の指を伸ばし、そっとつかみ取った風船は破れず、ポテトチップスは砕けず、豆腐さえも安定してつかむことができた。
「戴盟(深セン)机器人科技(Daimon Robotics)」の創業者兼CEO・段江嘩(Duan Jianghua)氏は「香港の基礎研究が、深セン河を跨いだ深センで『五指霊巧手(器用な五本指)』のロボット産業に成長した」と大きな達成感を語った。
開放度が高く、経済活力に富む「深セン・香港・広州」科学技術クラスターは、世界知的所有権機関(WIPO)が発表したグローバル・イノベーション・インデックスで、5年連続で世界2位となった。近年、広東省(Guangdong)・香港特別行政区・マカオ特別行政区の3地域は心を一つにして、それぞれの強みを最大限に発揮し、相乗効果を解き放ち、世界的な影響力を持つ国際科学技術イノベーションセンターの建設を加速させている。
科学技術の世界的な競争において、規模化され組織化された科学研究活動はますます重要になっており、最先端に焦点を当てて「基盤」を強化する大型科学装置の研究価値が日増しに顕著になっている。
「粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)」では、「広東・深セン・香港」と「広東・珠海(Zhuhai)・マカオ」という2つの「科学技術イノベーション回廊」が、まるで「人」の字の形のように広がっている。
中国科学院高エネルギー物理研究所が運営するパルス中性子源施設「中国散裂中性子源(China Spallation Neutron Source)」、10のマイナス18乗秒という先進的な超短時間レーザーパルス「アト秒レーザー」、海底から湧き出る冷泉や温泉周辺の極限環境に成立する生態系の研究設備「冷泉生態システム」など「国家の重要設備」が互いに輝き合い、鵬城実験室、広州実験室などが相次いで設置され「広東・香港・マカオ」がより多くの「ゼロから1へのブレークスルー」の創出を支えている。
マカオ大学協同創新研究院を訪れると、人間と機械のインタラクション実験が行われていた。ヘッドギアを装着すると、コンピュータ画面に、被験者の画像に対する「好き」「嫌い」の感情的反応が表示され、緑と灰色の色合いが画像の点滅に伴って変化している。
この研究者・学生グループは「感情人工知能(Affective AI)」の基礎研究に取り組んでいる。研究院の須成忠(Xu ChengZhong)代理院長は、「国家スーパーコンピューティング广州センター」と専用回線をつなぎ、スーパーコンピュータ「天河2号(Tianhe-2)」の強大な計算力に頼ることで、以前は成し得なかった科学研究を完成させることができたと語っている。
マカオから一水一橋で隔てられた「横琴広東マカオ深度合作区」では、広東省智能科学技術研究院とマカオ大学が共同で「認知と脳型智能連合实验室(研究センター)」を設立している。広東省智能科学技術研究院の張旭(Zhang Xi)院長は「研究資源を共有し、キーコア技術のブレークスルーを実現するよう努力している」と述べた。
「大湾区」の重大な独創的イノベーションの背景には、広東・香港・澳門の3地域の科学研究の力の結集がある。現在、34の広東・香港・マカオ連合実験室が設立・運営されている。
中国が自主開発した初の海洋掘削船「夢想号」が広州南沙区で正式に就役した。香港科技大学(The Hongkong University of Science and Technology)が主導して多機能月面作業ロボット兼移動式充電ステーションを開発した。科学研究用人工衛星「マカオサイエンス1号」は地球を1万周以上周回し、大量の高精度科学データを収集した。これら一つ一つの重大なブレークスルーが「大湾区」の科学技術イノベーションの新たな高みへの挑戦を後押ししている。
半導体チップは、中国が世界で最も激しく「包囲攻撃」されている業種の一つだ。7年前、米国カリフォルニアから深セン前海合作区に移った譚章熹(Tan Zhangxi)氏は、研究チームを率いて「睿思芯科(深セン)技術(RiVAI Technologies)」を設立し、高性能RISC-V(リスクファイブ)サーバーチップの自主開発に取り組んでいる。
なぜ「広東・香港・マカオ大湾区」を選んだのか? 譚董事長は、その深い考察結果を「チップで最も難しいのは製造することではなく、持続可能なイテレーション(短期間での反復開発)を実現することだ。大湾区はチップ技術のイテレーションに理想的な環境を提供してくれた」と答えた。
同社は香港で子会社を設立し、研究機関との連携、人材の吸引、国際的な交流を展開している。譚氏は「広東の電子産業は完備されており、多くの有名なエンドユーザーがいる。上流から下流までが協同して、『前に進む』イテレーションの生態系が形成されている」と説明する。
「実験室が生産ラインにつながっている」、イノベーション連鎖と産業連鎖が互いに融合し相互に促進し合うことこそ、多くのテクノロジー企業が「大湾区」に「魅了される」決め手となっている。
香港・マカオでは、国際的連携を強化し、世界的人材を吸引し、資金調達ルートを拡大し、基礎研究の強化を図る。
内地では、産業チェーン・サプライチェーンが完備され、多様な応用シーンがあり、産業人材が集積し、「1から100」への成果の転化が加速される。この5万6000平方キロメートルの土地は、科学技術イノベーションに、より速いスピードを与えるだけでなく、企業に広大な発展空間を与えている。
「広東・香港・マカオ大湾区」を歩くと、人工知能、ロボット、ビッグデータ、低空経済、無人運転、バイオ医薬などイノベーション企業が至る所に見られる。7万7千社の国家級ハイテク企業がここに集まり、新たな質の生产力の「湾区の原動力」が絶え間なくあふれ出し、科学技術のイノベーションを加速させながら、あたかも波に乗るように前進し続けている。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews