【9月19日 東方新報】中国の実業家の羅永浩(Luo Yonghao)氏から「高額料理が実は預制菜(調理済み食品)ではないか」と名指しで批判を受けてから5日後、人気レストランチェーン「西貝莜麺村(XIBEI)」は謝罪に踏み切った。だがその謝罪は、新たな議論を呼び起こす結果となった。

9月15日に発表された謝罪声明で西貝は、「可能な限り中央厨房での前処理を店舗での調理に切り替える」と表明。消費者が懸念する賞味期限については「食品安全と在庫管理を確保した上で、短縮に向けてサプライヤーと協議中」と説明した。

しかし、西貝は自社の工程を「中央厨房(セントラルキッチン)前置加工」と表現し、あくまで「預制菜」ではないとの立場を崩さなかった。これに対し羅氏は謝罪文をSNSで転載し、あえて「西貝が預制菜について謝罪」と記した。双方が核心の論点である「定義」で歩み寄らなかったことが鮮明になった。

現在、預制菜をめぐる国家標準はまだ策定されていない。西貝が「100%不使用」と主張する根拠は、2024年に市場監督当局など6部門が共同発表した通知にある。通知では「工業的な加工を経た包装済み食品」を預制菜と定義する一方、チェーン店が中央厨房で調理し自店舗に配送する料理は預制菜に含めないとしている。

一方、羅氏や多くの消費者は「その場で一から調理しないものはすべて預制菜」と考える。この認識の差から、西貝が厨房を公開しても「冷凍や包装済みの食材を切って炒め直すだけ」という光景が逆に疑念を深める皮肉な事態となった。

食品産業アナリストの朱丹蓬氏は「西貝の牛羊肉中心のメニューでは、柔らかさと提供速度を両立させるために事前加工が不可欠」と指摘。その一方で、預制菜には標準化や効率化といった利点があり、農村経済や食品産業の発展にも寄与すると評価する。

ただし、産業側の拡大とは裏腹に、消費者の間には「安全か」「栄養はあるのか」「なぜ現調理と同じ価格なのか」といった不信感が根強く残る。供給と需要の意識のずれが論争の焦点となっている。

解決の鍵は「透明性」だ。羅氏は「預制菜そのものに反対しているのではなく、消費者に知る権利がある」と主張。実際、別のチェーン「老郷鶏」は自社の調理比率を公開し(店内調理84品、半加工33品、加熱済み2品)、一定の理解を得た。

預制菜は必ずしも「悪」ではない。だが国家基準が整備されていない今、飲食企業に求められるのは消費者を「教育」することではなく、情報を公開し誠実に対話することだ。それこそが本当の意味で「明るい厨房」を実現する第一歩になる。(c)東方新報/AFPBB News