【8月29日 CNS】中国・浙江省(Zhejiang)最年少の県級市は、かつて「鎮」だった。

2019年8月、国務院の承認を得て竜港鎮は廃止され、県級市の「竜港市(Longgang)」が誕生した。全国初の「鎮から市への昇格」事例となった。

「最年少」という肩書とは裏腹に、経済規模ではすでに重鎮だ。

2024年、浙江竜港市のGDPは443億7300万元(約9104億971万円)に達した。2025年第1四半期のGDPは125億元(約2564億6500万円)を超え、前年同期比6.7%増となり、浙江省の平均成長率を上回った。

常住人口48万人に満たず、市制施行からわずか5年の竜港市が、なぜこれほどの規模と成長率を実現できたのか?

竜港市の躍進は、最初は「紙」の上で始まった。

1990年代、低コストとスピードを武器に多数の印刷企業が集まり、毎年平均80%以上のペースで急成長を遂げた。

公開データによると、1990年代末までに、竜港市の印刷企業数は約800社、従業員数は4万5000人に達し、印刷業の総生産高は30億元(約615億5160万円)を超えた。

しかし、経済競争に永遠の勝者はいない。市場需要の変化に伴い、龍港の印刷産業は「小規模・零細・分散」のモデルから発展の壁に突き当たった。

当時、企業は短期的な経営に偏り、市場開拓は不十分で、低価格競争に陥った。商標やブランド意識も薄く、侵害や偽造といった問題もあり、印刷業の持続的な発展と競争力を大きく制約していた。

しかし竜港市は現状に甘んじず、産業の高度化を推進。

例えば、水性インキの導入や環境配慮型の後工程自動化設備の採用と同時に、伝統的な印刷分野から、文化創造グッズ・児童書・盲盒(ブラインドボックス、Blind Box)といった付加価値の高い製品へ事業領域を拡大。併せて、印刷業界における違法行為の取り締まりも強化した。

その結果、2024年には龍港の印刷包装業の全サプライチェーンにおける生産額は約200億元(約4103億4400万円)に達し、2019年と比べてほぼ倍増。竜港市のGDPの約6割を占めるまでに成長した。印刷業の資格を持つ技術者は、2019年のたった1人から5年間で3859人に急増した。

つまり竜港市は、一枚一枚のカード、一冊一冊の児童書、一つ一つのブラインドボックスを通じて、産業再生の成功モデルを印刷し出したのである。

印刷が「基盤」なら、ハイテクは新たな「エンジン」

2024年、竜港市の規模以上工業企業の付加価値額は69億1600万元(約1418億9695万円)で、そのうちハイテク産業が占める割合は55.5%、前年比増加率は15.8%に達した。年末時点で、竜港市には省級企業研究院5か所、省級ハイテク企業研究開発センター33か所、市級企業研究開発センター115カ所があり、これらは2010年末のそれぞれ5倍、4倍、4倍に当たる。

このような飛躍は偶然ではなく、新興産業を軸に積極的に展開してきた竜港市の戦略の成果だ。

総投資額100億元(約2051億7200万円)の華潤電力(China Resources Power)竜港超清浄エネルギー示范プロジェクト、50億元(約2051億7200万円)超の藍科途(Lucket)高性能湿式リチウムイオン電池セパレーター生産基地といった大型プロジェクトが次々と進出した。

沿海平原では、スマート装備、新エネルギー、新素材、ライフサイエンス、低空経済といった戦略的新興産業が勢いを増している。

龍港の産業の急速な発展は、その特異なガバナンス構造とも密接に関係している。

市設立当初から「大部制(簡素化行政)+フラット化」改革を導入し、市全体で党委員会部門6、政府部門9、事業単位6を設置。党政機関と人員の数は同規模の行政単位の40%にとどめ、企業審査は「一つの印章で完結」する仕組みを採用した。

行政の簡素化とサービス改善の「合わせ技」で、2024年には新規登録市場主体が2万2000戸、登録経営主体は12万500戸を突破。常住人口4人に1人が「事業主」という計算になる。

外部では「会社設立がネット通販のように簡単」と評されるほどだ。

龍港の発展の歩みを振り返ると、その成長は単なる一点突破ではなく「産業高度化、技術革新、制度改革」の三つがかみ合った結果だ。三つの歯車が互いに回転し、この若い都市の高品質成長を支えている。

「GDP500億元(約1兆259円)クラブ」入りを目指す龍港は、従来の強みを「新しく」、新興産業を「大きく」、改革の試みを「深く」進めながら、地域経済競争の中で確かなポジションを築こうとしている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News