【8月29日 People’s Daily】北京市の東五環路の外側にある「首創・郎園ステーション」では、消費者たちが三々五々散策を楽しんでいる。このオープン型のエリアには、赤レンガの建物、古い倉庫、鉄道線路、駅舎、緑地が点在し、そこに個性的な「クリエイターブランドショップ」が溶け込み、訪れる人びとに独特な消費体験を提供している。

「首創・郎園ステーション」は、かつて北京の紡績倉庫だった場所で、2019年に40年以上の歴史を持つ大型倉庫の改造・リニューアルが開始され、映画産業や文化的なカフェ、書店、画廊、デザイナーズ家具店、ニッチなセレクトショップ、音楽バーなどが集まる新たな都市空間へと生まれ変わった。

伝統的な百貨店やショッピングセンターとは異なり、現在、多くの中国消費者が、創造性に富み活気あふれる「非標準型」の消費体験に惹きつけられている。

「非標準型」とは何か?一般的には、伝統的な商業の概念を打破し、個性化・差別化を重視した商業形態を指す。

不動産市場分析に強い民間調査機関「赢商研究センター」の報告書は、空間形態、シーン創造、業態の組み合わせ、運営モデルなどで革新を遂げた商業プロジェクトを全て「非標準商業」と定義している。

近年、中国各地の、特に一線・二線級の大都市で「非標準商業型のプロジェクト」が急増している。その中には、例えば上海の「鴻寿坊」のように歴史的建造物を保護・再生し、伝統文化と現代のライフスタイルを融合させたものがある。

また、北京の「THE BOX 朝外」のように、若者のライフスタイルに焦点を当て、新たな空間形態をデザインし、都市の若者層の実店舗消費の拠点を創出している場所もある。

規模の面では、近年出現した「非標準商業プロジェクト」は、5万平方メートル以下のコンパクトで柔軟な開放型エリアが多い。そこには広々としたスペースや緑地、レジャー施設が備わり、単なる買い物の場所以上の社交や娯楽の空間を実現している。

「首創・郎園ステーション」内の家具のデザイナーズブランド「吱音(ziinlife)」の店舗は、9メートルの吹き抜け空間を活かした2層構造が特徴だ。来店者は木製の階段を登って移動でき、独特の「家具の美学」が体験できる。店舗責任者の李菲(Li Fei)さんは「このような構造とデザインは、伝統的な商業施設内では実現不可能だった」と話す。
数年前、店舗は移転問題に直面し、伝統的な商業施設の賃料の高騰や来店客の流量は多いけれどもターゲット層は限られているなどの問題点を考慮し、最終的にこの地を選んだという。李さんは「伝統的な商業施設と比べ、ここはブランドに大きな自由度を提供している。施設とブランドが共同で創り出した独自の雰囲気が、よりターゲットに近い客層を引き寄せている」と分析している。

都市の「非標準商業プロジェクト」がますます増加している理由は何だろうか?

一つには、中国における都市再生プロジェクトの推進で、古い市街区や工場跡地などの再活用のニーズが高まっていること。もう一つは、従来型の商業施設の増加が鈍化し、画一化が進んでいること。このような背景があり、差別化を図る動きが加速し「非標準商業施設」の探求価値と可能性が見えてきたのだ。

四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)にある「東郊記憶で、音楽のリズムが工業の遺構を蘇らせる感覚を体験する。上海の「鴻寿坊」では、上海風の灰色のレンガと赤い瓦の間に、洗練された日常の活気が体感できる。

SNSではこういう施設が頻繁に話題となり、開催されるフリーマーケットやイベント、展覧会などが注目を集めている。

しかし、一部の「非標準商業施設」は、立地が偏っていたり規模が小さいなどの客観的な制約に直面している。新鮮さと話題性を維持するだけでなく、どうすれば長期に安定した運営が実現できるだろうか?

これについて「首創郎園ステーション」の運営会社の趙春燕(Zhao Chunyan)総経理は「我々が重視するのは、産業論理、コミュニティ論理、デザイン駆動論理の三大ロジックだ」と説明する。

趙氏によれば、「産業論理」とは、店舗の背後を支える産業基盤を指す。「コミュニティ論理」とは、ブランドがプライベートドメインのトラフィックを力強く運営する能力を持ち、独自の顧客層を保有することを指す。また「デザイン駆動論理」とは、美的デザイン能力を発揮して美学デザインで独自性を表現し、同時にその拡散とトラフィックを喚起することを指すという。

例えば、「ACTION」という名のカフェレストランは、メニューから装飾、ポスターまで、映画要素が至る所に散りばめられている。週末には客で溢れ返る人気店だ。実は、この店はバックに(映画製作の最終工程を担う)ポストプロダクション会社が付いており、映画のIP(知的財産権)コンテンツのオフライン展開など多角経営の試みの場となっている。

趙氏は「非標準商業プロジェクトは独特なものの追求が命だ。標準化された伝統的商業施設とは違い『非標準商業モデル』は大量コピーができず、それだけ独自性が高い」という見方を示している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews