中国・海南自由貿易港建設の最前線レポート
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【8月25日 People’s Daily】今年は海南自由貿易港の「封関運営」の開始の年だ。「封関運営」とは、海南島全域に税関が管理監督する特定エリアを設置し、全島を保税区エリアとして関税ゼロなどの優遇政策が享受できる政策を指す。
近年、海南省は自由貿易港の政策制度体系を継続的に整備してきた。ハイレベルの対外開放を通じて、貨物貿易とサービス貿易の年平均20%以上の成長を実現し、実際の外資導入規模も着実に増加し続けている。
地元で真珠製品の加工販売を営む「海南京潤真珠」の周朔(Zhou Shuo)総経理は「21%の関税減免は、販売側にとって大きな朗報だ」と大いに喜んでいる。
加工して付加価が値向上した製品の国内販売における関税免除は、海南自由貿易港の政策の一つだ。この政策では、海南省が奨励する産業分野の企業に対して、輸入原材料を海南自由貿易港で加工し、その付加価値の増加が30%以上となった製品を内陸部で販売する場合でも、輸入原材料の関税が免除される。
「海南京潤真珠」は今年第1四半期、3回にわたって合計2000粒以上の金色と白色の南洋真珠を輸入した。年末までには輸入量を3万粒まで拡大する見込みだ。1200万元(約2億4816万円)の調達コストを基に試算すると、国内販売時関税免除政策による関税コストの低減額は250万元(約5215万円)以上になるという。
海口(Haikou)税関の統計によると、今年3月末時点で、海南島で加工し付加価値増加後に国内販売された貨物は75億4600万元(約1560億5128万円)に上り、関税免除額は約6億100万元(約124億2868万円)に達している。
この政策の推進により海南省では、海外と国内市場を狙う現代版の加工企業が活発な成長を見せている。
報道によると、海南自由貿易港の「封関運営」実施後、市場参入要件がさらに緩和され、「越境サービス貿易」に対する「ネガティブリスト(制限リスト)管理制度」と「外資企業投資参入ネガティブリスト管理制度」が実施され、制限項目以外の越境サービス貿易の参入のハードルが大きく下がる見通しだ。これで、より多くの外資企業や国際的な人材が海南島に集まり、投資や事業展開の活発化が期待されている。
タイの正大集団(Charoen Pokphand Group)は近年、2億2000万元(約45億5000万円)を投資して海南島の特産品「興隆コーヒー」の加工生産ラインを新設し「コーヒー文化園」を改造するほか、5億4000万元(約111億6700万円)を投じてコーヒー文化を軸にして高級住宅、レジャー、ビジネス創出の複合的なニュータウン「正大・太陽河コーヒータウン」を建設するなど、海南島への投資を継続的に拡大している。
同集団の子会社「海南興隆コーヒー産業開発」の王孟軍(Wang Mengjun)シニア副総裁は「中国への投資は未来への投資だ。中国の超大規模な市場が我々の意欲と自信の源だ」と強調する。
同グループの海南島における業績は、21年以降毎年倍増している。今年3月「興隆コーヒー文化園」は国家3A級観光区に認定され、入園者は40万人を突破した。
海南省は国際的なビジネス環境の整備に積極的に取り組み、近年は「海南e登記」を通じて外資系企業の全ての手続きの電子化を実現する仕組みを検討している。「投資海南ワンストップサービスプラットフォーム」を開設し、入国通関、滞在許可など8項目の外資系企業と外国人向けの「ワンストップサービス」を開始した。
王副総裁は「海南島のビジネス環境は良好で、手続きの効率も良い。我々はここでのびのびと自由に活動できる」と、省の政策を高く評価している。
グローバル化に対する厳しい逆風の中、昨年海南省は新たに外資系企業2000社を超える外資企業を誘致し、前年比約20%増を記録した。
北京時間午後5時、米国東部時間午前5時、「海南省越境データ情報産業園区」に居を構えるインターネットとECを運営する「小本経盈文化伝媒」の3号スタジオでライブ配信が開始された。司会者が流暢な英語で、早起きしてトレーニングをする米国人に向けて、中国のハーブ茶を紹介していた。
同社の陳継鋒(Chen Jifeng)総経理は「外部環境の変化にも関わらず、わが社の売り上げは急成長している。このライブ配信スタジオの1日当たりの売り上げ額は、昨年の1万元(約20万6800円)から現在13万元(約268万8400円)に増加し、4月の売り上げは2月に比べて5倍に増加した」と話す。
現在、最も売れている商品は中国のハーブ茶で、海外の健康志向の消費者の人気を集めているという。
陳総経理は23年に越境EC輸出の拡大を決意した。「海南島を選んだのは、売買データの安全で秩序正しい流れが確保される『自由貿易港政策』があるからだ」と、海南島立地の理由を説明した。
中国政府は、海南省の「データの安全と秩序ある流動化政策」の早期実施を支援するため、23年に「海口国際通信全業務出入口局」の設立を批准した。「中国聯通(China Unicom)海南分公司」と「海南省情報通信」は連携して「越境情報産業サービスプラットフォーム」の構築を開始した。
中国連通海南の甘泉(Gan Quan)副総経理は「ユーザーは端末を1つインストールするだけで、合法的な越境データチャネル経由で、国際インターネットに接続できる。従来の越境ECネットワークの不安定さを完全に解消し、世界規模でデータノードを展開したグローバルネットワークを実現した」と説明する。
米国の企業信用調査会社「ダン・アンド・ブラッドストリート(Dun and Bradstreet)」は22年に海南に拠点を設置、翌23年に全省で初めて国家インターネット情報弁公室のデータ出境安全評価に合格した企業となった。
同社の中国地区総裁・呉広宇(Wu Guangyu)氏は「海南省では、外資企業も国有企業も平等に扱われ、開放的な姿勢が示されている。我々は海南省を、国際市場と国内市場とを結びつけ、データ資源を集中させる重要な拠点と位置付けている。海南自由貿易港の『封関運営』の順調な進展に大変期待している」と語った。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews