【8月22日 People’s Daily】河南省(Henan)鄭州市(Zhengzhou)で、オーストラリアへ輸出されるシールドマシン「パティガラン号」が完成した。このマシンの名称は、18世紀のオーストラリアで活躍した著名な先住民(アボリジニ)女性の名前にちなんだものだ。中国が輸出するシールドマシンの中では最大直径の15.7メートルのトンネルが掘削できる。
  
現在上海の崇明島では、シールドマシン「領航号(Linghang)」が地中を掘り進んでいる。「有人監視・無人操作」方式で掘削され、すでに長江(揚子江、Yangtze River)の中央部に到達している。

シールドマシンは、正式名称を「全断面トンネル掘進機」といい、「建設機械の王」と称されている。現在、中国のシールドマシンはエンジニアの手によって、まさに「百変金剛(変幻自在なトランスフォーマー)」となり、多種多様で高性能な機種が次々に開発されている。
  
過去、シールドマシンは主に水平掘進に用いられていた。現在、中国製のシールドマシンは水平掘進だけでなく、斜め、垂直、曲線掘進も出来るようになっている。

昨年9月、世界で初めての大口径で急勾配掘削が可能なシールドマシン「永寧号(Yongning)」が、河南省洛陽市(Luoyang)の「洛寧(Luoning)抽水蓄能発電所2号」の引水用傾斜井の掘削任務を無事完了した。これは傾斜角度38.742度、全長約873メートルの、掘削が難しい傾斜井であった。「永寧号」の成功は、傾斜井工事の効率を大幅に向上させた。

水利、水力発電、炭鉱、その他の鉱山、都市の総合トンネル、駐車場など、「永寧号」の開発に携わった中国中鉄工程装備集団のエンジニアたちは、これらのプロジェクトは全てシールドマシンが真価を発揮する舞台だと認識している。彼らは複数の研究開発チームを編成し、対象に応じた個別の開発を進め、単にさまざまな方向の掘削が可能なだけでなく、円形、方形、馬蹄形、楕円形など多様な形状の掘削にも対応する能力を持たせ、シールドマシンの応用範囲を大きく拡大した。
 
「なんと16.6メートル超え!」、昨年10月には中国が自主開発した超大口径のマシン「江海号(Jianghai)」が完成した。国産のシールドマシンはなぜその口径をますます大きくしているのか?

中国鉄路第14工程局のシールドマシンの専門家・陳健(Chen Jian)氏によれば、それは大口径トンネルの「コストパフォーマンス」がより高いからだ。シールドマシンの掘削可能直径が大きくなれば、従来の二重管トンネルを単一の超大口径トンネルで代替でき、地下空間資源が有効に節約できる。また15メートル級以上のシールドトンネルは、地下に十分な立体的空間を構築でき、道路、鉄道、総合配管ラインなどの同時敷設が可能になり、トンネルの重複掘削が回避できるという利点がある。

ただし、直径が大きくなるほど、シールドマシン製造の難度は高まる。

中国鉄路装備・技術センターの賀飛(He Fei)副主任は「シールドマシンの直径が15メートルを超えると、掘削直径の拡大に伴って不良地盤にぶつかった時の掘削障害が、幾何級数的に増加するリスクがある。そのためシールドマシンの構造強度、制御精度、素材の疲労耐性などに高い要求が課せられる」と説明する。

2017年10月、中国の特許権技術を使用した中国初の直径15メートル級の超大口径泥水平衡シールドマシン「中鉄306号」が完成した。この成功で、それまで外国に独占されていた大型シールドマシンの製造に初めて風穴が開けられた。

その後、掘削直径15.8メートルの「春風号(Chunfeng)」から直径16.07メートルの「京華号(Jinghua)」、さらに直径16.6メートルを超える「江海号」まで、中国は超大口径シールドマシンの開発と応用分野で新たな飛躍を遂げ、超大口径シールドマシンの全ての産業チェーンの能力が築かれた。

現在、中国国産シールドマシンは世界市場シェアの約7割を占めている。現在、中国のエンジニアは、シールドマシンをよりスマートで環境に優しいものにするための努力を続けている。

「領航号」の操縦室に入ると、スクリーンに表示される各種データがリアルタイムで現在の掘削状態を反映している。操縦士は監視のみを行い、操作はしていない。これは「領航号」の開発チームが「千里眼」と「智恵脳」を搭載して実現したものだ。

「領航号」のチーフデザイナー・廖兆錦(Liao Zhaojin)氏は「従来のシールド工法は盲目歩行に似ており、周囲の地質状況を100%は把握できないため、施工中の安全リスクが高かった。そのため『領航号』には『超前方地質予測システム』を搭載した。これでカッターヘッド前方10メートルから40メートルの地質条件が正確に探知できるようになった。また『スマート感知システム』も地質条件をリアルタイムで分析し、マシンの正常な掘進を保証している。さらに、スマート分析と自律的判断の能力を持つ『スマート脳』の働きで『有人監視・無人操作』状態でもミリ単位の掘進精度を実現している」と解説する。
  
中国では、環境に優しいシールドマシンの開発にも進展がみられる。

世界で初めてのグリーンなシールドマシン「中鉄1237号」が24年7月23日、順調に稼働を開始した。それはどんなものか?

これについて「中鉄1237号」のチーフデザイナー・曹書磊(Cao Shulei)氏は「我々はシールドマシンに知能システムを搭載し、掘進の過程で個々のシステムを自動的にスマート管理することで、掘進効率とエネルギー消費の最適バランスを自律的に達成し、『グリーン・省エネ』を実現した」と説明する。

この「中鉄1237号」はイタリアに輸出され、イタリア・シチリア島の高速鉄道のトンネル建設に使用されている。中国製のグリーンなシールドマシンが国際市場で認知された事例となった。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews