「人とロボットが共に走る」マラソンレースの持つ意味・中国
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【8月20日 People’s Daily】先日、世界で初めての人型ロボットと人間がいっしょに走る「人機共走」ハーフマラソンが北京で開催され、無事終了した。20体の人型ロボットと人間の選手が同じコースで競い合うこのイベントは、国内外から高い注目を集めた。
このマラソンは中国の人型ロボットにとって極限に挑むテストだった。約21キロのコースで、人型ロボットの精密な関節は約25万回作動し、エネルギー効率、放熱能力、運動アルゴリズムなどの優劣が明確に示された。
多くのロボットの運動性能は完璧ではなかったが、これら「実際に走らせて露呈した問題」は、今後のさらなる技術改善の出発点となるものだ。
より広い視点で見ると、人工知能技術とロボット技術が深く融合した産物・「人型ロボット」が人類社会の進化のニーズに適応し、人類文明の進歩を支援できるかどうかは、壮大で挑戦的な「人とロボットが共に走る」マラソンレースのようなものだ。
浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)の「浙江人形ロボットイノベーションセンター」が開発した「領航者2号」人型ロボットは、人間と自然に会話するし、物を運ぶ作業もできる。
多くの企業が開発した人型ロボットが次々と研究室を飛び出し、工場で『実習』を始め、実際の生産プロセスに加わっている。こうした動きから判断すると、人型ロボットが新たな「これまでの常識を覆すイノベーション」を生み出し、生産力を飛躍的に向上させる可能性がうかがえる。
人型ロボットという新しい分野において中国は「後発組」だが、後発の優位性とポテンシャルを有している。
その優位性は、完備が進んだ産業体系に由来する。人型ロボットは頭から足先まで数百の部品で構成されているが、中国の完備された産業体系は研究開発と試験の連環的で連続的な工程を確実に実行できるものにしている。
現在、中国が産業用ロボット分野で保有するまたは出願中の特許の総数は19万件を超え、世界全体の約3分の2を占める。また、世界の人型ロボット企業ランキング上位100社中、中国企業は3割を超えている。中国では、研究機関、技術イノベーション企業、製造業の先端を走る企業が、核心的な技術開発で協力し合い、技術的に多様なアプローチを追求するという良好な産業環境とイノベーションエコシステムが築かれている。
また、優位性は膨大な人材の蓄積にも由来している。中国には世界有数の規模の研究者とエンジニアチームが存在し、毎年工学系の卒業生の数は世界全体の工学系卒業生の3分の1を超えている。人型ロボットの研究開発では、各分野のエンジニアが専門性を発揮し、「最も核となる技術」の開発やプロセスの改善、コスト削減を実現している。
産業チェーンとイノベーションチェーンを相互に連動させる戦略により、人型ロボット分野の新技術と新たな産業応用を推進する総合的な力が生みだされている。
優位性は中国の超大規模市場にもある。この特大の市場が複雑な応用シーンと多様な実用化のニーズを生み出している。「人形ロボット産業研究報告書」の予測によると、今年の中国の人型ロボットの市場規模は約53億元(約1107億1700万円)に達し、前年比倍増の見込みだ。製造ラインでの搬送・選別・組み立て作業、博物館や展示場でのスマートガイド、家庭内の家事支援、山奥での電力網故障点検など、多様なシーンでの活用が期待できる。技術進歩とコスト低減に伴い、人型ロボット市場のポテンシャルはさらに表舞台へと解放され、経済と社会の発展の新たな原動力になると予想される。
「身体を持つ人工知能」特に人型ロボット産業の加速的な発展を推進する鍵は、前向きな政策を掲げる政府と効果的な市場とのより良い結合にある。現在、北京、上海、深セン(Shenzhen)など各地で人型ロボット産業発展のための政策措置が導入されている。
産業政策への指導を強化し、産学研、上下流、各関連分野の連携を促進し、「ロボット(+)プラス」の普及と応用を深く推し進めることで、中国の人型ロボット産業のイノベーションと製品供給能力は絶えず発展向上している。
80年以上前、SF作家アイザック・アシモフ(Isaac Asimov)は、ロボットは人間を傷つけてはならない、人間の命令に従う、自分を守るという「ロボット三原則」を提唱し、ロボットがもたらす倫理的な課題を考察した。
テクノロジーの革新と発展に伴い、かつてのSFのシナリオが現実へ反映され、人型ロボットに対する人びとの理解も深まっている。より高度な知能を備えた人型ロボット製品の開発が進み、人間とロボットの「共生」における倫理的空間が広げられる。
この「人とロボットが共に走る」マラソンレースの中で、人類はさらに明るい未来に向かって必ずや駆け続けていくことになるだろう。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews