上海モーターショーから見る自動車産業の変革の「中国スピード」
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【8月15日 People’s Daily】「第21回上海国際自動車工業展覧会(以下「上海モーターショー」と略称)」が4月23日から5月2日まで、上海市の「国家会展センター」で開催され、国内と26の国と地域から1000社近い企業が参加し、100を超える新車と最先端技術を出展した。
ハードコアな新エネルギー車SUVは「カニ(横向き)走行」や「定点旋回」が可能で、さらにパンク状態でも走行継続可能で、最大80cmの水深を2時間連続で「航行」できる優れた性能が備わっている。
ある統合型運転支援システムでは、駐車・代行運転機能により、地下駐車場内の階層を跨いだ自動移動や、自動充電といった高度な代行機能を実現している。
あるEV用バッテリーパックは、体積エネルギー密度が1リットル当たり毎時1000ワットを超えている。
今回の上海モーターショーで、中国のスマートEV車メーカーとそのサプライチェーンの企業が発表した電動化・スマート化の新技術は、まさに目を奪うものばかりだった。
日産(Nissan)中国管理委員会主席兼東風汽車(Dongfeng Motor)総裁の馬智欣(Stephen Ma)氏は「中国の電動化とスマート化技術は、全世界の自動車産業の構造転換による発展をリードしている。日産自動車は中国市場の優勢な先端技術と資源を利用し、革新的で競争力のある製品開発を推進している」と強調した。
今回の上海モーターショーでは、主要自動車メーカーが一連の統合型運転支援の先端技術を発表した。
スマートEV車メーカー・広汽埃安(GAC Aion)と中国最大のネット配車サービス「滴滴出行(Didi Chuxing)」が共同開発した「L4級自動運転Robotaxiモデル」は、今年中に生産を開始し、2026年にモデル運行を開始する予定だ。
中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ、Huawei)は、センサー入力から制御出力までの一連の処理を含む「エンドツーエンド」のシステム遅延を50%削減し、交通処理効率を20%向上し、急ブレーキの頻度を30%抑制する次世代自動運転システム「乾崑ADS 4」を発表した。
華為のスマートカーソリューション事業部の靳玉志(Jin Yuzhi)CEOの話によると、華為はクラウド上の「World Engine(世界引擎)」プラットフォームにおいて、高速道路向けのL3自動運転システムに関し、累計60億キロメートルに及ぶシミュレーションと検証を実施済みで、量産商用化に向けた準備はすでに整っているという。
イノベーションと構造転換における「中国スピード」はチップの分野でも顕著だ。
今回のモーターショーでは、先進運転支援(ADAS)向けAIチップを手がけるサプライヤー「地平線(Horizon Robotics)」が、現時点で中国国内最高性能となる560TOPS(毎秒560兆回)の演算処理能力を持つ「征程6P」チップを発表した。あわせて、国内初となるソフトウェアとハードウェアを統合したフルスタック型のL2レベル都市部向け運転支援システムもリリースした。このシステムは、今年9月に奇瑞汽車(Chery Automobile)の高級ブランド「星途」で世界初の量産化が予定されている。
今回のモーターショーでは、上汽大衆汽車(SAIC Volkswagen)が主導して開発したフォルクスワーゲン(Volkswagen)ブランド初の「レンジエクステンダー方式(バッテリー充電用エンジン搭載方式)」によるフルサイズSUVコンセプトカー、東風日産が手がけた日産ブランドの純電動セダン「N7」、長安汽車(Changan Automobile)とマツダ(Mazda)が共同開発した長安マツダの新エネルギー車「EZ-60」など、グローバル自動車メーカーが中国パートナーとの「合弁協力2.0時代(中国主導型の新たな合弁協力ステージ)」の段階に入ったことを示す成果が次々と披露された。
「中国で、中国に向けて」から「中国で、世界に向けて」へ、グローバル自動車メーカーは、中国で製造することから研究開発へ、輸入から輸出へと、役割転換を遂げている。
「中国市場のイノベーションのペースは驚異的だ。ここの電動化、デジタル化の進展は世界の他の地域を遥かに凌駕している」、メルセデス・ベンツグループのオラ・ケレニウス(Ola Kallenius)董事長が2年前に下したこの判断は、メルセデスのその後の実践で裏付けられている。
メルセデス・ベンツは今回のモーターショーで、純電動ロングホイールベース仕様のCLAセダンを世界で初めて披露した。このモデルに搭載されるあらゆる走行シーンに対応した統合型運転支援システム(ADAS)は、中国の開発チームが主導してわずか18か月で開発されたものだ。このような開発速度は、北京と上海の2大研究開発センターと2000人を超える現地開発チームの支援なしには実現できなかったといわれている。
上海モーターショーを見て回れば、至るところでAIの存在を実感することができる。スマートコックピットが人とクルマとの関係を根本から見直し、統合型の運転支援(ADAS)があらゆる走行シーンに対応し、さらに大規模AIモデルが商品開発、製造、販売、運用、サービスに至るまでの全ての業務プロセスのイノベーションを駆動し、「自動車の知能を担うAI中枢」が、自動車産業変革のうねりの中で、次第にその姿を現しつつある。
阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)とのAI大規模言語モデルに関する戦略的提携を結び、現地のBMWの中国現地の開発チームが主導して「AIエージェント(智能体)」を発表したのに続き、BMWは中国のAIエコシステムへの取り組みをさらに強化し、新たに深度求索(DeepSeek)の導入を発表した。
東風汽車は、企業用大規模AIモデル「太極」を披露した。AIデザインアシスタント、AIコードアシスタント、AIシミュレーションアシスタントといった複数のインテリジェント・エージェントを活用することで、新車開発のサイクルを35%以上短縮し、協業コストを30%削減した。
吉利汽車(Geely Automobile)の淦家閲(Gan Jiayue)CEOは、「現在わが社は、AIを車両アーキテクチャ、パワートレイン、シャーシ、スマートコックピット、運転支援など、スマートカーのあらゆる構成領域に適用している。さらに、製品開発から生産、アフターサービスに至るまで、バリューチェーン全体にAIを深く浸透させることで、あらゆる利用シーンにおいてAIによるスマート体験を実現している」と話している。
清華大学(Tsinghua University)車両・運載学院自動車発展研究センターの李顕君(Li Xianjun)主任は「AIと電動化、AIとスマート化の融合が、自動車産業における破壊的なイノベーションと構造的変革の進行を加速させている。自動車メーカーは、AIを基盤とした戦略をいち早く策定し、新たなメカニズム、プロセス、文化、人材を備えた次世代型の組織構造を構築し、変革の歩みを加速させるべきだ」と指摘する。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews