【8月13日 People’s Daily】米国政府は、単独主義と保護主義政策を推進し、関税という危険な道具を振り回し、貿易摩擦を挑発している。これにより世界経済の損害が顕在化し続けている。国際通貨基金(IMF)は最近、最新の「世界経済展望報告」を発表し、今年度と来年度の世界経済成長率の見通しを引き下げた。その重要な理由の一つに米国の関税政策があった。

IMFは2025年と26年の世界経済成長率予測を、今年1月の予測値3.3%からそれぞれ2.8%と3.0%に引き下げた。米国の関税政策が世界経済に与える損害について、報告書は明確な指摘をしている。米国政府が4月2日に発表したほぼ全ての貿易相手国を対象とする関税率は、過去1世紀の中で最高水準のものだった。

この税率そのものが世界経済に対する「重大な負の衝撃」だが、それに加え、実際の執行過程での不確実性もまた世界の経済活動と経済の見通しに「負の影響」をおよぼすものである。米国は多国間貿易ルールを恣意的に踏みにじり、強権を発動して、グローバル経済の秩序を組み替えようとしている。これはまさに世界の発展を米国の覇権的利益のために犠牲にさせる行為だ。

米国の関税政策は世界経済を「経済的断絶」の瀬戸際に追いやる可能性がある。アナリストたちは「米国が関税を濫用することは、世界経済に巨石を投げつけるような行為で、それが引き起こす影響は次第に拡大しつつある。世界経済成長への短期的な圧力を超えて、持続的で構造的な損害をもたらす恐れがあり、世界的なイノベーションのエンジンが失速し、グリーンテクノロジー貿易への障壁が拡大し、持続可能な開発の進展が阻害される危険性がある」と指摘している。

米国は単独主義と保護主義で多国間貿易体制を揺るがし、世界各国の共同発展の制度的環境を破壊し、その影響は特に開発途上国と新興市場国に最も深刻におよんでいる。

国連工業開発機関(UNIDO)は「米国の関税政策濫用は、開発途上国と後発開発途上国(最貧国)が世界の貿易に参入するポテンシャルを弱め、これらの国の産業の近代化と経済多角化の努力を打ち消すものだ」と警告を発している。

米国の経済的覇権主義は、グローバル・サウス諸国の正当な発展権を剥奪し、米国式のいわゆる「公平な貿易」の虚偽的な本質を暴露するものだ。

実際、保護主義がもたらす悪影響は、米国の経済史の中に明確な事例がある。米国ジョージア大学(University of Georgia)の歴史学のスコット・レイノルズ・ネルソン(Scott Reynolds Nelson)教授は「19世紀以来の米国が経験した6回の経済不況のうち、5回は関税と貿易の制限が直接の原因になったもの、あるいは不況を激化させる要因になったものだ」と指摘している。

なかでも、最も悪名高い事例は1930年に当時のフーバー大統領政権下で制定された関税法「スムート・ホーリー法」で、2万種類以上の輸入品の関税率を歴史上最高の水準に引き上げ、その結果当時の米国経済の衰退を深刻化し、最終的には世界的な大恐慌を引き起こすことになった。

数年前、米国は一方的に対中貿易戦争を試みたが、最終的には単に「高価な政策的実験」に過ぎなかったことが証明されている。歴史の教訓は明白だ。米国は同じ過ちを繰り返すべきではない。

最近、米国の経済学者と政策専門家が提唱した「反関税宣言」が、ますます多くの賛同の署名を集めている。この宣言は「米国の現在の関税政策が歴史を曲解し、現状の判断を誤り、問題の本質を誤診し、経済の原則を否定している」と批判し「自滅的な経済の衰退を引き起こす可能性がある」と指摘するものだ。そして、経済学者の懸念は現実のものとなりつつある。米国では、卵の価格が急騰し、乳幼児用品の供給が逼迫し、小規模事業主は「生存が困難」と訴え、農家からは「失うものは市場だけでなく、未来だ」との大きな声が聞こえている。

米国の新聞「ニューヨーク・タイムズ(New York Times)」は、米国の関税政策が多くの米国企業に「事業を麻痺させかねない不確実性」をもたらしていると指摘している。

国際通貨基金(IMF)は、米国の今年度の経済成長率見通しを、今年1月の予測値から0.9ポイント引き下げた1.8%に下方修正した。これは先進諸国の中で最も大きな下方修正幅である。

他国を犠牲にする経済的覇権主義は最終的には自国に跳ね返ってくるという歴史的な教訓がある。開放と協力こそが、世界各国が共に未来へ進む唯一の正しい道だ。米国には「懸崖勒馬」(訳:崖っぷちでウマの手綱を引き締めること)が求められる。米国は危険な状況から脱却し、各国と共に開放的な世界経済体制を維持し、世界に向けて安定性とポジティブなエネルギーを注入すべきである。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews