【8月12日 People’s Daily】正午のランチの時間帯、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hanzhou)の街中が車や人で賑わう中、配達員たちはビルの間を駆け巡っている。

黄色い作業服にヘルメットを被った女性配達員・文景(Wenjing)さんは、ほかの配達員の疾走するような足取りに比べて明らかに遅い歩調で、よろよろしながら歩いている。

30歳の文景さんは先天性脳性麻痺を患っている。これは母親の胎内での酸素不足が原因だと彼女は説明する。歩くのが遅く、話すのにも苦労するが、彼女はいつも明るく前向きな態度を保っている。「私だってみんなと同じように、がんばって生きているのよ」、文景さんの胸の内から出た言葉だ。
  
結婚して子供を産んだ後、生活の圧力が増し、彼女は働き始めて家計を助けることにした。しかし、仕事を探すのは容易ではなく、あちこちで断られ、最終的に配達員を選ぶことにした。

身体のバランスが良くないため、彼女は電動自転車を運転するのが他の人より困難で、よく転倒する。電動自転車は1年、または1年足らずで新品に交換する必要があるという。彼女が今乗っている自転車は、配達を始めて7年間で6台目だ。彼女は靴を指さし、片側が特に摩耗していることを示した。足で地面をこすって自転車を停めるためだ。

彼女は最初の配達経験を振り返る。最初の配達を終えるまでに1時間近くもかかり、やっと5元(約103円)稼いだ思い出を語った。「その時は特に嬉しかった。自分の価値が感じられた」と話す。
  
デリバリーはスピードが命だ。彼女は配達が遅いと低い評価を受けたことがある。また言葉が不明瞭なため、気が短い客にゆっくりと話すと、相手をイライラさせてしまうこともある。

それでも、彼女にとって温かい瞬間は辛い瞬間より多いのだという。ある時、デリバリーフードをこぼしてしまったが、客は責めずに「大丈夫、食べられるから。頑張れ、あなたは素晴らしいよ」と慰めてくれた。このような励ましの言葉を聞くたびに、彼女の心には自信が少しずつ蓄積されていった。彼女は「自信と落ち着きは、配達を通じて少しずつ積み重ねてきたものです」と話す。

現在、彼女はすでに外食配達で独自のスタイルを確立している。平均して1日8~10時間働き、杭州東駅(Hangzhoudong Railway Station)近くのオフィスビル周辺が彼女の「拠点」だ。彼女は笑いながら「この辺りの店や配達員はみんな顔なじみだ」と話す。

ビルの通路にあるセルフサービス軽食店を指さしながら、彼女は「朝1時から働いて、午後1時半になったらここでランチを食べる。1時半以降は7割引きになるので、10元(約206円)で腹いっぱいになれるから」と説明する。

配達の注文を受ける時、文景さんは右手でスマホを握りしめ、左手で画面を操作する。一見大変そうだが、一連の動作はスムーズだ。彼女は「子どもは夫の実家で学校に通っているので、休日は特にやることもないから、できるだけ多く働いて、少しでも多く稼ぎたい」と話す。

最近1~2年間、彼女の月収は8000~9000元(約16万4720~18万5310円)程度で、年末年始は年末勤務手当を加え1万元(約20万5900円)以上の収入になる。

この7年間で7万3000件以上の注文をこなしてきた。夫と二人で小さな家庭を支えている。「子供が誇れるような母親になりたい」、彼女はそう願っている。
  
たくさん稼ぎたいのは子供のためだけではない。彼女には自分自身の心配もある。年齢を重ねるにつれ、脳性麻痺患者の神経系がさらに退化する可能性があるというのだ。できるだけ自立した生活を長く続けるため、できるだけお金を貯めたいと考えているのだ。

現在「配達注文プラットフォーム」には、彼女のために「障害支援機能」が組み込まれた。ユーザーは彼女が障害のある配達員だと確認できる。それでほとんどのユーザーは彼女のことを理解してくれるという。

プラットフォームが提供する「スマート音声発信機能」は、一回の操作で注文を受けたことが通知でき、電話でのやり取りが不要で、彼女とユーザーとの間のコミュニケーションの障壁を軽減してくれる。「一部のユーザーは障害のある配達員の標示を見て、自分で階下まで下りて注文を受け取ってくれることもある。とても感動する」、彼女はそう話す。

「特別な配慮は必要ない。公平に扱われたいだけ。たとえふらふらしても、自分の人生を振り切っていきたい」、彼女がそう言ったとたんに、スマートフォンから注文の呼び出し音が鳴り始めた。文景さんは電動自転車に乗り、頭を傾けて3回叩いてようやくヘルメットのバックルを留め、記者に手を振って、次の目的地へと急いだ。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews