【8月8日 CNS】中国で経済規模が最大の省である広東省(Guangdong)は、GDP1000億元(約2兆739億円)を超える「強町」を数多く生み出してきた。

今年1〜5月、中国の携帯電話生産台数は5億7千万台に達し、華為技術(ファーウェイ、Huawei)、小米科技(シャオミ、Xiaomi)、Vivo、オッポ(OPPO)、アップル(Apple)などのブランドが出荷台数の上位を占めた。

そのうち、Vivoとオッポという二大ブランドの背後には、共通の強力な拠点がある。それが広東省東莞市(Dongguan)の長安鎮だ。

世界で生産されるスマートフォン8台のうち、1台はこの町で生まれている。注目すべきは、2025年の広東省政府活動報告に記された一つの事実だ。長安鎮のGDPが歴史的に初めて1000億元の大台を突破したのである。

これにより、広東省の「1000億元町」グループに新たな強者が加わった。長安鎮は仏山市(Foshan)の獅山鎮、北キョウ鎮に続き、広東省で3番目、中国全体でも6番目のGDP1000億元を超える町域経済体となった。

この公式発表は、まさに重みのある知らせだった。

では、強豪ひしめく珠江デルタにおいて、長安鎮はなぜ頭角を現すことができたのか。

2024年、長安鎮の年間GDPは1050.7億元(約2兆1791億円)に達し、前年比5.5%の成長を記録した。これは年初に設定した5%の目標を0.5ポイント上回る数値だ。

珠江デルタの町域経済を代表する存在として、長安鎮は見事に1000億元の壁を越えた。その成功の鍵は、独自の産業エコシステムと強力なイノベーション力にある。

電子情報産業を例に取ると、2022年のデータで長安鎮の規模以上の電子情報産業生産額は2100.8億元(約4兆3569億円)に達した。スマートフォン関連の上下流企業は1000社以上あり、そのうち規模以上のハイテク企業は350社以上、電子情報関連企業は160社以上に及ぶ。

2024年には、電子情報産業の生産額はさらに2326.1億元(約4兆8242億円)まで拡大し、規模以上の工業総生産額は3211.6億元(約6兆6607億円)に達した。

この背景には、オッポとVivoの二大企業がこの地に深く根を下ろしていることがある。長安鎮では、精密金型、基板実装、完成品組み立てまで連続した産業チェーンが構築されており、ピーク時には1分間に195台のスマートフォンを生産した。世界で8台に1台のスマートフォンがここで生まれる計算だ。

また、長安鎮の金属加工用金型産業の規模も500億元(約1兆369億円)近くに達し、金型製造企業は1600社以上、個人事業者は約1万戸にのぼる。

長安鎮の成長のもう一つの鍵は、深セン湾の朝の交通に隠されているかもしれない。

粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)の地理的優位性の恩恵を受ける長安鎮は、その立地こそが飛躍の原動力だ。獅山鎮が仏山の製造業拠点を背に、北キョウ鎮が広州の経済圏を受け止めて発展したのと同様に、長安鎮の躍進も世界的都市圏の膨大なエネルギーの波及効果に支えられている。

現在、多くの企業が本社や研究開発は深セン市(Shenzhen)に置き、生産は長安鎮の近代的な産業園区に移すという戦略を採っている。これは深センと東莞の一体的な発展を象徴する動きだ。

2020年には、地元メディアがこうした傾向を示すデータを公表した。長安鎮にある規模以上の工業企業810社のうち、深センから移転してきた企業は60社で、主に金属金型製造と電子情報の二大産業に集中していた。地元企業の多くは、ファーウェイ、富士康科技集団(フォックスコン、Foxconn)、大疆創新科技(DJI)、比亜迪汽車(BYD)といった深セン企業のサプライチェーンを支えている。

こうした産業分業により、深センと東莞の間には極めて緊密で相互依存の供給網が形成されている。だからこそ「もし東莞から深センへの高速道路が渋滞すれば、世界のパソコン製品の7割が品薄になる」という言葉さえあるのだ。

さらに、関連計画によれば、深セン地下鉄11号線の北延伸区間は長安鎮まで直通する見込みで、将来的には深セン・東莞の二都市間で、人・物・資金・情報の流れがさらに密接になるだろう。

実際のところ、長安鎮のGDPが1000億元を突破した意味は、数字を超える価値を持つ。

それは次のことを如実に示している。

町域経済の上限はまだ遠い。中心都市の資源流出と、製造業都市の自らの転換・高度化が重なれば、トップクラスの町は行政の枠を超えて、地域経済の重要な成長極に育つことができる。

過去十数年、東莞は深センに近いという優位性を生かし、深センの要素資源を北へ引き込んできた。長安鎮は、巨大都市に隣接する地理的メリットを、イノベーションチェーンと産業チェーンの強固な結合に転換し、発展の優位に変えた典型例といえる。

長安鎮の「昇格」は、単なる数字の飛躍ではなく、珠江デルタにおける町域経済の強靱さと力強い活力を示す最新の証となった。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News