【8月5日 CNS】中国では、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のハミ市(Hami)から送られた電力が、わずか0.007秒で2260キロ離れた重慶市(Choangqing)に届き、電力需要を支えている。

最近稼働を開始した「ハミ-重慶正負800キロボルト特別高圧直流送電プロジェクト」は、電力の伝送速度を秒単位で示すだけでなく、再生可能エネルギーが地域を超えてどのように活用されているかを可能にしている象徴的事例である。

現在の中国は、風力、太陽光、水力、原子力といった再生可能エネルギー分野を全面的に推進し、世界最大規模の再生可能エネルギー体系を築き上げている。2024年には、風力・太陽光発電の新規設備容量が他のすべての国の合計を上回り、再生可能エネルギーによる発電設備が石炭火力を初めて超えた。中国国内では、3キロワット時の電力のうち1キロワット時が再生可能エネルギーによるものとなっている。

一方、米国では、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(General MotorsGM)が電気自動車の生産計画を撤回し、代わりに約8億8800万ドル(約1312億1088万円)を投資してV8ガソリンエンジンの製造に注力すると発表した。

こうした政策の違いは、エネルギー素材の分野にも表れている。2008年時点で、太陽電池の主要素材である多結晶シリコンの世界生産量の約半分は米国が担っていた。しかし現在では、中国がその地位を奪い、市場シェアは90%超に達している。

この背景には、エネルギー覇権をめぐる世界的な方針の違いがある。米国は、依然として石油や天然ガスなどの化石燃料に注力し、その恩恵を延命しようとしている。一方、中国は、太陽光や風力、蓄電など再生可能エネルギー関連技術の輸出を進め、クリーンエネルギーを軸とした新しい産業秩序の構築を図っている。

米「ニューヨーク・タイムズ(New York Times)」は、「トランプ政権のエネルギー政策は、世界が石油や天然ガスへの依存から脱却しないよう仕向けていた」と分析。米国は世界最大の石油生産国かつ天然ガスの主要輸出国であり、この分野での影響力維持を通じて「エネルギーの主導権」を確保し、特に中国への依存を減らすことを目指していると報じている。

その一方で、中国は全く異なる道を選んだ。再生可能エネルギーの製造・技術・輸出の体制を整備することで、エネルギーの消費国から供給国への転換を進め、世界のエネルギー移行において主導的な役割を果たそうとしている。

100万キロワット級の水力発電タービン、深海浮体式の洋上風力発電、トリウムを燃料とする溶融塩炉の実証設備、さらに世界初の第4世代高温ガス冷却炉が稼働する石島湾原子力発電所など、中国は新エネルギー分野で確実に前進しており、特別高圧送電技術の大規模商用運用を実現した世界唯一の国となっている。

クリーンエネルギーの比率が上がるなか、中国は高性能設備の製造業や新エネルギー車などの新興産業に対し、持続的なエネルギー支援を行っている。

ニューヨーク・タイムズは、「中国の自動車産業における技術革新のスピードは世界トップに立っており、日本やドイツ、米国を上回っている」と指摘。2021年から2023年にかけて、中国は世界の他国合計を上回る産業用ロボットを導入し、米国の7倍に達したという。

専門家の分析では、米国で中国と同等規模の電池工場を建設すると、コストは約6倍に上るとされ、その背景には電力インフラの充実度や産業集積の優位性があるとされている。

現在、中国の再生可能エネルギー技術は、急速に海外へと広がっている。

たとえば、「一帯一路(Belt and Road)」構想に参加する国々では、中国企業が建設したアラブ首長国連邦の950メガワット規模の太陽熱・太陽光複合発電所が、32万世帯にグリーン電力を供給。エチオピアでは、中国企業が建設したアダマ風力発電所が、30万人超の住民とその周辺都市の電力不足を解消している。さらに、中国の特別高圧送電の標準技術は、ブラジルやパキスタンなどにも導入され、現地のグリーンエネルギー技術の刷新を促進している。
この「未来のエネルギーの主導権」をめぐる競争の勝敗はまだ分からない。しかし、気候変動対策が世界的な共通課題となるなかで、クリーンエネルギーへの転換は不可逆の潮流であることは確かだ。

ニューヨーク・タイムズはこう結んでいる。「米国が今から再生可能エネルギーに転換することは可能だが、貴重な時間をすでに失ったかもしれない」(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News