「ビザなし友好圏」拡大へ 中国が訪中を呼びかけ
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【7月24日 CNS】「ビザなし友好圏」拡大へ 中国が訪中を呼びかけ
外国人観光客の中国訪問――「インバウンド観光」が、3月5日と3月4日に北京市で開幕した全国両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)で熱く取り上げられた。
「インバウンド観光の熱気が高まり続けている」。2025年の政府活動報告では、「訪中消費の拡大を促進すること」が主要任務として盛り込まれた。
「ビザ免除の『友達リスト』がさらに広がる見込みで、『打卡中国(SNS等で訪問記録を共有する中国旅行)が国際的な新しいトレンドとなるだろう」と、王毅(Wang Yi)外相の発言が、入境観光にさらなる追い風を与えた。
■ インバウンド観光がブームに
2023年末以降、中国は144時間のトランジットビザ免除制度の対象範囲を拡大し、38か国に対して一方的なビザ免除を実施。54か国にはトランジット免除期間を240時間(10日間)に延長した。また、モバイル決済など支払いの利便性向上策も導入されている。
こうした入国のハードル引き下げが、インバウンド観光市場を活性化させた。2024年にはビザ免除を利用して入国した外国人が延べ2,012万人に達し、前年比112.3%の増加を記録。「China Travel(中国旅行)」はSNSで引き続き人気を集めている。
全国政協委員であり、春秋航空(Spring Airline)の董事長(会長)でもある王煜(Wang Yu)氏は中国新聞社(CNS)の取材に対し、「訪中観光の盛り上がりは、消費と産業のアップグレードに二重の効果をもたらし、交通・宿泊・飲食・小売など関連産業全体の成長を牽引している」と述べた。
2023年末には「金曜の仕事終わりに中国へ」という新たなライフスタイルが一部で話題となった。火鍋や串焼き、小籠包を楽しみ、新天地や外灘(バンド、Bund)、豫園、田子坊をめぐる――韓国の若者たちの惜しみない消費ぶりに、「ついに人民元の『使い方を知り尽くした』人たちが現れた」と中国のネットユーザーが沸いた。
2024年春節(旧正月、Lunar New Year)の連休期間には、初の「無形文化遺産版 春節」を迎えたこともあり、訪中外国人観光客数は前年同期比で150%増と過去最高を更新。銀聯(China UnionPay)や中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)の指導で設立された、複数のオンライン決済サービスを仲介・清算するプラットフォームの網聯(NUCC)によるデータでは、外国人の中国国内での決済件数も昨年の春節に比べて124.54%増加した。多様な消費シーンが訪中消費の拡大を後押しし、経済に活気を与えている。
■ 一時的な「流量」から、継続的な「滞在価値」へ
ただし、関係者の多くは、「一時的な人気(流量)」を「継続的な消費(留量)」へと転換するには、全体の視点からきめ細やかな施策が必要だと指摘している。そのためには、大きな制度設計と、現場レベルでのサービス改善という両面からの取り組みが求められる。
まず「大」とは、ビザ免除政策の最適化と対象国の拡大を意味する。
2024年1月、国務院弁公庁が発表した「文化・観光消費の新たな成長分野の育成に関する措置」では、「一方的ビザ免除対象国を段階的に拡大し、免除期間を適切に延長する」など、インバウンド観光の政策改善が盛り込まれている。
次に「小」とは、訪問者の立場に立った現場でのサービスのきめ細かな改善を指す。
王煜氏の調査によると、一部の国内サービスや配送プラットフォームでは外国人名やパスポートが使えず、国内線の航空券や配送予約がしづらい。また、地域によっては外国語表記が不十分、または誤訳されており、外国人観光客が施設を探すのに苦労するといった障害もあるという。
このため、王氏は「モバイル決済、航空券のオンライン予約、案内標識の多言語対応などの利便性を一層向上させるべきだ」と提案している。
さらに、中国観光研究院の院長で全国政協委員でもある戴斌(Dai Bin)氏は、「都市はインバウンド観光の主要な入口であり受け皿だ。最良の観光プロモーションとは、人びとの笑顔である」と語り、「外国人観光客が初めて訪れる都市」や「個人旅行者に優しい都市」を選定し、「自宅のように快適に過ごせる公共サービス体系」を整備すべきだと提案した。
「出国時の免税還付制度をより便利に」「購入即時還付制度の導入」「香港・マカオと中国本土間のビザ連携の利便性向上」など、両会期間中には入境観光に関する提案が数多く出された。
■ 「来やすく、過ごしやすく」こそが本当の促進策
「ビザを緩和し、外国人観光客が入国し、支払いも便利になった。では、その人たちは一体何を消費したいのか? どんな体験を望んでいるのか? 消費シーンはもっと現代的に、もっと質を高められるのではないか?」
こう問いかける戴斌氏は、「新たな需要が新たな供給を生み、供給の進化がまた新たな需要を育てる。観光業はいま、繁栄の新たなステージに入っている」と述べた。そして、「外国人旅行者が『来やすく、過ごしやすく』なってこそ、リピーターが増え、観光消費の潜在力を本当の意味で引き出せる」と強調した。(c)CNS/JCM/AFPBB News